酪  農=経営再生〔I〕

─ 飼料給与は科学的根拠に基づきキッチリ行いましょう─

村 上 明 弘

I.経営再生実務の優先順位

 「搾乳牛」という資産をどう運用するか、それが酪農経営の中心部です。「より元気な搾乳牛」で「コスト的に効率よく」生産し続けることが技術の原点であり、そこに規模が関わるわけです。更に人の労働意欲と作業性が豊かならベストです。

 それぞれの農場には独自の経営条件と実情があり、再生のための基本的な優先順位はかなり異なります。資金、乳牛、労力、施設、「時間」……などの限られた条件のなかで、いかに有効な生産体系を作りだせるか、その優先順が決定的に大事です。

 しかし、この大切さの序列化はそう簡単なものではありません。経営を取巻く時代的な背景や関係組織の事情、複雑怪奇な酪農の技術的からみ合い、農場の特異的な実情…などが縦横に複層するからです。

 これは、一気にはすべての分野に関われないので、なるべく確かな優先順位を確定させ順次対応しなければなりません。

 まず、その序列化の参考になりそうな考え方を示します。

1. 不振農場の基本的な特徴

不振農場には次の特徴があります。

(1)作業時間が少なすぎるか、効果の少ない仕事に長時間かかっています。

 他の大きな作業をすると、日常的にたいせつな仕事が滞ります。

(2)不必要、無意味、逆効果なことにコストがかかっています。

(3)体調の不十分な牛が多くいます。特に肢蹄や乳器の障害、分娩および産褥期の疾患、過肥・過痩牛が多く、また、牛床の空きが多くあります。

(4)空胎牛が多く、妊娠していても存在価値の疑問な牛が目立ちます。淘汰も遅れがちです。

(5)いらだったり、怖がったりする牛が多く、牛と人の関係もまずくなっています。

(6)地味で日常的に行うべき作業が滞り、せっぱ詰まってからまとめて作業をしています。

(7)新しい技術や機器の導入に慎重すぎるか、安直に手をだすか、どちらかにかたよる方が多くいます。

(8)作業の代替が利かなく、自分にしかできない作業が多くなっています。

(9)農場以外のことで忙しく、したがって時間が足りなくなっています。

(10)なにを達成するための作業なのか、その目的が不明確で、惰性的な流れ作業をしています。

(11)分娩、初期の搾乳、乾乳の管理がなおざりになっています。

(12)生産資材の取引が甘くなっています。

 以上を勘案して、優先順位を決定するガイドライン(原則?)を次に示します。

2. 再生のための優先順位決定のガイドライン

(1)時間的なゆとりを作る。

(2)精神的なゆとりを持つ。

(3)作業の目的を認識するとともに、作業性を高める。

(4)コスト効率を意識する。

(5)乳牛の健康レベルを高める。

 a. 気分の良い生活を保障する。

 b. 栄養の要求を保証する。

 c. 代謝障害を予防する。

 d. 病原性微生物や毒性物質にさらさない。

 ※ ストレスを抑制・緩和する。

(6)乳牛資産の総合的な管理能力を高め、価値をあげる(繁殖、淘汰、分娩、初期搾乳、乾乳、搾乳肥育)。

(7)人と牛の関係をよくする。

(8)日常的な作業は毎日おこたらずに行う。

(9)誰でもできるよう作業の単純化を行う。

 以上をそれぞれの農場の実情に照らして「総合的」に判断し、各自が優先順位を決め実践します。

 今回から5回にわたり、そのノーハウを説明します。ただし、応用するときは、それらをマニュアルとして利用しない方が無難です。具体的なガイドラインとしてその意味をじゅうぶん理解し活用してみてください。

