生産技術セミナー

肉用牛肥育経営マニュアル(3)

−もと牛の能力を十分に引き出し肥育経営の所得向上を計るために−

長崎県肥育経営マニュアル作成委員会

 

7.経営の要点(承前)

(1)売上高と収益性

 肥育牛の販売価格と収益性は必ずしも一致しません。即ち、販売価格が高ければ収益が大であるということにはなりません。現在の肥育経営の実態は、このことが案外見逃されているように思われます。
 もと牛価格の高低により生産原価は大きく違ってきます。もと牛導入の時点で、少なくともA−4以上の高級肉としての仕上がりを予想して高いもと牛を導入するが、肥育の結果は、一部の牛だけが上ものとなり、大部分(50〜60%)はA−3以下となり、経営全般の足を引っ張っている場合が殆どの経営でみられます。
 また、増体速度の大きい牛は、飼料の利用性が高く、飼料の要求率(1s増体に要する飼料の量)は低い。即ち、飼料費は少なくて済むことになります。枝肉単価は少しくらい低くても飼料費が節減できるので、収益はかえって大きくなる場合が多いようです。
 肥育経営の合理性は、肥育期間内の1頭1日当り差益(売値からもと牛費及び飼料費を差し引いた残りを肥育日数で除したもの)で判断すべきでしょう。一般には、もと牛費用中位の牛が1頭1日当りの差益は高い傾向があらわれています(表7−1)。
 肉質や増体を重視し、肥育差益をあげるためには、もと牛のいわゆる系統は無視できませんが、単に高いもと牛を求むればよいとはいえない。
 自分の飼い方にあった牛、逆にいえば、もと牛の状態に合わせた飼い方を熟練することが肝要でしょう。
 単に売上高の競争は、奨励の意味と管理技術を試すためには意義なしとはしないが、往々にして経営的感覚を失うことになり、販売価格はかなり低くても1日当り差益の高い経営があることを見逃してはならないと思います。

(2)飼養規模と肥育回転率

 飼養規模は、主として経営者の労働力との関係で決まりますが、その他、資本力・経営立地等の諸条件、舎内構造やその利便性、飼養管理の合理化等により影響をうけることは勿論です。
 薄利多売を予想して、能力以上の規模拡大を行い、手がまわりかねて全てが省略化ということで、惨めな経営に陥っている例も枝肉価格低落の時期にはよくみられます。むしろ、労力には若干の余裕を持って、精鋭主義的経営が成功している例が多いようです。一般には、男性労力1に対して、黒毛和種の肥育100頭程度が普通でしょう。
 肥育回転率は、年間の1日平均常時頭数に対する年間出荷頭数の割合です。12カ月肥育であれば100%ですが、18カ月肥育であれば66%となります。一般には65〜70%程度の回転率となっています。
 肥育期間を短縮すれば1日当りの増体量は大となり、回転率は高くなります。現在和牛の間接検定は、終了時21カ月齢で検定期間は12カ月ですが、この間の1日当りの増体量は、0.9gに達しており、1kgの牛も現れています。
 増体速度は、期間が長くなればなるほど、また、体内の脂肪が蓄積すればするほど一般に低下します。増体速度が低下するほどの状態にまで肥育しないと、肉質はよくならないと考えられていますが、これには大きな疑問があります。
 牛は、筋肉中の水分を脂肪に置き換える形で太っていきます。つまり、脂肪交雑も進んで行くことになりますが、脂肪交雑のための脂肪の分配量は、遺伝的にコントロールされていると考えられます。その限度に達すれば、それ以上の増加は望めないと云うことです。むしろ皮下脂肪や筋間脂肪の増加となって、価値の上昇にはつながらないことになります。従って、その結果、正肉の歩留りは低くなり、損失は大きくなるわけで、即ち、かけたコストが付加価値の上昇によって回収でない場合が多いと云うことは、肥育経営上重要な問題でしょう。

