緑と清流とミルクの山里
生産・処理・販売の一貫体制を確立
−三重県・大内山酪農農業協同組合−

 

 平成10年の暮れに公表された農政改革大綱・同プログラムを受ける形で、担い手の確保・育成や農村の有する多面的機能の発揮の一環として中山間地域の農業の振興が議論されている。

 中山間地域はとにかく人口が少なく、また耕地が狭く、規模の大きな農業は難しい。さらに牧場が河川の上流にある場合は、水質・環境規制のため厳しい対応が求められるのである。  そこで、中山間地域の広域酪農地帯で、乳業工場を中心に牛乳の生産から販売まで一貫体制を確立し、50年の歴史を持つに至った先進的な酪農協の活動を紹介する。

 大内山酪農農業協同組合のある三重県大内山村は県の南部に位置し、四方を山々に囲まれ全面積6473haのうち山林面積が約94%、耕地面積はわずか2%と山林が圧倒的に占める山と川の里である。  JR関西本線亀山駅から紀勢本線、参宮線と乗継ぎ約2時間半、普通列車のみが停車する大内山駅は、木造の古い駅舎で現在は無人駅となっている。「駅前商店街は農林産業の盛んな時代は活気がありましたが、今では静観な街です」と大内山酪農協の伊藤総務課長。

 駅裏方の大内山川沿いには大内山酪農協の建物が見え、今では村内で最も活気のある企業だ。

 昭和23年に酪農組合を設立。以来半世紀の歴史のなかで昭和54年には集乳地区を拡大し、現在では4市15町村の69戸の組合員で構成される広域の農協である。

 ちなみに、三重県の酪農家戸数は平成11年2月現在で200戸(乳牛総頭数1万1500頭)で、県内の酪農協組合数は12年度の合併により3組合になる予定だそうだ。  さて、大内山酪農協の紹介のポイントは、全国的にも有数の県下最大の処理プラントを持ち、組合員が一体となって乳質の向上に取組む生産基盤を元に、牛乳の生産、処理・加工、販売の一貫体制を確立し、学校給食はもとより生協やスーパーとの産直活動に早くから取組んだことである。

 また、現在はその他の事業として、山村の豊かな自然環境を生かしたふれあい牧場や滞在型施設をオープンし、都市住民との交流の場を整備し、畜産の振興、地域活性化など地域の酪農振興に貢献している。

 「69戸の組合員の乳牛総飼養頭数は約3650頭で、1日の集乳量はおよそ64tです」「近年までは経営を中止する酪農家の生産量をなんとか規模拡大によりカバーしてきましたが、ここに来て後継者不足やふん尿処理などの問題で次第に生乳生産基盤が低下する傾向にあります」と打開策に苦慮される生駒組合長。

 戦前、この地域は養鶏の村だったそうだ。戦争で鶏の餌が入ってこなくなり、そこで草で飼うことができ乳も搾れ、しかも農耕もできる乳牛を導入した。当時、和牛を飼育していた農家も乳牛に切りかえ、生乳生産が大幅に増加した。しかし生乳の販売先は、遠隔地の松阪が中心で、鉄道便の搬送では冷却もままならず夏場は乳質が極度に低下するなど苦労されたそうだ。

 そして、昭和23年に酪農専門の組合を設立し地域酪農振興の基盤を作り、さらに牛乳処理業の許可を得て牛乳の処理・加工を行い、販売事業を開始した。駅のプラットホームで、ビン詰めの温かい牛乳数10本を肩にかつぎ販売したことから、大内山村は乳の里と評判になった。

 それ以来牛乳の生産、処理、販売の一貫体制が守られており、昭和35年に学校給食牛乳の供給を開始し、42年には新工場の建設、50年には生協との取引きを開始し大きく飛躍する基礎が確立された。

 生協との取引きに当っては、当時の組合長が生協に何度も足を運び、消費者と生産者の意見交換、牧場視察や工場見学などを企画し、販売拡張の活動を続けたという。生協と酪農協の協同組合の組織同志が連帯し、お互いの利益を守るため協力しあい、安全で新鮮で美味しく、しかも低価格の「生協牛乳」をいかに作るかが最も重要な課題であったそうだ。

 生協牛乳は出発点から消費者と生産者との交流のなかで、お互いのニーズを一致させ生まれた。その特徴は品質と表示で、成分無調整、脂肪分と無脂乳固形分が重視された。以来一貫して生産者が生乳の品質向上への努力を消費者が正確に理解し、生協と酪農協の連携のもとに生協牛乳が拡大した。そして今では、生協への出荷量は生産量の約60%を占めているそうだ。

 現在の組合職員数は115名で、工場の規模は、貯乳能力が200t、牛乳処理能力は1日当たり約100tである。

 より良い品質の牛乳を消費者へ届けるために、組合では生乳の品質基準を厳しく規制している。一例をあげると細菌数200万/mL以上は受入れを停止し、品質の成績により賞罰が決められている。もちろん、乳成分が低下しないように生乳品質に対しては厳しい指導がなされている。  当組合の製品は40種類あり、生産量の順位としては、牛乳、低脂肪乳、カルシュウム乳、ヨーグルト、その他となっている。また、週に1度容積400Lのメタルチャーンでバターも生産している。

 特徴的なことは、学校給食牛乳を4市29町村の220校の学童約3万8000人に供給していることだ。また取扱い牛乳販売店数は45店で、販売地域は県内全域、新宮市、愛知県の西部地域が対象である。

 「酪農家は高品質牛乳を生産するために、エサや牛の飼養管理に気をつけ、基準以上の生乳を出荷している。それを衛生的に処理し、安全で美味しい牛乳を消費者に1日も早く自らの手で処理し販売する。生産・処理・販売が一体となって行うこの事業を地域を支える産業として永続させることが組合の使命です」と組合長は話された。

 (大内山酪農協の取組につきましては、制作:(社)農林放送事業団、提供:本会による番組「日本全国ふれあいごちそう産」でグリーンチャンネルを通じ平成12年2月に放送されました。



本記事は、畜産コンサルタント2000年2月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。