良い堆肥生産のポイント(4)

─ 作物別堆肥施用基準の考え方 ─

藤原 俊 六 郎

 はじめに

 堆肥は土づくりのために使い、作物に必要な養分は別に肥料として与えるのが一般的です。このため、肥料成分が少なく繊維分の多い牛ふん堆肥が好まれ、肥料成分の多い豚ぷんや鶏ふんは量を減らして使用することが必要です。

 近年、堆肥を主体とした有機農法が注目をあびていますが、有機農業においては、肥料成分の高い堆肥に熱い期待が寄せられています。この場合は、肥料成分を評価した使い方が必要になりますが、養分を考慮した施用方法は次回に紹介し、ここでは肥料による標準施肥を前提とした施用基準を紹介します。

 1. 堆肥の種類別特性

 家畜ふんは、畜種により肥料成分の含量が大きく異なります1)

 主要な家畜の牛、豚、鶏(採卵鶏)のふんおよび乾燥物、堆肥化物の成分を表−1に示しました。ここに示したものは平均値であり、実際にはかなりの振れがあります。特に含水率の違いは成分量に大きく影響するので、あくまでも参考にとどめてください。

表−1 家畜ふんおよび家畜ふん堆肥の成分量(現物%)
処理形態 畜 種 含水率 炭素率 窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土
生ふん 牛ふん 80.1 15.8 0.43 0.35 0.35 0.34 0.16
豚ぷん 69.4 11.4 1.11 1.70 0.45 1.26 0.48
鶏ふん 63.7 05.6 2.24 1.88 1.12 3.99 0.53
乾燥ふん 牛ふん 28.0 15.8 1.65 1.84 1.74 1.61 0.76
豚ぷん 24.3 10.4 2.60 4.56 1.51 3.30 1.20
鶏ふん 18.9 07.3 2.96 5.20 2.44 9.16 1.15
堆肥化物 牛ふん 66.0 16.5 0.71 0.70 0.74 0.79 0.34
(厩肥) 豚ぷん 52.7 13.2 1.35 1.94 1.05 1.87 0.64
鶏ふん 38.5 12.5 1.78 3.15 1.65 6.96 0.84
木質混合 牛ふん 65.4 24.6 0.57 0.55 0.59 0.66 0.26
堆肥化物 豚ぷん 55.7 19.3 0.93 1.49 0.82 1.48 0.48
鶏ふん 52.4 19.8 0.92 1.95 1.02 4.34 0.46
(参考)稲ワラ堆肥 74.6 18.7 0.42 0.20 0.45 0.51 0.14

(注)生ふんおよび乾燥ふんは草地試1983より作成、堆肥化物は農産課資料1982より作成1)

(1)生ふん

 文字どおり、飼育舎からでたままのふんです。含水率は70%以上あり、悪臭が強く不潔感があります。農作物の栽培に生ふんの施用は、衛生上もまた作物にとっても好ましくありませんが、使われている実態もありますので記載しました。鶏ふんは採卵鶏であり、ブロイラーは石灰が少ない点を除いては類似した成分です。

 成分は、含水率が高いために含量が低くなっています。畑に施用するときは、有機酸等による障害を避けるために、施用後すぐに土壌と混和し、1ヵ月以上経過して作付けします。

(2)乾燥ふん

 堆肥のなかの微生物活性は、含水率が30%以下になると、ほぼ停止します。この状態まで含水率を低下させたものを乾燥ふんといいます。乾燥ふんは、一般にはハウス内や加熱により乾燥したものをいいますが、ハウス内で撹拌しながら半発酵した製品や、強制通気装置がついている縦型の発酵槽による場合、短期間で堆肥化したものは、発酵がじゅうぶんでないことから、乾燥ふんに入れるべきだと考えます。

 成分は、含水率が低くなったために含量が高くなっています。施用にあたっては、生ふんと同様に、施用後1ヵ月以上経過して作付けします。

(3)堆肥化物

 堆肥化物は、家畜ふんに特別な水分調節材を添加することなく、家畜ふんを主体に堆積発酵したもので、乾燥ふんを堆肥化したり、水分調節として戻し堆肥を使用したものを示します。従来はきゅう肥と呼ばれていたものです。

