酪  農=経営再生〔II〕

─ 飼料給与は科学的根拠に基づきキッチリ行いましょう─
 

村 上 明 弘

 II.つなぎ飼い牛舎における飼料給与法

3. 乳期を通した給与スケジュール

(1) 各乳期の特徴

 分娩と分娩の間を乳期と言います。この期間中における生理的な変化を「じゅうぶんに理解」する事が、利益をあげる経営の第一歩です。

 多くの方々は「知っているつもり」でいます。しかし、現実はどうもほとんど分かっていないようです。そのために、多くの酪農現場ではたいへんな損失を作りだしています。

乳牛管理の憲法あるいは定理に匹敵する、乳期内における生理的変化と意味を、まずしっかり理解して下さい。そして、そこから有効な技術化を試みましょう。

 乳期のそれぞれにおける管理目標を表−1にしてみます。

表−1 乳期別管理目標
乾  乳  期 前  期 BCS3.25〜3.5の低めで乾乳
一発乾乳の実践
個体に合わせた乾乳期間の適正確保
過肥牛のコンディション調整
乳房炎の予防と完全治療
肢蹄・肝・乳腺・ルーメン機能の回復
粗飼料中心による飽食給与
蛋白質は確実にバランス
低嗜好飼料や新環境への馴致
双子受胎牛の早期発見対応
後  期 安楽な生活の最大保証(移行期全体)
初産牛の早めの特別管理
小型体格・不調牛の早めの特別管理
ルーメン内繊維飼料の最小水準以上保証
栄養必要量の総合的充足(胎仔分も)
ルーメン絨毛の成長促進
乳腺の発達促進、乳房浮腫の予防
代謝障害の予防(主に低Ca・低Mg)
安産への誘導
食欲低下の最小化
分  娩 安産の保証(難産の予防、自由分娩)
各種トラブルの予防・早期対処(特に難産や寝起き不能など)
環境ストレスの最小化(移行期全体)
子宮・乳腺の感染防止(産褥期も)
腰抜け治療対策の完備
飲水・採食の保証
泌  乳  期 産 褥 期 スタート時DMI・泌乳量の最大化
一発搾切りの実践
起立不能・産褥熱の早期発見処置
乳房浮腫の早期解消
後産停滞の適正タイミング処置
生乳出荷の早期化
ルーメン機能の保持を最優先(pH変動最小化)
ルーメンマットの確実な形成を優先
栄養摂取の可能な限りの最大化
濃厚飼料の増給スピードの安全限界確認
(反芻、ルーメンの膨れ具合、ふんのモニター)
アシドーシス、アルカローシスの予防と早期対処
ケトーシスの予防と早期対処
第4胃変位の予防と早期対処
子宮内膜炎の早期対処(子宮清浄化)
ミネラル、ビタミンの割増し的な完全充足
BCS減は0.5〜0.75(2kg/日)以内
最盛乳期 技術・個体に対応した濃厚飼料ピーク給与
ルーメンマットの最小以上の安定形成
バランスのとれた栄養の最大級給与
高能力牛への特別な配慮
繁殖障害の早期発見・対処
可能な限りの早期種付け
急性環境性乳房炎の予防・早期対処
泌乳下降期 BCS増に対応した濃厚飼料の漸減
BCSの可能な限りの調整
粗飼料の最大給与を意図
特別牛の別管理(長期不妊牛、過肥牛、淘汰予定牛、搾乳中肥育牛)

 特に移行期(分娩を境にした前後4〜6週間、さらに狭めるなら、前後2〜3週間)は、その「意味」を熟知したいものです。なぜなら、乳牛の健康不振による経営困難は、大半が、このわずかな期間の技術的なつたなさに起因しているからです。

