4.収益性の経営類型別所得階層別比較
 経営類型別の集計農家について、経産牛1頭当たりの年間経常所得を収益性の指標として用い、その収益性の高低から下位20%(低収益階層と称す)、中位60%、上位20%(高収益階層と称す)の3群に区分し、その収益階層ごとに平成9年度の経営数値を整理したものが表1-15から表1-18である。
 各類型における上位20%の平均値は、類型内における低位階層の身近な到達目標となるものであり、その意味からも、階層間の特徴を明らかにすることは、経営改善の資料として役立つと思われる。

(1)草地依存型(都府県)
 表1-15により草地依存型の階層間比較を行うと、次のような特徴が指摘できる。
 1.高収益階層と低収益階層との間では、売上高格差が26.0万円生じている。牛乳販売収入だけでみてもその差は24.5万円ある。この経産牛1頭当たりの牛乳販売収入格差は、平均乳価は低収益階層が僅かながらも上回っていることから、1頭当たりの産乳量が低収益階層が5,229sと極端に低く、高収益階層はそれを3,058s上回る産乳量水準の差がもたらしたものである。
 以下では費用構成の面を確認してみよう。
 2.低収益階層は高収益階層よりも、費用総額が6.1万円下回っている。低収益階層が大きく上回っている費目の格差としては、自給飼料費の3.3万円、購入飼料費の1.8万円などである。収益性向上のためには、飼料費に代表される投入生産資材の費用節減ないしは費用効率の向上を図ることが要請される。
 3.1戸当たりの経産牛飼養頭数は低収益階層が24.5頭で、高収益階層の43.2頭に対して18.7頭の差がみられる。中位階層が34.0頭であるから、大規模層で高収益を実現しているといえる。経産牛1頭当たりの労働時間では低収益階層がやや少ないが、その格差は小さい。労働力1人当たりの経産牛飼養頭数などの差も少なく、労働投入面での量的問題が収益性に大きく影響しているとは考えにくい。
 4.乳飼比は、低収益階層の52.8%に対して、高収益階層が33.7%であり、19.1ポイントもの大きな格差がある。飼養管理面や牛群の資質の問題を内包していると思われる。経産牛事故率が低収益階層で著しく高い数値を示すことなどは、そうした問題を反映しているとみられる。

表1−15 所得階層別比較(都府県・草地依存型)

項   目

経産牛1頭当り年間経常所得高低別

比  較

下位20%

中位60%

上位20%

(III)-(I)

(III)/(I)

(I)

(II)

(III)

集計件数

8

25

8

-

-



経産牛1頭当り年間経常所得(円)

6,054

148,363

323,999

317,945

52.52

家族労働1人当り年間経常所得(千円)

209

2,069

5,917

5,708

28.31




家族労働人員(人)

1.6

2.5

2.9

1.3

1.81

経産牛飼養頭数(頭)

24.5

34.0

43.2

18.7

1.76

未経産牛飼養頭数

3.8

6.9

7.4

3.6

1.95

自作地の耕地・草地延面積(a)

484.9

733.2

471.9

△ 13.0

0.97

借地・共同利用地の耕地・草地延面積

611.9

1063.3

823.1

211.2

1.35

1096.8

1796.6

1295.0

198.2

1.18










牛乳販売収入(円)

566,415

673,952

811,189

244,774

1.43

子牛・育成牛・肥育牛販売収入

29,430

54,209

42,994

13,564

1.46

その他販売収入

2,311

4,514

4,376

2,065

1.90

598,156

732,674

858,559

260,403

1.44
























種付料(円)

11,061

1,070

12,222

1,161

1.10

もと畜費

6,385

15,730

26,959

20,574

4.22



購入

291,051

287,585

272,787

△ 18,264

0.94

自給

50,096

22,748

17,353

△ 32,743

0.35

341,147

310,333

290,140

△ 51,007

0.85



雇用

13,334

5,637

8,948

△ 4,386

0.67

家族

134,338

161,177

176,144

41,806

1.31

147,672

166,815

185,092

37,420

1.25

敷料費

6,119

3,307

2,502

△ 3,617

0.41

診療・医薬品費

11,411

14,153

19,341

7,930

1.69

電力・水道・燃料費

22,611

25,295

31,198

8,587

1.38





建物・構築物

14,372

13,625

20,546

6,174

1.43

機器具・車輌

29,699

44,563

32,995

3,296

1.11

家畜その他

56,396

57,086

57,447

1,051

1.02

100,421

115,273

110,988

10,567

1.11

修繕費・小農具費

19,339

24,800

19,813

474

1.02

消耗品・諸材料費

7,075

15,196

9,701

2,626

1.37

賃料料金その他

1,363

22,375

20,176

18,813

14.80

販売費・一般管理費

71,008

86,246

78,259

7,251

1.10

745,611

809,593

806,391

60,780

1.08






経産牛1頭当り年間産乳量(kg)

5,229

7,082

8,287

3,058

1.58

搾乳牛率(%)

85.6

87.9

87.8

2.2

1.03

平均分娩間隔(月)

14.2

14.2

13.6

△ 0.6

0.96

経産牛事故率(%)

18.2

9.8

6.1

△ 12.1

0.34

乳飼比(%)

52.8

42.8

33.7

△ 19.1

0.64

所得率(%)

1.2

20.3

37.8

-

-

生乳1kg当り価格(円)

96.5

92.0

95.5

△ 1.0

0.99

平均乳脂率(%)

3.89

3.88

3.77

△ 1.2

0.97

労働力1人当り経産牛飼養頭数(頭)

14.9

13.4

15.3

0.4

1.03

経産牛1人当り年間労働時間(時間)

171

182

175

4

1.02

経産牛1頭当り飼養管理労働時間(〃)

145

167

157

12

1.08

飼料作延10a当り労働時間(〃)

4.6

3.4

4.8

0.2

1.04

経産牛1頭当り供用土地面積(a)

45.7

52.8

30.1

△ 15.6

0.66


  

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