 どんな作物にも安心して使用することができますが、混ぜものが少ない分、ふんの成分含量が反映されて、牛ふん堆肥では養分が少なく、鶏ふん堆肥では養分が多くなっています。安心して使用するためには、最低1ヵ月以上堆積発酵しなければなりません。

(4)木質混合堆肥化物

 木質混合堆肥は、水分調節のために、オガクズなどの木屑を混合し、堆積発酵したものです。木屑が多く含まれるために、牛ふんも、豚ぷんも、鶏ふんも窒素含量が低下し、類似した値になります。

 木質が混合したものは、いずれの家畜ふんを使用しても窒素が少なく炭素率が高くなるので、ふんの種類を問わず、ほぼ同じ使い方ができます。木質を多く含む資材は、堆積発酵がじゅうぶんでないと紋羽病や虫害の可能性があります。このため、6ヵ月以上のじゅうぶんな期間を堆積発酵した資材を使用することがたいせつです。

2. 作物別堆肥の施用法

 堆肥の施用量は、作物・作型による違いがあるだけでなく、土壌や気候によって異なってきます。このため、各県では作物別施用基準を定めています。各県のでは施用量に違いがあり、農林水産省畜産試験場が1997年にまとめた報告2)をみても、牛ふん堆肥の水田施用量が0.5〜2t/10a、露地畑施用量が1〜5t/10aと地域によって大きな違いがあります。

 表−1の肥料成分量から考察し、神奈川県の施用基準3)をもとに平均的だと考えられる施用量を表−2表−3に示しました。これは、あくまで私案であり、地域によって異なるものであるため参考にとどめてください。

表−2 牛ふん処理物の作物別施用量の例(t/10a、私案)

作 目 区 分 生ふん 乾燥ふん 堆肥化物 木屑混合
水 稲 乾 田
半湿田
1〜2
0.5
0.5〜1
0.5
0.5〜1
0.5
普通作 2〜3 0.5〜1 1〜2 1〜2
野 菜 露 地
施 設
2〜3
0.5〜1
1〜2
2〜4
1〜2
2〜4
花 き 露 地
施 設
3〜4
1〜2
2〜3
3〜4
2〜3
3〜4
観賞樹 4〜5 1〜2 2〜3 2〜3
果 樹 常 緑
落 葉

1〜2
1〜2
2〜3
2〜3
2〜3
2〜3
飼料作

6〜8

4〜5
2〜3
0.5〜1
1〜2
3〜4
1〜2
2〜3
3〜4
1〜2
2〜3

表−3 豚ぷんおよび鶏ふん処理物の作物別施用量の例(t/10a、私案)

作 目 区 分 生ふん 乾燥ふん 堆肥化物 木屑混合
水 稲
普通作
野 菜

花 き

観賞樹
果 樹

飼料作

乾 田

露 地
施 設
露 地
施 設

常 緑
落 葉

0.5〜1
1〜1.5

1〜2

2〜3
1〜2
1〜2
2〜4

1.5〜3

0.3〜0.5
0.3〜0.5

0.5〜1

0.5〜1
0.5〜1
0.5〜1
1〜1.5
0.5
0.5〜1
0.3〜0.5
0.5〜1
0.5〜1
1〜1.5
1〜1.5
1〜2
1〜1.5
1〜1.5
1〜1.5
1〜2
0.5〜1
1〜2
0.5〜1
1〜2
1〜2
2〜4.5
2〜3.5
3〜4
2〜3.5
2〜3
2〜3
3〜4
1〜2
2〜3

(1)水 稲

 水稲は、窒素肥料が多いと倒伏したり米の品質が低下するため、窒素の多い鶏ふんや豚ぷんは適しません。また、水田は水を張るため、土壌環境が畑とは大きく異なります。水田は水の影響により乾田と湿田に分けられますが、堆肥の分解は、乾田では順調ですが、湿田では嫌気分解により分解が遅れます。このため、水田の状態を確認したうえで、なるべくよく腐熟した牛ふん堆肥を施用することが望まれます。

 堆肥の施用量は、水はけの良い乾田では、1t/10aを基準とし、水はけの悪い半湿田では0.5t/10a、年中水のある湿田では施用しないほうが良いでしょう。湿田では、堆肥を施用することによって土壌還元が進行し、水稲の根系障害が発生する恐れがあるからです。