 図−4に、移行期に起こる「劇的な」変化を模式化してみました。まだ他にも意識すべき事項があるでしょうが、気がついて描く気になっただけでもこれだけあります。

図−4 分娩を境界(移行期)に起きる変化

 管理手法をミスすると、困難を伴う変化はさらに大きなものになります。

 図−4をつぶさに眺めて、それぞれ番号ごとの変化とその意味および他との関連性を熟慮してみてください。すると、この移行期技術の影響の大きさに息を呑むはずです。

 自分なりに納得がゆくまで、この変化図の意味するところを思考してみてください。大ざっぱな図なので、分かりにくいなら、自分なりの理解に基づく線を作ってみてはどうでしょう。そういう作業の積み重ねが、複雑極まる酪農の技術を総合的なものに導いてくれるはずです。

 以上をトータルに配慮して、以下に乳期における飼料設計の具体例を説明します。

(2) 乳期における飼料設計例

 〈条件〉

・濃厚飼料を、朝と夕、それぞれの作業時間帯のはじめと終わりに給与する「変則4回」のタイプにします。

 理由は、経営再生の場合、高い個体乳量を得たいので、濃厚飼料を多めに給与したいのですが、安全は確保したいからです。1日朝夕2回給餌では1回量が多すぎてトラブルの可能性が高くなります。かといって3回給餌では、2回目が昼頃になるため、他のことに専念する昼間の連続的な自由時間が短くなります。しかも、1回の量がやや多すぎる傾向になります。そこで変則4回を設計してみるわけです。

 その変則4回法にも大きな弱点があります。それは、搾乳の前後2回の給餌間隔が詰まっていたり、その間にほとんど粗飼料を採食できなかった場合です。そこのところをじゅうぶんに注意しないと、2回給餌(変則4回と同量の濃厚飼料で)に毛の生えたくらいの効果しかありません。3回給餌(朝の搾乳前、昼12時頃、夕の搾乳後)の方がはるかにましなことになります。

 いや、本当はほぼ8時間間隔に近い3回給餌の方が勝るかもしれません。しかし、なんといっても昼に誰か必ず牛舎に行かなければならないのが、その比較を難しくしています。もしパドックに牛を出すのなら、当然昼に必ず牛を入れての3回給餌にした方が良いでしょう。その場合、どうせなら、ハッキリと5回給餌にする方がベストに近いことになります。

 経営再生を目指す場合、つなぎっぱなしでも、本当は5回給餌を行いたいものですね。

・原則として、日中、牛舎に人は来ないことにします。

・乾乳牛は搾乳牛と分けて飼養します。

・その他の原則は、前回および今まで解説したガイドラインに準じます。

・実際の応用においては、考え方を参考にするにとどめてください。飼料設計は膨大な条件の総合化されたものですので、そのまま適用してもあてはまらないことがほとんどです。

 具体例を図−5(乳期を通した給与法)により説明します。

図−5 乳期を通した給与方法

・時間配分

 朝の作業時間として5時から9時までの「最小」4時間をとります。夕も16時から20時までの4時間以上にします。理由は濃厚飼料の採食間隔を最小3時間半以上空けたいからです。

 朝は、5時に1人以上が入舎し、1時間くらいは搾乳以外の仕事を行い、搾乳は6時から開始します。1時間半搾乳して7時半に終了するとします。その後もいろいろな作業を行い9時に出舎します。

 夕は、16時に1人以上が入舎し、1時間半くらいは搾乳以外の仕事をし、搾乳は17時半から開始します。1時間半搾乳して19時に終了することとします。その後もいろいろな作業をし20時に出舎します。

 朝夕の作業開始時間は早・晩どちらにずらしても自由ですが、朝と夕の搾乳間隔は11時間より短くしない方がベターです。

 昼頃に、もし誰か牛舎に行ける人がいるなら、飼料の掃き込みや不足分の追加、不調牛の発見などをします。また、日中に診療や授精などの応対があった場合、やはり同じ作業を行います。いかに、昼間牛舎に行かないための変則4回給餌とはいえ、日中にチャンスがあれば必ずベストを尽くすことで、そんな気持ちがたいせつです。

・粗飼料

a 牧草類は、基本的に「不断給餌」とします。乾草かサイレージのどちらかは、いつでも食べられる状態がベターです。

 図−5の粗飼料□印は、すべて同じ給餌タイミングとその後の残り具合(→印)なので、一部にしか記入していません。すべてのタイミングで同じです。

b 牧草類に関しては、同じタイプ(味や栄養)のものを1日中やる方がよいでしょう。異質なものがあたると、美味しいものを牛は待つようになり、全体の摂取量が減ったりします。