II.つなぎ飼い牛舎における飼料給与法

1. 飼料給与の原則とガイドライン

なにごとにも原則があります。原則の存在と意味を知っておくと役立ちます。異なる手法や不調の原因を検討する際、その原則で発想すればよいからです。

●認識すべき乳牛の特殊事情

・乳牛には多様な生態の嫌気的微生物を多種類棲息させ、飼料を連続的に発酵分解し、必要な栄養の60〜70%をまかなっているルーメン(第1胃)があります。

・産褥期においては、巨大な牛乳生産能力と栄養摂取可能量との間に大きなギャップが生じます。

・持病的な栄養代謝障害が簡単に発症します。

・嗜好や栄養特性の異なる、極めて多種類の飼料があります。

・給与作業に関する多種多様な農場内の事情があります。

・気象条件などにより極めて大きなストレスを受けます。

 などの特殊事情を念頭において、次の飼料給与の原則とガイドラインを腹分かりしてください。ただし、「つなぎ飼い牛舎の飼料給与」の場合です。

●飼料給与とガイドライン

(1)粗飼料はおおむね不断給餌とします。粗飼料は2〜3cm以上の切断長のものが20〜30%以上混ざっているもので、おもに乾草や牧草サイレージなどです。いつでも採食可能な状態にしておきます。特に分娩前10日間と分娩後20日間の間はそうします。

 〈ルーメン微生物の住宅(繊維のマット)の骨組みにあたる〉

(2)中間飼料は半不断的給餌をします。中間飼料とは、繊維はかなりあるが有効性は不十分なものです。ほぼ粗飼料的なものは、1cm前後以上の切断長を含むコーンサイレージやヘイキューブなどです。細かくて粗飼料にほど遠いものとしては、ルーサンペレットや大豆の実の皮の細かいもの、オレンジパルプなどです。その中間は普通のヘイキューブ、大割な大豆皮、ビートパルプなどです。

 〈微生物の住宅の壁や床板、天井、ドア、タンスなどにあたる〉

(3)濃厚飼料は制限割当てで給与します。通常の配合飼料、穀物、製造粕など繊維があまりないものや魚粉などです。綿実、フスマ、ビール粕、醤油粕、トウフ粕、コーングルテンフィードなど、繊維分はあっても栄養や消化性にクセのあるものは要注意であり、それらは濃厚飼料としてみます。

 〈微生物の住宅の各種の家具調度品や衣料品などにあたるか?〉

(4)ミネラル、ビタミンは必要量を1日1回以上で給与します。

 塩、カルシウム、リン、マグネシウムなどは確実に給与します。

 〈微生物の住宅なら、情報機材や空調関連にあたるか?〉

(5)添加物的な物は、必要に応じタイミングよく投与します。

バイパス油脂、重曹などの緩衝剤、カビ毒緩和剤、代謝病予防剤、微量成分的な物などがあります。

 〈微生物の住宅なら、困った時に準備するもので栄養剤や薬品などにあたるか?〉

(6)採食(1回30分前後)ごとに同じ物を、できれば同じ順序で与えます。

(7)1回の採食において、濃厚飼料と細かい中間飼料の合計が乾物で4〜5kg(乾いた飼料なら現物で5kg前後)以上になる給与は避けます。できれば乾物で3〜4kg以内にとどめて下さい。

(8)小型の牛や不調な牛は前述の70%以内の量にして、途中で一度増給を止めます。その後、相応の時間が経過してから、可能ならば増給を再開します。

 大型の牛や採食の大きい牛は、一般上限で一度様子を見、可能なら増給を再開します。

 いずれにしろ、上限を見極め、安全圏でストップします。その後、反芻、ふんや採食の仕方(喰い止まり)に異常があったら、ワンランク下の給与量にします。異常が治まれば前に戻します。

(9)前述の(7)のように限界状態で給与されている牛は、約3時間半以内の短い間隔で、濃厚飼料を採食させてはいけません(図−1)。粗飼料を食べる時間がなくなり、喰い止まりやアシドーシスを起こし、万病の元になります。

図−1 濃厚飼料給与時間帯

 濃厚飼料の1日における給与タイミングは、朝夕の2回給与なら12時間間隔に近づけます。

 3回給与以上なら、朝は最初になるべく牛舎に入ってすぐの時間帯のなかで、乾草など他の餌との給与順を配慮し与えます。一方、夕方の最終給与はなるべく牛舎から出る間際の時間帯のなかで、他の餌との給与順を配慮し与えます。昼はその中間のころあいに給与するようにします(図−2)。