(3)金利負担

 肥育経営は、農業の中でも多額の投資を必要とする経営です。即ち各種の施設、もと牛代、飼料費等です(肉牛常時1頭当り60〜80万円)。これらの投資額の少なくとも50%以上が自己資本でまかない得ればよいわけですが、ほとんどの肥育経営は大部分が負債によって賄われています。
 経営者は、これらの金利の発生諸元とその額、経営上の限度額等を熟知して経営にあたり、自己資金による飼養牛の割合が少しでも増加するよう心がける必要があります。
 また、牛房施設や市場の関係で牛の回転がうまく行かず、もと牛の導入が時期的に片寄り、従って、出荷時期も片寄ることとなり、未収金の停滞につながり、予期以上の金利負担となる等の例も多く見られます。これらは、計画的な飼養規模と牛房との関係、肥育期間の無計画性、また、徒らに肥育期間の延長を図る等の原因によることが多く、経営上の要点と考えるべきでしょう。


8.繁殖肥育一貫経営のあり方

 最近農家及び技術者間でも一貫経営についての関心が深いようですが、理論的には合理的な経営と考えられます。
 一貫経営にも二つの形態があり、一つは地域一貫と云われるものであり、他は個人完結型の経営です。
 個人完結型の一貫経営は、次に上げるような多くの問題点があり、現在においてはうまく展開していない例が多いように思われます。

@授精後子牛を生産し、肥育牛として出荷するまで37〜38カ月(3年以上)を必要とし、資金の回転も遅くなり、自己資金対応が困難となること。
A繁殖技術に手間取り、また、繁殖部門が肥育的な管理になりやすく、繁殖成績が低下する傾向があること。
Bもと牛として肥育部門への繰入れ、肥育牛の出荷時期等がまちまちとなり、肥育ステージに合った飼養管理が煩雑となり適切な管理がやりづらいこと。

 

C肥育牛の能力、体型等が不揃いになること。

 

D労力的にも繁殖部門に傾斜しがちであり、肥育部門がおろそかになる場合が多いこと。

 従って、現在これらの条件が解決されない段階では地域一貫方式か分業方式が無難なように思われます。将来は、一貫経営の合理性を生かし、それぞれ関係団体の支援や管理者の技術の徹底及び、経営規模の拡大等、漸次条件が整えば一貫経営の有利性が発揮できると思います。


9.肥育素牛の選定方法

(1)肥育素牛選定の心得

 現在、子牛市場では牛の系統の他に体重を重視した取引が行なわれています。しかし、実際には体重は牛の遺伝的大きさと増体能力を示す目安になりにくいといわれていますが、市場では体重しか示されないため、市場出荷牛の中には濃厚飼料を過給して体重を大きくした牛や、出荷月齢を遅らせて体重を大きくした牛等がみられます。このような牛は肥育を始めると、概して消化器が弱く、下痢や鼓張症を繰り返したり、飼い直しを試みても粗飼料を十分食い込めなかったり、すぐに尿石症になったりといったことが指摘されています。
 このようなことから、肥育素牛の購買にあたっては、系統や体重だけに左右されない、将来性のある素牛選定技術を身につけることが大切です。
 では、生体で測定できる部位のうち何を目安に肥育素牛を選定すればよいのでしょうか。
 体尺測定値のうち遺伝的な牛の大きさは、体高、十字部高、体長によく現れるので、素牛選定においてはこれらを重視すべきです。
 また、栄養の影響は、体重や胸幅等の体の幅に大きく現れることから、体重は正しい栄養状態で飼育されてきたか否かを判断するための目安と考えられます。体重が栄養不足や疾病等で著しく小さい牛は、肥育期間中の増体が悪くなりますが、正常発育の90%程度であればその後の肥育期での増体に影響は認められないといわれています。
 具体的には、去勢の場合、月齢で8カ月齢程度、体重が240〜250kg 、体高が110cm前後が目安となります(表9−1)
 表9−2は素牛の子牛育成段階における管理とその後の肥育成績の関係を調べた結果ですが、子牛育成期の飼養管理の相違が肥育成績に及ぼす影響は大きく、粗飼料多給や放牧中心で育成された子牛の肥育成績は優れていることが伺えます。

(2)肥育素牛の選定基準

 肉用牛の肥育期間は長期にわたります。出荷まで、飼い易く、飼料の食い込みが良く、正常に増体し、体型がくずれない牛を選定することが重要です。以下に、肥育素牛としての選定基準を示しました。