 同じタイプですが、粗飼料が味悪で低品質な時は、他の飼料(中間飼料や濃厚飼料や添加物)へ選択と量の切り替えで対応するしかありません。そういう粗飼料は、分娩の少ない時期や、ストレスの少ない時期に使うようにします。

 高品質ルーサンヘイのような場合は、終日これのみというのも、技術的あるいはコスト的に不安になるかもしれません。その時は、高嗜好なイネ科草と組合わせて2種類やっても難はありません。

c 給与する量は、今やる粗飼料が、次の餌が給与される時まで、採食できる状態で「少し」残っているのがベターです。日によっても、牛によっても、その量は異なります。この技術は簡単そうで難しいようです。しかし、この感覚の敏感さが、技術感性の善し悪しの分かれ目のようです。ピッタリやるが無駄にはしない。その感性です。

d 繊維が長めの、いわゆる粗飼料的なコーンサイレージ(CS)やルーサンキューブ(RC)は、粗飼料と「やや」代替的に使えます。

 CSは量的にも多く(忙しい時間帯では給与しにくい)、かつ実入りがよい場合は澱粉質も多いので、給与タイミングに一考を要します。この図−5の例の場合は、朝の終わりと夕の始めがよいでしょう。その時は、CS給与量に合わせて、同じタイミングで給与する中間飼料を減らします。例えば、1回のCSが6kg給与なら、乾物率25%で1.5kgの乾物、その内、実の部分が40%なら0.6kgの穀物乾物となります。しかし、その分の濃厚飼料を減らすと、蛋白質までいっしょに減ってしまいます。そこで、CSには繊維分もかなりあるので、繊維をそれなりに含んでいる、ビートパルプ(BP)やルーサンペレット(RP)等のいわゆる中間飼料を、CSの総乾物(1.5kg)の半分くらい、すなわち、同じタイミングでそれらの中間飼料を1.5kgくらい給与しているなら、それをだいたい半量くらいにして、全体の帳尻を合わせます。要するに、長め繊維の採食絶対量は保証するのです。

 RCの大き目で繊維の長いものも、結構な粗飼料代替性があります。給餌作業が容易なことと、なかなか飲込めないこと(唾液がよく出るのでルーメン緩衝作用がある)で、忙しい時間帯における粗飼料代わりの給与に適します。朝、最初の給与にむいています。1頭1.0〜1.5kgくらい与えます。1日の始まりだし、すぐ後に濃厚飼料があたるので、必ず食って欲しいものです。味の良い高品質なものを給与しましょう。その場合も、同じタイミングで給与しているBPなどは、RC総乾物の半量分くらいを減らしましょう。その分の濃厚飼料を減らすと、エネルギーまでいっしょに減るからです。

e 乾乳後期(クロースアップ期)の粗飼料の質は、先月号をじゅうぶんに参照し、厳正に対応してください。

f 高品質ルーサンヘイを給与するタイミングは一考を要します。何故なら、一度に多めに採食したり、連続的に食込んだりすると、他の飼料との、ルーメン内における溶・分解性のタイミングが合わないと、ルーメンpHを上げ、食い止まりの原因となるからです。

 特に、産褥前期は影響を受けやすいようです。

 CSと並行給与したり、エネルギーをながく小出しにするタイプのコーンミールと一緒に給与したりして窒素を遊ばせないようにします。

 また一方、蛋白質の含有率が高く、しかもルーメン内の溶・分解性の高い餌(大豆粕、高蛋白質配合飼料など)とタイミングが合うかたちでは給与しないようにします。

 例えば、高級ルーサンヘイ2〜3kgを朝や夕の始めに与え、その後に、上記のような濃厚飼料を多く与えるのは、波長が合わないようです。そのタイミングに対してはイネ科草を与え、ルーサンヘイは朝と夕の最終に与えるのが無難でしょう。