図−2 3回給与の場合の作業時間帯

(10)濃厚飼料は1回分でも1日分でも急に増やさない。

 総体のエネルギー水準(NFC《非繊維性炭水化物》やTDN《可消化養分総量》)で10%以内、1回分の給与量では0.5〜1.0kg以内、1日分では2.5kg以内にとどめます。

(11)分娩後、スタート時の1日の濃厚飼料の給与量は、分娩前2〜3日における給与量と同じか20〜30%多め以内の量にします。スタート時の濃厚飼料は1回分で2.5kgを超えないことです。

(12)分娩後の濃厚飼料の増加スピードは、1回の給与量と1回の増加量および1日の合計増加量とのバランスで、確実に対応します。

 例えば、

 a. 朝夕2回の少回数給与で、スタート時1回2kg(1日4kg)給与、1回の増加量0.5kg(1日1kg)、2回とも同日増加…なら5日間隔で増給します。同じ条件でスタートが1回1.5kgなら最初の2回くらいは3〜4日間隔で増給します。2.5kg以上なら最初の2回くらいは1週間間隔の増給にします。

 b. 1日5回の多回数給与で、給与間隔が3〜4時間以上ある場合、スタート時1回1kg給与(1日5kg)、1回の増加量0.5kg(1日2.5kg)、5回とも同日増加…なら10日間隔で増給します。同じ条件でスタートが1回0.5kgなら、最初の3回は1週間間隔で増給します。1回1.5kgなら、1回目増給は2週間待つか、1週間間隔で1回0.2〜0.3kg増給をします。

 c. その中間タイプは似た考え方で調整します。

(13)濃厚飼料などの消化の早い物を増給する時は、乳量に合わせるのではなく、反芻や左腹部(ルーメンのある場所)の膨れ具合や音、そして糞などの状況(牛の調子)で判断します。

(14)濃厚飼料は一度ピークまで給与してみます。ただし、その牛の体調の限界をじゅうぶん確認できる技術を理解してからにします。

(15)濃厚飼料の増給後は、必ず、まず糞の性状、次に反芻、さらにルーメンの張りなどを確認し、異常を感じたら濃厚飼料を前の量に戻します。回復したらすぐ増給し、安全圏まで繰返します。

(16)飼料を減らす順番は、まず添加物、次いで濃厚飼料、さらに細かいタイプの中間飼料、そして粗い中間飼料にします。粗飼料やそれに近いものは簡単には減らしません。

(17)濃厚飼料を減らす方法は、増やした時の反対手順でします。そのタイミングは分娩後100日(3〜4ヵ月)を過ぎたころから意識しはじめます。栄養が余れば皮下脂肪が付きます。座骨端から付き始めます。10日〜半月おきくらいで触診し、1枚?増えたら、2回給与ならすぐに、3〜4回なら1週間〜10日おいて、5回なら半月〜1ヵ月後に、1回0.5kgずつその回数分減らします。

 最終的には、再建時には過肥牛を扱うゆとりはない場合が多いので、乾乳時にボディーコンディション・スコアーを3.25〜3.5の少し薄めで仕上げます。濃厚飼料をあまり減らさないまま乾乳を迎える牛が時々いますが、その場合は、乾乳期間を長め(1週間〜10日)にします。

(18)中間的な飼料(粗いコーンサイレージは別)は、分娩後すぐから、1回分と1日分を他の搾乳牛と同量給与します。ただし、1回の上限を2〜3kg、1日の上限を6kg以内(濃厚飼料のスタートが1日4kg以内なら8kg以内)にします。

 ただし、小型の牛や不調な牛はその半量でスタートし、途中までようすを見て、濃厚飼料の増給日と重ならないように3日くらい間をおいてから正規に戻します。

(19)ミネラル、ビタミン、その他添加物的な飼料は、「多い、普通(少ない)、少ない(無い)」の3(2)段階給与をします。「分娩〜100日間、100〜200日間、200日〜乾乳まで」の分け方に合わせます。

