海外畜産事情研修
2025/11/07
令和7年10月27日から海外畜産事情研修会が始まりました。
出発前日の26日に成田市内で海外畜産事情研修第3回事前研修会を行い、調査先の最終確認や行程・役割分担の確認を行いました。
研修生7名とアドバイザー1名の8名でドイツ、フランス、スペインの3か国を2週間をかけてまわり、ヨーロッパの最新の畜産事情や支援組織の支援内容等について学びます。
成田空港から出発
フランクフルト空港到着
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年10月27日
海外研修2日目はドイツのエメンディンゲンで、酪農、採卵鶏、ガチョウ生産に取り組む複合経営を訪問しました。
同経営は、持続可能な農業生産に取り組むことを証明する認証制度の中でも特に厳しい基準を設けている「デメター認証」を取得しており、豊かな自然の中に家畜を放牧することによって、家畜がのびのびと生育できる環境を提供していました。
ドイツでは家畜の飼育環境・過程に関心の高い消費者が多い中、同経営のようなデメター認証取得農場が生産する畜産物に対する評価は高く、少し高い販売価格を設定しても買い手がつくそうです。
牛舎を見ながら説明を聞く研修生
経営主を囲んだ集合写真
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年10月28日
研修3日目は午前中にドイツのフライブルク市にあるバーデン農業連合を訪問し、第3者継承の取組みについて学びました。
同連合では、就農希望者と農家をマッチングさせるための取組みを3年前から開始し、取組みを軌道に乗せ、サポートの内容を充実させていくための準備を着々と進めていました。
第3者継承にはそれ相応の時間がかかることを年頭に置き、農家は複数年計画で継承に向けた準備を進めることがポイントとなるようです。
午後は、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にある肉用牛経営を訪問しました。
同経営は、電力事業にも取り組む多角化経営であり、地元のレフィンゲン地域に供給される電力全体のうち15%相当は同農場が供給しています。バイオガス発電には、農場で飼養している肉用牛の排せつ等を利用しており、発電時に生成される消化液は圃場に還元されます。
1つ1つの取組みが経営の中で上手く循環するように計算されており、効率的で持続可能性の高い経営を実践されていました。
バーデン農業連合にて
バーデン=ヴュルテンベルク州の肉用牛経営
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年10月29日
研修4日目の午前中は、フランスのアルザス地方のミュンスターチーズを生産する酪農家を訪問しました。
乳牛は6月中旬から10月末までの間120haの牧草地に放牧され、放牧中は移動式の搾乳施設を用いて搾乳されます。伝統的な方法で生産されるミュンスターチーズは、地元でも愛される存在であり、当該酪農家が実施する農場及びチーズ工房の定期案内には、子供から大人まで多くの方々が参加していました。
午後は、フランスのアルザス地方にあるチーズ工房を訪問しました。
同工房は家族4世代に渡ってチーズを生産している歴史ある工房で、これまで数多くの乳製品のコンクールにおいて受賞実績があります。原料乳はフランスのボージュ山脈の酪農家から供給され、チーズは72℃で15秒間殺菌したものと無殺菌のものが販売されていました。
牛舎内(調査時点では放牧中)
ミュンスターチーズ(75℃15秒殺菌)
ミュンスターチーズ(無殺菌)
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年10月30日
研修5日目は午前に、フランスのコルマールのマーケットホールを訪問しました。マーケットホールでは、乳製品、ハム・ソーセージ、野菜などでBIOの認証マークのついた商品が幅広く陳列されていました。
午後はフランスのバーゼルからスペインのビルバオに飛行機で移動しました。
さまざまな種類のチーズ
肉製品やオリーブのコーナー
BIO認証を受けた野菜
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年10月31日
1日オフを挟み、研修7日目はスペインのバスク地域の養羊農家を訪問しました。同農家は、羊毛の生産が中心で、2ha以上の牧草地で羊の放牧もしています。