 ちょっとタイミングのズレはありますが、似たようなことは早刈りやマメ科の多い草の高水分サイレージや新播草の土入りサイレージにも起こります。

・中間飼料

a 有効性は落ちますが繊維性があり、かつ濃厚飼料に近い栄養もあります。そんな特徴が中間飼料にはあります。しかも、価格的にも、市況変動はあるものの、割安感があります。すなわち、条件に合わせられとても使い勝手のよいものです。

 なかでも、ペクチン(炭水化物だが、ルーメンpHをあまり下げないでエネルギーを出してくれる)を持っているビートパルプペレット(BPP)は、嗜好性や安定供給の条件も含め重要な餌です。それに類するものに、高品質な乾燥オレンジパルプや大豆の実の皮などがあります。一方、繊維の有効性はやや落ちますが、蛋白質とミネラルが多めにあり、かつペクチンもそれなりにあるのがルーサンペレット(RP)です。ただしこれらのうち、加熱処理されたものは、蛋白質のバイパス性が高くなっているので留意を要します。

b いずれにしろ、再生を目指す経営においては、この中間飼料の使い方如何が、経営成果に大きく影響する場合が多いものです。

 濃厚飼料と同じタイミングで給与します。できれば濃厚飼料より少し先に給与します。

 毎回、全牛に、同じものを同じ量給与するのを基本形にします。それが、「誰でもできる作業化」のためにたいせつです。

c 1回の量を1.0kgか1.5kgにします。もしも、粗飼料の切断長が短かったり、CSやRCの多い給与内容の場合は、濃厚飼料の量を1回で最大2.5kg以内で1日合計10kg以内と少な目にとどめ、中間飼料を1回2kg給与、1日合計8kgまでと多めの設計が可能でしょう。ただし、産褥期や小型牛や不調牛はワンランク少なくして給与したり、常に個体ごとの調子に合わせたり、粗飼料の品質変化に対応したりします。

 この変化への対応は、多くの場合、濃厚飼料の減・増の繰返しやタイプの変更で行うのがよいようです。中間飼料の量はめったに変えない方が、普通は無難です。

d 中間飼料の1日量が合計5〜6kg以上になるときは、2種類以上を組合わせるのがベターでしょう。その時は、それらを混合して各回とも同じものを給与するのがよいのですが、もし別々にやるなら、前後における他の飼料特性に合わせて組んでください。

 例えば、粗蛋白質(CP)が13〜14%以上の牧草が相手の場合はビートパルプペレットが、コーンサイレージとかCP11〜12%以下の牧草なら、ルーサンペレットが通常は合います。

e 乾乳前期は、基本的には、粗飼料と濃厚飼料の単純な組合せにし、中間飼料は使わないようにします。

 しかし、つなぎ方の関係上、隣の牛のものを盗食したりする場合や、粗飼料が絶対的に不足な場合などは配慮します。

f 乾乳後期は、中間飼料を組合わせるのが、大抵はうまく設計できます。

 乾乳期の特別な濃厚飼料は、なるべく1日2回で作業にゆとりのある時間帯(普通は朝の搾乳後と、夕の搾乳前)に給与します。その場合、中間飼料(主にBP)はその時間帯のもう一方(朝の最初と夕の最終)で給与します。

 濃厚飼料と同じ時間帯の給与でも大きな問題はないのですが、細かい餌が一時的に多くあたるので、粗飼料食込み量の少ない牛や、切断長の細かい粗飼料を多く給与している場合、あるいは分娩が近づき採食が急減した場合は敏感に対応せねばなりません。

・濃厚飼料

a 基本的には、市販または自家の配合飼料を使います。

 配合のタイプは以下の例にそって選びます。普通のイネ科草やコーンサイレージを主体にした(低CP%)粗飼料給与の場合は、価格との兼ね合いにもよりますが、高蛋白質(乾物中CP24〜25%)のものや、高品質ルーサン(CP20%以上)や早刈り牧草やルーサンキューブが主体の場合はCP16〜18%位の配合を、その中間のCPになるような粗飼料を使っている場合は、CP20%くらいの配合を選びます。

b ルーサン中心の粗飼料や中間飼料の利用でない限りは、通常、高蛋白質な配合飼料を基本にします。何故なら、濃厚飼料はなるべく給与量を控えめにし栄養量は多くやりたいからです。その方が牛を駄目にしない確率が高いからです。経営を再生したい場合は、牛を駄目にしない管理の方が、濃厚飼料の限界オーバーのような無理を通した高産乳より効果的だからです。