 暑熱などのストレス禍、カビ毒や硝酸態窒素などがある時は、50%以内で割増し給与します。仮に濃厚飼料にじゅうぶん入っている時でも、産褥期においては、濃厚飼料の給与量は少ないが、必要量は大きいのだから、しっかりと別給与をします。

(20)バイパス油脂や魚粉などは、全体の嗜好性や馴致程度をよく考慮して使います。「多い、少ない、無い」は、「分娩後30〜45日、ピーク乳量期、それ以後」に合わせます。劣質な粗飼料の時は給与期間と量を変えます。

(21)暑熱等で採食量が落ちたときは、減った乾物分だけ同じ率で各飼料を減らします。

 長引く時は、反芻回数などをみて、限界近くまで中間飼料を増やし、繊維の少ない粗飼料を不断給餌とし、濃厚飼料は少し減らし給与回数を増やします。ルーメン溶解性の油脂は減らします。

(22)非常に大事なことですが、飲水はじゅうぶんに与えることです。

(23)横盗り採食が多い牛には、なんらかの制約を加えます。横から届かないようにするか、同類牛の所に場所を変えます。

乾乳牛の場合の給与原則

(1)乾乳期間をとおして、粗飼料(できれば乾草)を飽食出来るよう徹底します。

(2)前期牛は中間飼料で乾物3〜4kg以内、濃厚飼料で2〜3kg以内にします。

(3)前期牛は塩、ミネラル、ビタミンを必要量給与します。

(4)後期牛(分娩前の約3週間=クロースアップ期=CU期)は、粗飼料をさらに高品質な物にします。高品質とは、まずは高嗜好性、次に高栄養率、そして低カリウム、さらに低溶解性蛋白質と低毒性物をいいます。よく食べれば大丈夫といえますが…。

(5)CU期は、中間飼料(コーンサイレージ以外)は乾物で2.5kg以内です。

 コーンサイレージが、高品質なら乾物で2.5kg(現物8〜10kg)以内、低品質ならゼロか高品質の半量にします。

 濃厚飼料は、高品質コーンサイレージを10kg給与する時は乾物で3.5kg以内、無給与の時は4.5kg以内にします。

 濃厚飼料と中間飼料は1日2回以上に分けて給与します。

 粗飼料の食込みが不十分な場合は、他の飼料を10〜20%減らします。

 初妊牛は、中間飼料と濃厚飼料を20%前後少なく給与します。大型の牛や食込みのよい牛は10〜20%多く給与してもよいでしょう。

 粗飼料がサイレージ類なら、濃厚飼料はタンパクのバイパス性を高めます。しかし、中間飼料にビートパルプペレットやルーサンキューブなどのバイパス性の高い物を使う場合、普通の濃厚飼料でもよいでしょう。    

カリウムの少ない中間飼料や濃厚飼料を使います。    

濃厚飼料中には穀類を40〜60%入れます。    

粗飼料が低品質だったり、乳牛が寒さに曝されているならバイパス油脂を1日100〜150g濃厚飼料として入れます。魚粉は100〜200g濃厚飼料に入れてもよいです。いずれも嗜好性を配慮して下さい。

(6)カルシウムは全体で必要量以下の場合、不足状態のまま分娩させ、乳熱発生の緩和を試みるのもよいでしょう。しかし、ルーサンや魚粉などカルシウム含量の高い物を給与するとカルシウム量はすぐオーバーします。

 もし、イオンバランスをとり起立不能を予防したい場合は、しっかりした飼料設計と給与作業を要します。その際はカルシウムとリンの比率は1:1から3:1とし、カルシウムは乾物の1%強以上にします。マグネシウムはカリウムの1/4強にして、かつ、乾物中0.45%を超さないことです。

(7)塩は給与しないのが無難、重曹は絶対やらない。

(8)ビタミンは必要量給与します。

(9)これらは、分娩に近い期間ほど、効果が高いので、期間が短くても実行する方がよいです。

(10)できるなら、飼料の分析に基づく飼料設計を確実に行うのが最良です。

(11)もし、粗飼料や環境の条件が最善に近ければ、特別なCU期管理は無理にしなくてもよい例が多くあります。その時は、乾乳時のボディーコンディションを薄めにし、期間をとおして少し多めの濃厚飼料を給与します。

