（４）北海道・草地依存型
　表1-18の北海道・草地依存型の場合には、次のような特徴が指摘できよう。
　1.高収益階層と低収益階層とでは、経産牛１頭当たりの売上高格差が6.0万円生じている。格差は全面的に牛乳販売収入の差5.1万円に帰着することになるが、高収益階層と低収益階層との間での乳価差は1.6円であるから、格差の基本要因は経産牛１頭当たりの産乳量格差546�sによって生じている。
　2.経産牛１頭当たりの費用総額では、高収益階層よりも低収益階層が7.8万円上回っている。低収益階層が費用項目全般を通じて大きな数値を示しているが、その主な費目格差の比較的大きいものとしては購入飼料費の5.8万円、減価償却費の1.8万円、もと畜費の1.4万円、販売費・一般管理費の1.4万円などである。
　3.購入飼料費についても金額面からの類推でみるならば、低収益階層が高収益階層よりも大幅に大きくなっていることからも、給与量自体の問題というよりも、それが産乳量に結びつかないという、飼料効率・生産効率の問題といえる。乳飼比が低収益階層では42.3％を示し、高収益階層の28.7％と13.6ポイントという大きな差がみられる。　
　4.１戸当たりの経産牛飼養頭数は、低収益階層が74.6頭で、高収益階層が48.9頭で、25.7頭という大きな違いがみられる。経産牛１頭当たりの労働時間は、高収益階層が131時間、低収益階層が101時間という大きな違いが生じている。このため、経産牛１頭当たりの家族労働費額が5.4万円の格差を示している。低収益階層では、大規模経営を実現しているものの、労働費節約の効果が生かされていない問題がある。

表１−１8　所得階層別比較(北海道･草地依存型)

項　　 目			経産牛１頭当り年間経常所得高低別			比　　較
			下位20％	中位60％	上位20％	(III)-(I)	(III)/(I)
			(I)	(II)	(III)
集計件数			13	41	13	-	-
収 益 性	経産牛１頭当り年間経常所得(円)		38,620	156,179	252,317	213,697	6.53
	家族労働１人当り年間経常所得(千円)		876	2,770	4,665	3,789	5.32
経 営 規 模	家族労働人員(人)		2.6	2.8	2.8	0.2	1.08
	経産牛飼養頭数(頭)		74.6	50.0	48.9	△ 25.7	0.66
	未経産牛飼養頭数		17.6	13.4	12.4	△ 5.2	0.70
	自作地の耕地･草地延面積(a)		2,876.2	3,208.0	3,345.0	468.8	1.16
	借地･共同利用地の耕地･草地延面積		1,435.9	804.0	406.2	△ 1,029.7	0.28
	計		4,312.1	4,012.0	3,751.2	△ 560.9	0.87
経 産 牛 一 頭 当 り 売 上 高	牛乳販売収入(円)		553,777	563,988	605,027	51,250	1.09
	子牛･育成牛･肥育牛販売収入		40,168	43,449	47,158	6,990	1.17
	その他販売収入		47,932	41,648	49,450	1,518	1.03
	計		641,878	649,085	701,635	59,757	1.09
経 産 牛 一 頭 当 り 当 期 生 産 費 お よ び 販 売 費 ･ 一 般 管 理 費	種付料(円)		14,223	12,657	13,192	△ 1,031	0.93
	もと畜費		18,113	9,354	3,795	△ 14,318	0.21
	飼 料 費	購入	236,589	197,228	178,899	△ 57,690	0.76
		自給	35,404	48,085	39,275	3,871	1.11
		計	271,993	245,313	218,174	△ 53,819	0.80
	労 働 費	雇用	14,989	2,409	1,543	△ 13,446	0.10
		家族	114,114	174,051	168,423	54,309	1.48
		計	129,103	176,460	169,965	40,862	1.32
	敷料費		4,200	2,396	-	-	-
	診療･医薬品費		11,776	9,198	11,180	△ 596	0.95
	電力･水道･燃料費		27,983	27,443	22,862	△ 5,121	0.82
	減 価 償 却 費	建物･構築物	28,545	26,762	15,334	△ 13,211	0.53
		機器具･車輌	24,372	36,198	23,413	△ 959	0.96
		家畜その他	55,541	50,764	51,974	△ 3,567	0.94
		計	108,457	113,724	90,720	△ 17,737	0.84
	修繕費･小農具費		34,276	26,109	33,879	△ 397	0.99
	消耗品･諸材料費		9,048	13,138	8,036	△ 1,012	0.89
	賃料料金その他		55,308	33,435	49,270	△ 6,038	0.89
	販売費･一般管理費		88,075	86,561	73,746	△ 14,329	0.84
	計		772,555	755,789	694,818	△ 77,737	0.90
そ の 他 の 指 標	経産牛１頭当り年間産乳量(kg)		7,491	7,662	8,037	546	1.07
	搾乳牛率(％)		85.3	84.9	84.8	△ 0.5	0.99
	平均分娩間隔(月)		13.4	13.5	13.3	△ 0.1	0.99
	経産牛事故率(％)		5.0	3.2	2.4	△ 2.6	0.48
	乳飼比(％)		42.3	34.9	28.7	△ 13.6	0.68
	所得率(％)		6.1	24.3	36.0	-	-
	生乳１kg当り価格(円)		74.1	74.8	75.7	1.6	1.02
	平均乳脂率(％)		3.89	3.95	3.97	0.8	1.02
	労働力１人当り経産牛飼養頭数(頭)		23.2	17.7	18.1	△ 5.1	0.78
	経産牛１人当り年間労働時間(時間)		101	136	131	30	1.30
	経産牛１頭当り飼養管理労働時間(〃)		91	122	115	24	1.26
	飼料作延10a当り労働時間(〃)		1.5	1.5	1.8	0.3	1.20
	経産牛１頭当り供用土地面積(a)		63.7	82.0	81.0	17.3	1.27