以上のような傾向を踏まえて、規模間格差による規模の経済性をみてみよう。
 経産牛1頭当たりの産乳量は、各類型内において階層間ごとのばらつきがみられる。草地依存型では、10〜20頭層が5,000sを下回る低乳量水準であるのに対して、60頭以上層では8,362sの高乳量を実現している。耕地依存型や流通飼料依存型でも60頭以上層で8,000sを越える産乳量を実現しており、大規模層での産乳量水準の高さが特筆される。こうした階層での集計件数がやや少ない面はあるが、流通飼料依存型の60頭以上層のように、集計件数の比較的多い階層でも高産乳量水準を実現している。各類型とも概ね小規模層よりも大規模の産乳量水準が高いといえる。専業化した酪農の規模拡大は、産乳量水準の低下がそれほど顕在化することなく進行していると推測できる。逆に、先述の草地依存型および耕地依存型の10〜20頭層のように、5,000s以下や6,000s台の低産乳量水準あることから、小規模層での生産性の低さが指摘できよう。
 経産牛1頭当たりの購入飼料費を類型別にみると、草地依存型では40〜50頭層が25.8万円と最も低く、50〜60頭層の38.1万円が最も高い。耕地依存型では10〜20頭層の30.2万円が最も低く、60頭以上層が37.6万円と最も高い。流通飼料依存型は、20〜30頭層が38.1万円と最も低く、50〜60頭層が41.3万円と最も高い。階層間での明瞭な傾向は読み取れない。
 経産牛1頭当たりの建物施設・機器具・車両の減価償却費は、各類型とも階層間のばらつきが大きく、大規模層での費用節減の傾向はみられない。その限りでいうならば、単位当たりの固定費の節減による規模の経済性がみられないといえる。


  

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