 @ 骨組みしっかりしていること
 
 A 背線が平直で力強いこと
 
 B 体高に比較して十字部高が高いこと
 
 C 飛節が高めであること
 
 D 肋張りよく、胸の深みがあること
 
 E 垂れ腹、巻き腹でないこと
 
 F 頭が大きすぎず、口や鼻が大きく、顎がよく張っていること
 
 G 全体のバランスがとれていること
 
 H 皮膚にゆとりがあること
 
 I 飼い過ぎでないこと
 
 J 肩付き、歩様がしっかりしており、蹄が大きめであること
 
 K 前肢の管骨が細目のこと(骨じまりのよいこと)
 
 L 尻幅があり、ももの厚みが十分なこと
 
 M 元気、活力があること
 
 N 陰毛に白色結石の付着がないこと
 
 O 下痢や軟便でないこと。
 
 P 被毛は光沢があり、脱毛等がないこと
 
 Q 皮膚に発疹や真菌症がないこと


10.出荷

 肥育完了までは熱心に飼養管理を行うが、いざ出荷となれば以外にぞんざいに牛を取扱う事例に遭遇することがあります。最近では枝肉等級判断の材料となる枝肉の損傷、肉色、きめ・しまり、水腫の発生及び歩留低下等の原因が牛の出荷や輸送、屠殺までに起因する場合が多いとも言われています。牛の引きまわし、トラック積載、運搬の不慣れ、取扱いの不手際によるストレスの発生、屠場での管理はすべて枝肉性状に影響する要因と成り得ることは予想されることであり、新たな問題となっています。
 長期間にわたり管理した牛であり、出荷前の飲水、手入れ、その他規定どおりの処置は的確におこない、輸送は牛の取扱いに慣れた業者を選定したほうがよいでしょう。また、牛の取扱いもていねいにおこない,屠場でのストレスも回避する等の心遣いが必要です。肥育地帯によって、出荷技術の差は意外に大きいように思われます。

(1)出荷直前の管理

 出荷しようとする牛は日頃から適切に飼養管理され、出荷当日の健康状態が良好でなければなりません。日頃の管理がゆきとどかない場合には、牛体の汚れも目立ちます。
 出荷前には必ず牛体のぼろ落しをした後に出荷すべきです。また、蹄の状態も日頃から注意し、適宜削蹄を実施するのが基本ですが、出荷・輸送時のストレスを軽減する目的で、出荷2〜3週間前には蹄の伸び過ぎをチェックする必要があります。
 絶食は屠殺日時を起点とした場合に、屠殺前24〜48時間に開始すればよいでしょう。また、絶食開始後も飲水だけは制限すべきではありません。

(2)積込み・積おろし

 輸送課程を通じ肥育牛にもっとも多くのストレスを与えて体調に悪影響を及ぼすのは、トラックへ積込む時とトラックから降ろす時とも言われます。作業を急ぐあまり大声をあげて追ったり、時には鞭やロープで尻やでん部を強く打ち、さらには尾根部の関節が脱臼するのもかまわずに尾を挙上して後ろから押している光景を時折見かけます。これらは肥育牛に対して極めて強いストレス要因であり、肉色や肉のきめ・しまり低下のひきがねとなります。
 肥育牛のトラックへの積込みにあたっては、その作業の省力化を図るとともに、牛の損傷等を防止するため、牛の積載・おろし用の設備が必要です。牛の積込み設備を設計する場合、特に留意すべき点は、地面からトラックの荷台への通路となる部分の構造です。要するに、傾斜がゆるやかでしかも足場のよいことが求められます。

(3)輸送

出荷牛の輸送に際して肥育農家やトラック運転手が心がけることは次の2点に要約されます。

 1)輸送に関わる体重の減耗とストレス発生による影響を最小限度にとどめる。
 2)輸送によっておこる損傷事故を完全に防止する。

 絶食状態でも12時間位までの輸送であれば目減りは3〜4%であり、体組織の目減りにまでは至りません(表10−1)。また、実際の体重減耗は肥育牛の積込み時及び輸送開始後のはじめの2〜3時間が最大であると言われています。