 生家畜ふんは牛ふんに限り、乾田が2.5t/10a、半湿田には1t/10aを目標として秋期から冬期にかけて施用し、土の中での分解を促進させます。鶏ふんと豚ぷんは肥料成分が高く水稲の生育が不安定となりやすいので使わない方が安全です。

(2)普通作

 畑で栽培する普通作は露地野菜に準じますが、麦や大豆などの普通作物は窒素肥料が少なくて良いものが多いため、野菜より施用量をやや減らします。畑に普通作物を栽培する場合は牛ふん堆肥l〜2t/10aを基準とし、豚ぷんおよび鶏ふん堆肥では半量の0.5〜1t/10aとします。

 乾燥牛ふんは0.5t、生牛ふんは2〜3t程度であり、豚ぷんおよび鶏ふんでは牛ふんの半量にします。

(3)野 菜

 野菜は、いも類のように肥料成分が少なくてよいものからキュウリやセロリのように多量に必要とするものまで多様な種類があり、作物によって施用量を変えることもありますが、ここでは土づくりのために必要な一般的な量について紹介します。

 露地野菜は、牛ふん堆肥1作当り1t/10aを基準とします。同じ畑に年に2作とする場合は1tを2回、すなわち年に2t入ることになります。生ふんは1作当り2t/10a、乾燥ふんでは0.5t/10aを基準とし、全面散布をした後、耕起して分解を促進させます。豚ぷんおよび鶏ふんでは牛ふんの半量にします。

 施設栽培は集約栽培となるので、土の物理性の改良と保全を図かる意味から良質の完熟堆肥を施用します。施設野菜では堆肥1作当り2t/10aを基準として施用します。この場合も、年2作栽培する場合は2tが2回、計4t入る計算になります。また、施設栽培では圃場の空き期間が少ないので生ふんの施用は適しません。夏場に長期間作付けしない場合は、その時期に4〜5t/10aの生牛ふんまたは、2t程度の乾燥ふんを施用して、土壌と混合して腐熟させた後に栽培することもできます。豚ぷんや鶏ふんは塩類集積の原因になりやすいので施用しないほうがよいでしょう。

(4)果 樹

 果樹類の葉は冬にはなくなる(落葉樹)のが普通ですが、ミカンのように年中葉のあるもの(常緑果樹)もあります。土壌管理上は落葉樹も常緑樹もそれほど大きな違いはありませんが、落葉して次の年に新しい葉が生えてくる養分を補うためにも、落葉樹にはやや多めにします。

 果樹は窒素成分が必要以上に供給されると、果実の色付きや糖度に悪影響を及ぼすことがありますので、果樹に対しては肥料成分の少ない牛ふん堆肥が適しています。また、未分解の木質があると病原菌や虫が増殖し、紋羽病の原因となったりコガネムシが発生することがあるため、木質を多く含む堆肥はじゅうぶんに腐熟させたものを施用することがたいせつです。

 果樹には、稲ワラを表面にマルチとして0.5〜1t/10a施用することが多く、この場合は牛ふん堆肥2t/10aを基準にします。稲ワラマルチを施用しないときは堆肥をやや多めの3t/10a施用します。機械により堆肥を鋤込むときには、果樹の根を切断することになりますが、少量の根の切断は根の更新のために役立ちます。

 乾燥ふんは1〜2t/10a施用しますが、できるだけロータリを使って鋤込んでください。鋤込むことが困難な場合は、表面にマルチ施用することになりますが、傾斜地では、急激な雨により流亡することがあるので、注意しましょう。生ふんでは不潔になり圃場環境を悪化させるので使わない方が良いでしょう。

 乾燥豚ぷんや乾燥鶏ふんを施用する場合は牛ふんの半分以下にします。なお、乾燥豚ぷんや鶏ふんを0.5t以上施用する場合には、ふん中の有効成分量を計算して化学肥料を減らすように注意してください。

(5)茶

 茶園では、10a当り年間1t程度の葉や枝が土壌還元されるため有機物の供給は少なくて良く、牛ふん堆肥1〜2t/10aを基準とし、豚ぷんおよび鶏ふん堆肥では半量の0.5〜1t/10aとします。施用場所は畝間であり、落葉に堆肥を混合することにより落葉の分解を促進する役割もあります。茶園では窒素肥料が多量に施肥され、環境汚染が懸念されているため、肥料成分の多い堆肥を多量に施用することがないよう注意しましょう。

