酪農家に「ゆとり」を提供
―千葉県・袖ケ浦酪農ヘルパー利用組合―


 生き物である家畜を飼育する畜産農家にとって、休日はもちろんのこと冠婚葬祭や家族の病気の時にもなかなか休めないのが大きな悩みとなっている。このため「何十年も休みを取ったことなんかないよ」と言った声さえ耳にする。

 こうした実情を踏まえ、労働時間の軽減、なによりもゆとりのある経営をめざし酪農ヘルパー制度ができたわけで、このところ肉用牛も含め全国各地でヘルパー組合が設立されヘルパーさんが活躍している。

 しかし、設立にあたっての問題もいくつかあるようだ。ヘルパーさんの雇用条件に労働環境、労災・社会保険をどうするか。また、家畜飼養に関する知識や技術の習得、事故発生時の損害や障害の補償等、そしてなによりヘルパーの人材確保が最大のネックとなっている。

 そこで、こうした点を解決し、大きな成果をあげている千葉県袖ケ浦市の袖ケ浦農業協同組合の組合員で構成される袖ケ浦酪農ヘルパー利用組合(組合長小泉隆明さん)を紹介する。

 さっそく、袖ケ浦農業協同組合営農指導課の若林博之さんに酪農ヘルパー利用組合設立の経緯等について話を伺った。

 「昭和60年8月に牛群検定組合が組織され、技術的問題はほぼ解消されました。そこで、つぎの目標として希望の強かった休日が取れる酪農経営をめざすこととなり、袖ケ浦農協の酪農家39戸のうち27戸が参加して、62年7月に袖ケ浦酪農ヘルパー利用組合を設立し、組合員が月1回の計画的休日の確保ができるようヘルパー2名を採用してスタートしました」とのこと。この時、ヘルパー確保の難しさや採用ヘルパーの教育・研修の必要性を強く感じるとともに、組織を酪農仲間で支えていく連帯感の重要性を再確認したという。特に組合員である経営主に対しては、誰にでも分かる飼養管理内容とすることを決め、牛舎を明るく、休憩室やトイレを設置するなど徹底を図り、受入れ体制も整備したそうだ。さらに、酪農ヘルパー利用組合では利用者の責務として@牛舎内に作業手順をかいた黒板を設置する、A飼料給与量を示した牛名板を設置する、B搾乳機器類は所定の場所に確実に保管する、C抗性物質を使用した乳牛および生乳出荷のできない個体については赤色スプレーで目印をつけること、などを徹底したという。

 ヘルパーの処遇や労務管理等については、「正規職員として雇用していますから、労災保険や社会保険、厚生年金等の各種公的社会保障制度に加入しています。給与は、利用組合の定める基本給基準表に基づく職務遂行能力を基準として決定し、基本給の金額は3つの級と10の号俸からなる俸給表で格付けます。また、退職金等の規程も設けてヘルパーが安心して勤務できるようにしています」と諸規定の整備には万全を期したと苦労を語られる若林さん。

 さて、ヘルパー作業の内容。はじめに派遣計画の調整立案だが、ヘルパー利用希望酪農家は利用希望日を前月の17日までに農協に申し出る。これを受けて酪農ヘルパー利用組合の3役と若林さんで構成する月1回の派遣日程調整会議で、酪農ヘルパー派遣日程の調整をし、定期利用者計画を作成する。ちなみにヘルパーの派遣人数は乳牛15頭未満の場合は1人。40頭までは2人。常時飼養頭数40頭以上の場合は3人とのこと。そして新任者はベテランと組み、派遣先酪農家が初めての場合は良く知っている者を組合わせるなどの配慮がなされている。また、各組合員は飼料給与、搾乳方法を記入したファイルを整備しており、ヘルパーは派遣先農家でスムーズに作業をすすめる。

 作業は当日の夕方の作業と翌日の朝の作業が一セットで、作業終了後に利用者とヘルパー相互の氏名を記入・押印した作業日報を作成し、農家とヘルパーがそれぞれ控えを持つとともに組合に提出する仕組みだ。ちなみにヘルパー利用料金は、基本料金が7000円/人、搾乳牛400円/頭、乾乳牛200円/頭、育成牛200円/頭で、これに昼の給餌作業が追加された場合は、1000円と給餌頭数1頭当り50円が加算される。

 「現在5名(うち女性が2名)のヘルパーを雇用していますが、実は利用組合の経営も大変なんです。そこでヘルパーの効率的な活用も考え、組合員には月1回のヘルパー利用を義務付けています」と経営的な面でも万全の模様。実際、多くの農家は2回以上の利用が多いそうだ。そして、ヘルパーの過失による損害賠償も配慮し損害保険に加入している。

 このような取組みの結果、組合員も当初の27戸から39戸に増加し、利用農家は月2回の定期的休日の取得を実現してゆとりが生まれ、また冠婚葬祭等にも気兼ねなく休日を取得している。

 これからの畜産経営、魅力のある仕事として後継者や担い手を確保するうえでは、とにかく「ゆとり」が必要である。そして、ゆとりある仕事のなかに新しい発見や発想が生まれ、新たな経営展開もできるのであろう。そんなゆとりを提供するヘルパー組織が、全国的に、また体系的に整備されることを期待したい。



本記事は、畜産コンサルタント1999年9月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。