 輸送用トラックの荷台に十分量の敷料を敷くことにより、牛の足場が安定し、体重の減耗が抑制されます。これと反対に、トラックへの積込み過剰・過小、運転手の技術未熟または性質の粗雑さによる運転速度の不手際(急発車、急停車など)はいずれも輸送中の牛に対しストレス要因となって、体重の減耗が一段と大きくなります。
 肥育期間、輸送時及び屠場到着後を通じて落ち着いている牛群とそうでない牛群とでは、屠殺後の肉質に差があることが報告されています(表10−2)。このため、肥育牛の積込みに当たっては、できるかぎり同一牛房または隣接牛房とういう具合いに、なじみのある個体がトラック内で隣り合わせになるよう配慮することも重要です。

(4)屠場到着後の取扱い

 輸送に伴うストレスにより、肥育牛の筋肉内グリコーゲンが消耗し、その結果肉色が濃くなることが知られています。このため、屠場到着後は肥育牛が安心してゆっくり休息できるようにして、この間に肝臓内に貯蔵しているグリコーゲンの補給を受けて筋肉内グリコーゲン濃度を回復させることが望まれます。しかし、牛がゆっくり休息できるようなけい留所を有する屠場は少ないのが現実かと思います。このため、一般的には屠場到着日に屠殺した方が翌日屠殺する場合より肉質の低下が抑制されます。(表10−2)


11.肥育牛における疾病と予防

 肥育牛に特有な疾病は、主として濃厚飼料の多給、粗飼料給与量の不足および急激な飼料環境の変化に起因する代謝障害や消化器病です。
 比較的発生が多いのは、鼓張症、尿石症であり、さらに蹄葉炎、肝膿瘍などの発生がみられます。また、牛床管理の不備による肢蹄疾患や稲わらを介して牛に取り込まれる肝蛭症なども重要な疾病です。
 これらの疾病は早期発見、早期治療が原則です。個体観察を徹底し、大きな事故につながらないようにすることが重要です。

鼓張症
 鼓張症は第一胃内におけるガスの異常発生またはガスの排出不良に起因し、左腹部の異常な膨満と呼吸困難を示します。急性型では短時間に死亡することが多いので速やかに獣医師に連絡する必要があります。肥育時におこる鼓張症は慢性型が多いといわれています。慢性鼓張症で死亡する例は少ないと云われていますが、採食量は減少し、増体量の低下がみられます。

尿石症
 尿の通路にリン酸マグネシウムを主成分とする結石ができて起こるもので、初期には、陰毛に小さな灰白色の結石がみられ、重症では食欲低下、腰部疼痛、尿閉を訴えます。尿道につまった場合には膀胱破裂や尿毒症で死亡することがあります。
 原因は濃厚飼料多給によるリンの過剰、カルシウムの吸収不良、飼料中のリンとカルシウムの不均衡、ビタミンAやDの不足のほか、水の摂取量不足が挙げられます。予防にはリン含量が高い飼料の多給を避け、さらに食塩、塩化アンモニウム、ビタミンA剤など適量に給与することが有効です。

ルーメンアシドーシス
 大麦、トウモロコシなど炭水化物の含量が高い飼料を短時間に、しかも多量に摂取した場合、あるいは乾草から急に濃厚飼料に変わった直後などは、第一胃のなかで乳酸やヒスタミンが過剰に産生され、胃内のpHが急激に低下し強い酸性を示します。この様な状態をルーメンアシドーシスと呼びます。第一胃内は強い酸性のため正常な細菌や原虫が著しく減少し、重い消化障害を引き起こし、さらには肝膿瘍や蹄葉炎の原因にさえもなります。一般的な症状としては食欲の減退、脱水、甘酸っぱい臭いのペースト状下痢便などがみられます。

ルーメンパラケラトーシス
 ルーメンパラケラトーシスは、第一胃内壁の上皮細胞が十分に角化できないための異常で、第一胃角化不全症とも呼ばれます。この疾患もルーメンアシドーシス同様に濃厚飼料の多給、粗飼料の不足によって起こります。また、飼料の粒度と関係があることが指摘されており、微粉末の飼料の給与には注意が必要です。

肝膿瘍
 肝膿瘍は、壊死桿菌やコリネバクテリウムビヨゲネスなど化膿菌の感染により、肝臓に膿瘍が形成されるものです。一般に、特異的な症例はありませんが、出荷後の肝臓廃棄の原因となり、経済的損失も大きくなります。肥育牛の場合、感染経路はルーメンパラケラトーシスなどで損傷を受けた第一胃壁部から、血液中に入って肝臓に運ばれる場合が多いと云われています。この疾病は予防が何より重要であり、関連の深いルーメンアシドーシスやルーメンパラケラトーシスの発生を防ぐことが大切です。