 茶園では、畝間に施用するため、作業性や衛生上の問題から生ふんは使用してはいけません。乾燥牛ふんは0.5〜1t/10aを使用します。豚ぷんおよび鶏ふんでは牛ふんの半量にします。

(6)桑

 桑園には、家畜ふんに含まれる窒素として60kg/10aに相当する量(牛ふん堆肥で10t以上)が適量とされてきましたが、桑の年間窒素施用量30kgからみてこの値は異常であり、堆肥2〜3t/10aを溝施用することが望ましいといえます。また、生牛ふんでは4〜5t/10a、乾燥牛ふん1〜2t/10aが適正施用量といえます。これ以上施用する場合は、施肥量を減少させる必要があります。乾燥豚ぷんや乾燥鶏ふんを施用する場合は牛ふんの半分以下にします。

(7)飼料作

 飼料作畑には、処理の意味もあって多量の生ふん尿が施用されることが多く、それが窒素の過剰蓄積や養分のアンバランスとなって、かえって土壌環境を悪化させる原因となっていました。硝酸態窒素の蓄積や養分のアンバランスは、土壌環境の悪化だけでなく、それを食べた家畜にも障害を及ぼすことがあります。地力維持からみれば堆肥2t/10a程度でよいのですが、飼料作は養分吸収力が大きいため、やや多めの3〜4t/10aが基本になります。

 作物によっても施用量が異なり、イタリアンライグラスや飼料用ムギは比較的少な目に、青刈トウモロコシやソルガムは比較的多く施用します。

 生牛ふんでは6〜8t/10a、乾燥牛ふん2〜3t/10aが適正施用量といえます。これ以上施用する場合は、施肥量を減少させる必要があります。また、乾燥豚ぷんや乾燥鶏ふんを施用する場合は牛ふんの半分以下にします。

(8)観賞樹

 観賞樹は、同じ畑で長期間栽培するため果樹に準じますが、数年後には土と一緒に出荷するので、果樹よりやや多めにします。牛ふん堆肥2〜3t/10aを基準とし、豚ぷんおよび鶏ふん堆肥では半量の1〜1.5t/10aとします。乾燥牛ふんは1〜2t/10a、生牛ふんは4〜5t/10a程度とし、豚ぷんおよび鶏ふんでは牛ふんの半量にします。

 以上の施用量は連年施用を前提としたものであり、苗木では3年栽培して出荷するものが多いため、3年生苗の出荷を前提に3ヵ年分の堆肥を1回にまとめて、牛ふん堆肥を6〜9t/10a施用することもあります。生ふんや乾燥ふんもこれに準じた施用方法ができますが、未熟有機物が多量に施用されるため、作付け1ヵ月以上前に施用し、ふんの分解に伴う障害を下げることがたいせつです。

(9)花き

 露地花きは露地野菜に、施設花きは施設野菜にそれぞれ準じます。

 露地花きは、牛ふん堆肥1作当り1t/10aを基準とします。生ふんは1作当り2t/10a、乾燥ふんでは0.5t/10aを基準とし、全面散布をした後、耕起して分解を促進させます。豚ぷんおよび鶏ふんでは牛ふんの半量にします。

 施設花きでは堆肥1作当り2t/10aを基準として施用します。施設花きには生ふんの施用は適しません。夏場に長期間作付けしない場合は、その時期に4〜5t/10aの生牛ふんまたは、2t程度の乾燥ふんを施用して、土壌と混合して腐熟させた後に栽培することもできます。豚ぷんや鶏ふんは塩類集積の原因になりやすいので施用しないほうがよいでしょう。

 種類によっても有機物の施用量は異なります。バラは、改植時に牛ふん堆肥を5〜6t/10a施用し、翌年度以降は、春秋に各2t/10aずつ、年間4t/10aの施用を基準とします。

参考文献

1)農文協編:畜産環境対策大事典,農文協(1995)

2)農林水産省農業研究センター・畜産試験場・草地試験場:平成8年度 家畜ふん尿処理利用研究会報告書(1997)

3)神奈川県農政部農業技術課:作物別肥料施用基準(1998)

(筆者:神奈川県農政部農業技術課専門技術員・課長代理)