特別企画

牛が喜ぶ手作り牛舎
嶽 本 和 國

 肉用牛肥育経営の主な飼養管理には毎日のエサを給与する作業と畜舎を掃除する作業がありますが、ここに紹介する肥育舎は牛床の掃除の必要がなく、牛たちが自分で毎日欠かさず掃除をすることができる牛舎です。

 管理者の仕事は牛の観察時にウォーターカップの掃除をすることくらいで、ひたすら飼養管理や自給粗飼料作りに専念でき、こんなにありがたいことはありません。この肥育舎を名付けて踏出式とでもいいますか、毎月1〜2回ショベルローダーでオガクズをエサ箱の方から投入するだけです。(写真−1)。一般的な畜舎と異なるところは牛床の前面(エサ箱側)と後方(ウォーターカップ側)の高低差を5〜7%勾配にしてあることで、敷料がふん尿により湿ってくると軟弱になり、牛たちの蹄に押されて下方に踏み出されることになります。

 私が球磨酪農組合に勤務していた平成10年4月にこの踏出式の手作り肥育舎(写真−2)を作ってから4年が過ぎ100頭近い数の牛が出荷され、その間の管理者の声も聞いてありますので報告します。

 球磨酪農組合では20年くらい前からホルスタイン×黒毛和種のF1の肥育に取り組み、平成10年ごろには組合員だけでも合計300頭以上になりました。このため、新たに掘立式の肥育舎を作る農家が多くなり、丸太を使って誰にでも簡単に作ることができ、おまけにふん尿掃除は牛たちがやってくれるランニングコストの最も低いと思われる肥育舎を考えたのがきっかけです。

 既存の肥育舎のパドックを利用し、球磨酪農組合所有の山林の中から間伐を重ね、大小適当な杉丸太を切り出し、丸太のまま使う柱、けた、梁、垂木は半分に、エサ箱用は3cmの厚さに製材所で製材してもらって使い、購入した材料はクラッシャラン、生コンクリート、羽子板、ボルト、ナット、座金、畜産波板、ステンレス傘釘、ウォーターカップ・ポリパイプ等の水道用品、照明器具、後日送風機を3基取り付けましたが、8m×6m×6室 288m2で200万円くらいの工事で済み、飼料会社の80万円の助成も付けてもらい大変助かりました。

 牧場職員と作業員たちだけで作った手作り肥育舎の完成です。さて、このようにして出来上がった肥育舎ですが、改良された点をいくつか挙げますと──

 
写真−1 エサ箱側からオガクズを投入する


写真−2 側面から見た手作り牛舎


写真−3 低コストで完成した手作り牛舎

(1) 後方に付けた1.6mのドアのほかはすべて木材で作ったため、カチャカチャ音がしないで牛が落ち着いてゆったりしていて寝転んでいる時間が長い。
(2) 毎月1〜2回通路側からオガクズを30〜40cmの厚さに投入しておけば、牛が自分たちで適当に広げ牛体もほとんど汚れない。
(3) 敷料の量も既存の牛舎より少なく、コスト削減につながっている。
(4) 事故も少なく(4年間で約100頭のうち1頭)肥育成績も良い。
(5) オガクズ投入時間とパドックのふん尿除去時間は合わせて30分以内。これが月に1〜2回しかかからないので、その分牧場全体の牛群の観察や草地管理に手を回すことができる。

(図−1)正面図と側面図

(図−2)柱・けた・梁の配置図

 以上のように良い面ばかりが目に付く手作り肥育舎ですが、出荷時には狭いドア(出口)からわれ先に出ようとするので、1頭ずつゆっくり出してやる注意が必要です。

 今後、中小規模の肥育農家も環境問題、枝肉の価格低迷等で厳しい状況になることも考えられます。資金の投入はなるべく少なく抑え、牛たちが喜ぶ手作り肥育舎を作ってみませんか。

(報告者:熊本県畜産会 窓口相談員)