しかし、前述のように家族労働力1人当たりの年間経常所得は、概ね大規模層での増加傾向を示している。それは表1-10でみるように、主として経産牛1頭当たりの労働時間が概ね大規模層ほど少ないという傾向を反映したものである。経産牛1頭当たり年間労働時間の規模間格差をみると、草地依存型で10〜20頭層が60頭以上層の2.2倍、耕地依存型で両階層の格差が2.4倍、流通飼料依存型も同様に格差が2.6倍となっている。このことは搾乳方式等の違いを反映したものと考えられ、大規模層での省力化技術の導入が労働時間の短縮をもたらしているものと推測できる。
 経産牛1頭当たりの労働時間の規模別格差は、当然のことながら家族労働力1人当たりの経産牛飼養頭数の差となって現れる。この規模間格差をみると、草地依存型で60頭以上層が10〜20頭層の2.5倍、耕地依存型で両階層の格差が2.4倍、流通飼料依存型でも格差が2.6倍となっている。このように大規模層での家族労働力1人当たり年間所得の高位化傾向は、1人当たりの飼養管理頭数の増大という労働生産性の向上によってもたらされたものである。いわば規模の経済性は、労働生産性の向上への寄与がもたらす単位当たりの労務費コストの低減として発揮されているといえる。


表1−10 労働生産性の規模別比較(都府県)

(単位:頭、時間)

項目および経営類型別

全体

1〜10頭

10〜20

20〜30

30〜40

40〜50

50〜60

60〜

労働力1人当り経産牛飼養頭数
               

草地依存型

14.1

-

10.6

13.3

14.4

12.9

16.5

26.6

耕地依存型

15.3

-

10.2

13.4

14.9

20.6

19.1

24.5

流通飼料依存型

16.8

-

11.4

12.1

14.4

16.0

21.2

29.4

経産牛1頭当り年間労働時間
               

草地依存型

179

-

209

199

163

178

139

96

耕地依存型

163

-

245

179

150

110

117

103

流通飼料依存型

153

-

216

192

164

143

108

84

経産牛1頭当り年間飼養管理労働時間
               

草地依存型

161

-

192

182

146

157

116

86

耕地依存型

140

-

218

152

126

97

97

82

流通飼料依存型

141

-

188

179

152

130

99

80

飼料生産延べ10a当り労働時間
               

草地依存型

3.9

-

4.3

4.3

3.3

3.4

5.5

1.8

耕地依存型

7.3

-

13.9

7.6

6.5

3.9

4.9

5.3

流通飼料依存型

11.5

-

39.1

12.4

8.6

8.8

9.0

6.7


  

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