蹄葉炎
 蹄葉炎は、蹄の真皮層と葉状層の部分に炎症が起こり、激しい痛みのため特異的な歩様や運動障害が起こる疾患です。また、その歩様から“つっぱり病”、“ロボット病”とも呼ばれています。原因は、負重性やアレルギー性などもありますが、肥育牛で最も多くみられるのは食餌性蹄葉炎です。すなわち、ルーメンアシドーシスの状態から、多量の乳酸やヒスタミンが蹄真皮の毛細血管に作用して炎症を起こすことが原因と考えられています。

突然死型乳頭糞線虫症(ポックリ病)
 最近、注目されている疾病で、おがくずを敷料として利用している農家で多発しています。乳頭糞線虫は経皮感染することから、牛は痒覚を示します。体重100kgの牛に、感染子虫100万匹以上を感染させると突然死が起こり、感染量が減少するに従って急性症、衰弱死、下痢などが発生します。乳頭糞線虫の感染源である感染子虫は、おがくず敷料、牛舎の床に生息しているので、本症の発生には、牛舎消毒が有効です。敷料の更新時に消毒を心がけることにより本症をはじめ疾病発生防止につながります。

ヘモフィルス・ソムナス感染症
 本症は、群ヘの導入後短期間に発生する例が多く、遠距離輸送、飼養環境や気象の急変、呼吸器系ウイルスの侵襲などが最も大きな発病誘因と考えられています。発病牛は40℃以上の発熱、鼻汁漏出、運動障害、起立不能、昏睡状態となり、死亡します。発症から死亡までの経過は、数時間から1日以内と短いことが特徴です。また、眼球振動、斜視、回旋運動、けいれんなどの神経症状を示す場合があります。予防としては、移動時あるいは導入時に抗生剤、ビタミン剤の投与やストレスの緩和に務めることが大切です。

肝蛭症
 肝蛭は、水田に棲むヒメモノアラガイを中間宿主として、メタセルカリアが稲ワラを介して牛に食されると、小腸内で脱襄、侵入し、幼若虫は腹腔を経て肝臓の表面から肝実質内に入ります。この虫はここで30〜35日間実質を食いながら成長し、感染後40〜45日目に胆管に移行します。そして、感染後75〜85日目ごろから産卵を開始します。メタセルカリアは新しいものほど感染力が強いので、牛に与える稲ワラはなるべく長期間保存したものを用いるようにします。症状は、極度の削痩、被毛粗剛と発熱を呈します。食欲が減退した場合は末期的な状態のことが多いといわれています。本症が予想される場合には、予防および治療薬が市販されているので、獣医師の指導のもと実施すべきでしょう。

皮膚真菌症
 牛の皮膚真菌証は、主にトリコフィートン・ベルコーザムというカビによって起こります。このカビは、牛と牛が直接あるいは間接的に接触することにより表皮に付着し、毛穴を通じて組織内に深く侵入することで感染する場合が多いようです。症状は、限局した円形の脱毛と皮膚の肥厚、石綿状のフケが特徴です。病変が真皮まで達し痒みを生じるようになると、病変部をこすりつけることにより出血したり、細菌感染を受けたりするため病変部の悪化と拡大を示すことが多くなります。季節的には、春から夏に多発する傾向がありますが、秋から冬にかけて自然治癒する場合も多いようです。また、このカビは馬や人などにも感染するため、感染牛の取り扱いには十分な注意を要します。予防としては、感染牛の隔離と消毒が大切です。治療は、病巣への抗真菌剤の塗布が有効です。

(完)

− 引 用 文 献 −

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 九州農業試験場,暖地向きつなぎ乳用牛飼養施設設計指針解説書,1988

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 河合豊雄,「群飼育成・肥育素牛の競合防止の着眼点(上)」畜産コンサルタントNO198,1981

 河合豊雄,「群飼育成・肥育素牛の競合防止の着眼点(下)」畜産コンサルタントNO199,1981

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 木村信煕,「肉牛マニュアル、第4章飼料編」,チクサン出版社,1991

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