地域内では養羊農家の離農が進んでいますが、羊毛生産に取組み続けた経営主と芸術の分野に長けた妻が夫婦で力を合わせて羊毛を用いた衣料品をはじめ、様々な加工品を販売していました。音楽祭の際に羊毛を用いたアート作品が展示されるなど活躍の場が広がっているようです。
経営主へのヒアリングの様子
羊の放牧
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月2日
研修8日目の午前は、スペインのバスク自治州にある放牧養豚の協同組合を訪問しました。同組合には、バスク地方の放牧養豚農家がほぼ全て(24戸)加盟しています。
バスクの放牧養豚農家は、肥育経営で兼業が多く、養豚業だけに時間を割くことが難しいのが現状です。協同組合は、組合員に対し、繁殖農家からの子豚購入斡旋、肥育豚の買取等のサポートを行い、養豚農家が飼養管理(1〜1.5時間/日)に専念できるようにしています。
また組合の畜産部門では、農家からの各種相談対応を実施しており、農場に訪問する際は、畜産部門の職員と獣医師の2名体制を基本として経営支援を行います。さらに、内容に応じて組合の外部のコンサルタントが同席することもあるようです。
午後は、昨日訪問した羊毛生産農家の奥さんのアトリエを訪問しました。アトリエでは、羊毛を活用した様々なアート作品の作成・展示が行われています。歴史や伝統などが羊毛作品を通じて表現されていました。
放牧の様子
加工品の梱包発送(協同組合工場内)
アトリエにて羊毛作品の紹介
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月3日
研修9日目は午前中に酪農、養羊、養豚の複合経営を訪問し、酪農を中心にヒアリングを実施しました。同経営は、1980年代に3人の共同経営からスタートし、現在は次世代の若手組合員を含め9名体制で経営しています。
乳牛、羊、豚はいずれも放牧しており、生産効率よりも動物の快適性を重視しています。経産牛1頭当たり年間産乳量は約3300kgで、同農場内のチーズ工房では無殺菌のチーズなど数種類の乳製品が加工・販売されていました。
ヒアリングの様子(牛は放牧中)
チーズ工房
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月4日
研修10日目は、スペインのウエスカにあるスペインで2番目に規模の大きい酪農経営を訪問しました。同経営は、従業員95名で、経産牛約4500頭、子牛・育成牛約2500頭を飼養し、年間搾乳量は約6000万kgです。
80頭同時に搾乳可能なロータリーパーラーを活用して、1日3回搾乳し、1頭1日当たり平均産乳量は約47kgとなっています。また、18台のトラクターを活用して1500haを超える農地で自給飼料を生産しています。広大な土地を活用したダイナミックな酪農経営を目の当たりにしました。
ヒアリングの様子
80頭同時に搾乳可能なロータリーパーラー
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月5日
研修11日目は畜産(肉用牛、養鶏、養羊)と畑作等の複合経営を訪問しました。経営者主は、交通事故に遭ったことを契機に、2011年に農場を立ち上げ、循環型農業の実践に至っています。
飼養頭数は肉用牛110頭、羊500頭、肉用鶏500羽、採卵鶏1800羽ですべて放牧しています。販売ターゲットは富裕層が中心であり、交通事故発生から現在に至るまでのストーリーを訪問者に伝えるとともに、農場案内する(農場内を巡回しながら自然豊かな環境の中でいきいきと過ごす家畜や植物を目の当たりにする)ことで訪問者の心を惹きつけていました。
農場概要説明の様子
農場案内(トラクターでけん引)
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月6日
研修最終日は、飛行機搭乗までの時間を活用し、スペインのマドリードにあるサン・ミゲル市場を訪問しました。
同市場は、1916年に設立され、100年以上マドリード市民の台所として愛されています。市場内には、ハム・ソーセージ、乳製品、野菜、魚介類などの専門店があり、訪問当日も多くの人で賑わっていました。
100年以上の歴史を誇るサン・ミゲル市場
種類豊富なチーズ
ハム・ソーセージ等
イベリコ豚のハム
事業名 :畜産経営技術指導事業
所管部署:管理部(企画調整)
活動日 :令和7年11月7日