 勿論、油脂の多い濃厚飼料を配合するのは危険ですから、総合技術が高まるまでは避けます。

c 給与限界量や給与間隔の考え方は前号を参照してください。

 朝の1回目は、牛舎に行ったら、なるべく早く給与します。朝の2回目は牛舎から出るギリギリ最終に近いときに給与します。夕の1回目と2回目も同じやり方です。

 ただし、朝と夕の2回目は、濃厚飼料がある程度残っていても、その上に粗飼料を給与することになります。牛が濃厚飼料欲しさに草を飛ばし口が届かなくならないよう、残った濃厚飼料を掃き込み、それから草を少し離して給与する必要があります。

 1回の給与量は原則的に0.5kg単位とします。1回の給与量の増減は0.5kgずつとします。

d すり切り1kgの給餌升を使います。その半分が0.5kgです。

 升が大きすぎると、手首に負担がかかります。中途半端なひと升量だと、正しい計量ができません。

 濃厚飼料のガサと比重の関係で、計量が正しいか、時々確認します。

 山盛りは10%増し、谷盛りは10%減位にします。気持ちだけ増やしたり、減らしたりする場合はこの方法をとります。

e 給与量の個体別表示は、表示板か何かにその個体に対する給与量を直接書きます。

 幅広の布ガムテープを牛別に張り、それに直接数字を書く方法は、意外に簡便です。例えば「2.5」ならば、1kgの給餌升が2杯半と言うことです。

 数字を見ると「誰でも」給餌作業ができます。長めのテープを使えば、上から順に数字を変えていけば過去の流れもみえます。

 その数字の周辺に、割増しや割減らしのマークを付ければ、濃厚飼料の加減を誰でもできます。各種添加物の給与とその多少のマークを付ければ、見れば誰でも作業ができます。難しいのは、産褥期における短期間での濃厚飼料の増給をどう表現するかです。

 表−2のようなカードタイプか貼りシートをつくり、作業者全員に配るか、見れば分かるようにするかです。分娩があるたびに、その牛の状況に合わせ、まじめに作るようにします。途中で変化があったら、すぐ作りかえます。

表−2 分娩後の濃飼増給カード

 濃厚飼料の給与水準別に、該当牛の欄に給与期間の日付を入れます。その日付に従い給与量を切替えてゆきます。個体の周辺に長いガムテープを貼れるなら、そこに表のような日付と給与量を記入できればベターです。変更が1日や2日くらいずれてもかまいません。

f この定量給餌升と個体別給与量表示および濃厚飼料増給の日付表はとても有益な技術です。おっくうがらないで、思考を巡らせて、タイミングをずらさないで、日常的にきちんと実践することが、確かな利益のためにたいせつです。

g 乳量ピーク以降における濃厚飼料の減らし方は前号で説明しましたが、要は肉(脂)が付き始めたら、栄養が余ったというサインですから、一番栄養の濃い濃厚飼料をワンランク(0.5kgで4回とも)ずつ減らしてゆけばよいのです。

 座骨端の肉付きを中心に、100日を過ぎた頃から定期的に触診し、1枚増えたらその10日後頃ワンランク落とします。乾乳まで、少し薄目のボディコンディションに持って行くためには早めから意識し実行することです。

 ワンランク落とした途端(3〜4日以内)に乳量が大きく(4〜5kg以上)落ちるようなら元に戻してやり直す方が無難です。

h 最小限1回1kg、1日4kg以下の給与量にしたくないので、何かの事情で1日4kg給与でも太りすぎるようなら、全牛一律給与している中間飼料を該当牛に対し半量にします。濃厚飼料を1回0.5kg、以下にすると少な過ぎて盗食などをするからです。

