震災前に福島県浪江町で酪農を営んでいた三瓶さんは85頭(うち経産牛57頭)、妻の弟である今野さんは55頭(同38頭)を飼養していたが、国から計画的避難区域に指定され、おおむね1ヵ月以内に全町民が町外へ避難しなければならなくなった。飼養している家畜についても、避難区域以外へ移動させるか、と畜販売するかの切実な選択を迫られた。迷った末に酪農を休業・廃業するのではなく、二戸共同で新天地での経営継続を選択し、故郷の津島の「T、二人(三瓶利仙、今野剛)の名前の頭文字である「T」を屋号に入れ、新たなスタートを切った。移転先は本宮市にある空き牛舎。移転にあたっては牛舎がこれまでの2戸の半分程度のスペースしかないことから、牛群検定成績データを利用するなどして、なるべくよい牛を絞り込んだ。経営管理能力が高い三瓶さんと改良技術の優れた今野さんが一緒になり、今後の発展が期待できる経営である。