効果は抜群!お灸で繁殖成績が向上
 −「牛の灸」講習会・東京都牛群検定組合−


 肉用牛、乳牛を問わず、繁殖牛は「1年1産」を実現することが、より安定した経営を行うための絶対条件と言える。

 しかし、発表会等で表彰される優良事例でさえも、なかなか分娩間隔12ヵ月をクリアする経営は少ないのが実態のようだ。繁殖障害で空胎が続けば、無駄飯を食わせることとなり、もちろん治療費もかさむわけで、繁殖障害を防ぐことが経営改善のカギと言えよう。

 そして、このところ繁殖障害の治療や予防にお灸療法が注目されている。

 そこで、東京都牛群検定組合の主催により開催された「牛の灸」講習会の模様を紹介する。

 平成12年1月27日、霜降り豚「TOKYO‐X」を造成した東京都青梅市の東京都畜産試験場を会場に、講師に獣医師の保坂虎重先生(元福岡県農業共済連八女中央家畜診療所・獣医師)をお招きし、牛の灸講習会が開催された。受講者は検定組合員の方々をはじめ、都農業共済連や畜産試験場の方々が加わりおよそ30名、田中宏和東京都牛群検定組合長が主催者挨拶をされ、早速講習を開始。

 ところで、講習会開催のきっかけは、田中組合長が保坂先生に質問された一本の電話だった。「実は私も2年ほど前から、雑誌や書籍をもとに自己流でお灸を実践しています。経産牛30頭の規模ですが、従来、年間1頭当りの乳量が8000sだったものが、今では平均9500sと大幅に増えています。一年一産もほぼクリアしていますし、なかには11ヵ月でお産を迎える牛もいます。とにかく効果がありましたから、もう少し勉強したいと思い保坂先生に電話をしました」と田中組合長。そして、その電話に快く回答された保坂先生が、上京の予定にあわせ講習会を提案され開催にこぎつけたそうだ。

 さて、講習会。牛の主要針灸ツボ図を使い、牛のツボと適用症例の講義がされる。簡単にお灸の作用を紹介すると、@消化器・泌尿器の運動の促進、A新陳代謝の促進、B筋肉のこりの鎮痛・消炎、C神経麻痺の解除・緩和、Dホルモンバランスの調整等が効果としてあげられる。

 次にお灸のやり方。@牛を枠場に入れて保定する、A尾をビニールひもで片足に縛る、Bツボに味噌を塗る(モグサの落下や火傷防止)C円錐状にしたモグサをのせる(2〜2.5g)、D蚊取り線香等で火をつけるだけだそうで、いたって簡単だ。

 引続き、ビデオによる各地のお灸の実践事例が紹介される。このビデオは先生の手作りで、先生のお灸療法をテレビ局が取材したものや、各地方局が取材したお灸療法の実践事例を先生自らが編集されたものだ。「現在の獣医療では、抗生物質の投与が一般的です。このため牛乳等では出荷の一時停止を余儀なくされます。これを改善するためにお灸療法がはじまったわけです」

 「畜産技術のほとんどは、国や都道府県の試験・研究機関で開発され生産段階へと普及が図られますが、お灸は生産現場から生まれた技術なのです」と獣医師でなければできない繁殖障害治療を、灸療法によって農家自身がある程度まで治療・予防を可能にした意義は誠に大きいと話される保坂先生。獣医さんから4日間治療をうけたが起立不能で、共済連から廃用認定を受けた牛が、お灸後すぐに起立した例もあるそうだ。

 畜産を取巻く厳しい環境の中で、繁殖成績の改善は大きな課題の一つである。廃用の場合は代替牛の購入が必要となるし、長期の空胎は乳量の低下を招き、いずれの場合も大きな損失となる。お灸療法は繁殖成績の改善や代謝機能の促進による乳量のアップとともに、抗生物質やホルモン剤等を少なくして生体内への残留をなくし、安全で美味しい畜産物を消費者に提供することでもある。まずは試してみてはいかがでしょうか。



本記事は、畜産コンサルタント2000年3月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。