 本当は、特別な状態になった牛は別グループにするのがベターです。グループ化の技術は別に書きます。

i 分娩後のスタート濃厚飼料量は、1回1kg+αの割増給与にします。じゅうぶんな体積や好調な食込み、さらにじゅうぶんな期間と量をクロースアップ期における濃厚飼料給与などがあるなら、スタート濃厚飼料量は1回1.5kgで1日合計6kgでも可です。

j 粗飼料の栄養特性の変化に対し、配合飼料のタイプを変えないで応じる場合、次のような方法があります。

 粗飼料が低栄養になった場合は、注意深く反応を見ながら濃厚飼料を山盛り(10%増)給与するか、大豆粕とコーンを1対1くらいで混ぜたものを、各回とも1.5kgずつ給与し、残りの不足分を配合で与え、合計量は基本と同じにするかで対応します。

 粗飼料が高栄養になったなら、濃厚飼料を谷盛り(10%減)にするか、何も変えないで肉付きに対応した濃厚飼料の減少ペースを速めるかで応じます。

 粗飼料の粗蛋白質溶解性が高まったときは、大豆粕20%、コーン70%、魚粉10%位の混合物を作り、各回とも1.5kgずつ給与し、残りを配合にし、合計は同じにします。魚粉にははじめから馴致させておいてください。

 この時のコーンのタイプは、粗飼料のCP含量と採食タイミングと採食量と関係するため複雑な配慮で決定しなければなりません。

 例えば1日中、その溶解性の高い粗飼料のみを少しずつ採食しているなら、やや細かいコーンミールが合うかもしれません。もっと緻密にするなら、朝と夕のそれぞれの1回目は加熱フレークコーンか微細なコーンミールにし、それぞれの2回目は粗めのコーンミールにするなどです。

 この意味と組合せの説明は無限の地獄になるので止めます。いずれにしろ少し面倒な作業でもよいなら、変化への対応策があることを納得してください。

k この変則4回給餌の場合は、次の濃厚飼料を給与されるまでの時間が、朝夕のそれぞれ1回目は3時間半、それぞれの2回目は7〜8時間と9〜10時間というふうにまるで異なります。原則の「等間隔、等量、等質」とはずいぶん異質です。ここがこの手法の大きな弱点なのです。

 そこで、朝夕のそれぞれ1回目と2回目を大幅に濃厚飼料タイプを変えてみるのは、理にかなっているわけです。すなわち、2種類の濃厚飼料を使い分けるのです。

 1回目はルーメン内で比較的に短時間で発酵合成されるタイプのペクチンや澱粉質、蛋白質を持ったものにします。さらに濃度の薄いものにするか、給与量を谷盛りにするかします。2回目はルーメン内でゆっくり消化するタイプの澱粉質や蛋白質を持ったものにします。この濃度を濃くし、山盛り給与をします。これらの餌の組合せは多々あるのでここでは紹介しません。それぞれ研究してください。

l ともかく、餌の具体的な説明はバラエティ過ぎて大変です。身近なところに個々の経営に対応できる人を得るのが一番かと思います。個々に合わせるこの技術は、分かる人が指導し続けると何とかなるものです。

 しかし、牛群の不調には理由があり、解決策もそれなりにあるのを、何となく納得できたと思いますので、身近なところに人を見つけて、地道に基本から順番に、繰返し飼料設計をやってみてください。

・添加物

a バイパス油脂

 通常は、粗飼料の品質が普通以下の時に、産褥期の牛、不調な牛、高産乳状態の牛 (だいたい体重の7%以上生産)などに給与します。

 バイパス率が確かに保証されたものを使います。

 油脂含有率の高い飼料(全粒大豆、綿実、生米ヌカ)を使えばよいと思うでしょうが、必要な牛のみにやるには余分な給餌作業を伴いますし、量も多いので配合の質や量をかなり変える必要が生じます。また、結構な率で油脂を含む醤油粕やトーフ粕、ビール粕やホミニーフィードなどの組合せにも配慮せねばなりません。高い飼料設計力がないとかえって逆効果になりかねません。

 その点、バイパス油脂はルーメン発酵への影響が小さく、かつ少量ですむので全体設計にも僅かしか影響しません。

 ただし、割安に購入したとしても高価なものなので、効果のあるタイミングで、効果のある牛だけに、必要量のみを「厳密に」給与します。この考えは、他の添加物も同じです。

 どんな添加物も、濃厚飼料の給餌ごとに配給されるのがベストでしょうが、作業上そうはうまく行きません。通常は1日1回、都合のよいときに給与します。ミネラルや塩、ビタミンもです。

 バイパス油脂は、量も少し多いし、さらに通常は低嗜好だし、おまけに食欲の低い牛ほど与えたいので、1日2回に分け、他の餌の嗜好を落とさない方法で給与します。朝の2回目と夕の1回目が、作業のゆとりがありよいでしょう。例えば、多い牛で200gずつ計400g、普通で100gずつ計200g、その他はゼロにします。

 うまく食わせられれば効果は大きいので、馴致したり、味付けしたりして何とか低嗜好を克服したいものです。

b ミネラル

 通常は、カルシウム20〜24%、リン10〜15%、マグネシウム5〜8%、その他の成分のものを使いますが、粗飼料のタイプや配合飼料に入っている内容によって大幅に変わります。給与量も大きく異なります。正しく選択してください。

 牛がストレスを受けている時は、程度に応じ割増し給与を行います。飼料の組合せによっては最大1日400g位必要な場合もあります。

 1日1回で給与します。朝の2回目が良いでしょう。多い、普通、少ないの3段階で与えます。例は表−3のようなやり方です。あくまでも例えばの量ですから数字をまともに受けないでください。給与区分や量の割振り方を参考にしてください。

表−3 添加物給与の仕分け例

c ビタミン

 ビタミンはとても高価なものです。必要性と牛の区別をしっかりしてください。例えば、高品質な色物飼料を多めにやっている時は、ビタミンAやβカロチンは減らしても良いでしょう。

 ストレス対応もミネラルと同じです。

d 塩

 自由にさせないで、手でやるのがよいでしょう。この量も、他の餌との関係で大きく変わることがあります。特に醤油粕の時は要注意です。乾燥醤油粕1kgくらいで、35kg乳量の牛は塩は不要でしょう。

 ストレスや汗かき時の対応もミネラルの時と同じです。

e 搾乳牛全部にやる添加物の混合給与

 ミネラル、ビタミン、塩など、搾乳牛全部に毎日同じ回数でやる添加物は、毎日分を混合して給与すると、配給が1回で終わります。

 それぞれを秤で正しく計量して必要分を混ぜ、合計の量目(表の例を参照)を配給します。

f 重曹

 反芻性の少ない飼料が多めにあたる場合や、濃厚飼料や中間飼料が集中してあたるタイミングでは、ルーメンpH緩衝剤(重曹)を利用します。

 変則4回法の場合は、朝の2回目と夕の2回目が有効でしょう。量的には、多い方でそれぞれ60〜80gずつ計120〜160g、少ない方でその半分くらいでしょう。多い方は分娩後1ヵ月までの牛と濃厚飼料が1回3.0kg以上の牛、少ない方は濃厚飼料が1回2.5kg以上の牛にします。

 やるべきかどうかの判断を鋭敏にします。ルーメンpHが上昇するような餌の組合せの時は、かえって逆効果になりますから、極めて要注意です。例えば、ルーサンヘイ給与、その後で早刈りの水分の多いサイレージ、さらにほぼ同時に溶解性蛋白質の多い配合、そこに重曹などの場合です。

g カビ毒対処剤

 カビ毒が危険な飼料を給与しなくてはならない際は使用します。

 その餌をやる際は、給与される牛全頭に与えます。ストレスを多く受けている時や牛には、割増しで与えます。

 量は製品の説明をよく読んでください。

 以上、相当に長い解説になりました。まだ説明不十分のところもあるでしょうが、これで止めます。前回と今回を通して、飼料設計と給与に関する、「技術の一端」を味わってください。

(筆者:北海道十勝北部地区農業改良普及センター・主査)