 長くなりましたが、以上がマニュアル的な内容も含めた、飼料給与の原則とガイドラインです。

2. 1日の給与スケジュールの作成

 1日24時間のスケジュール利用は簡単そうで難しいものです。それぞれの方が達成したい生活や作業の仕方に、目標や考え方があるからです。あるいはそれを必要とするからです。

 まずは、自由な時間と精神的なゆとりが第一です。自由な時間の確保とすべき仕事がリズミカルに進むことが必要です。

各時間帯の特徴

 図−3に示しました作業スケジュール表について説明します。

図−3 1日における時間帯別の特徴

a. 朝の搾乳前

 農場の最も中心になっている人が、先頭切って牛舎に入って行くようになれば、再生は目にみえてきます。朝の最初が、乳牛にとって一日で最も価値ある時間帯だからです。

 朝には次の状態があります。

・牛舎全体が一番汚れきっています。

・発情が最も強くでる夜中の余韻があります。

・乳牛などトラブルの多くが表面化しやすい時です。

・乳牛は1日で最も空腹状態になっています。

・多くの人は最も不機嫌な時間帯です。

 このなかでも意味深いことは乳牛の空腹状態です。長い夜間における、低食欲や、無いあるいは届かないことの多いエサ、さらに濃厚飼料や中間飼料が長時間与えられていないことによるルーメン微生物に対する影響など・・・、が朝に集中しています。ここで慌ただしく消化の速い餌を多量に給与してしまうとルーメンpHの急変が生じ、軽い「喰い止まり」を起こします。これが連続したり、濃厚飼料の急増などをすると、本格的な食欲不振や代謝障害に結びつくのです。

 1日の最初、朝一番の餌のやり方が、1日24時間の好不調を左右します。特に産褥牛や初産牛、あるいは濃厚飼料などの細かい餌を多給されている牛にとってはたいせつな時間帯です。

 人にとってはつらい時間帯ですが、搾乳前における、ここでの仕事内容が、生産性に直結します。誰か1人、できれば中心人物か後継者が、朝の搾乳前の小一時間を牛舎でがんばると農場のムードと収支が一変し始めます。

 一回の採食時間帯における給与飼料の順序は次のことが望まれます。

 ルーメンマット補強や唾液による緩衝効果を促進するような、噛まねばならない繊維性の多い餌をまず給与します。次に、採食すると間もなく、ルーメン内微生物の活動エネルギーとなり、かつ繊維性に富むタイプの中間飼料を与えます。その理由は、その直後に給与される濃厚飼料に多く含まれ、ルーメンですぐ溶分解しやすい粗蛋白を、菌体蛋白に合成する微生物に、好タイミングで安全にエネルギーを供給するためです。そして、最後に濃厚飼料を適量給与します。この場合の中間飼料とは、エネルギーはすぐ供給するが、ルーメンpHは下げにくい成分のペクチンを多く持つビートパルプ、高品質なオレンジパルプやルーサンペレット、キューブ等です。

 以上が一応それなりの給与手順です。

 まず、朝だけでもこのやり方を遵守する価値があります。そのためには、朝の搾乳前、誰かが本気にならねばなりません。ここがひとつの勝負どころでしょう。できれば、朝早いほど有益なこと請け合いです。 酪農家の早起きはこの世で最も有益なもののひとつでしょう。

b. 搾乳時間帯とその前後

 搾乳時間には多くの人が必ず牛舎にいます。どうせ必ずいるのですからなるべく目いっぱい時間を有効に利用したいものです。

 搾乳中に全く餌のない農場が目立ちます。朝一番に多量に給与された牛はほとんど食べない場合が多いけれど、しかし、もし食べたくてもそこに餌がなければ食べられません。そういう牛ほど、そのほんのわずかが採食できると、効果満点となるのです。また逆に、給与量が少なかったり、夜から朝にかけなんらかの事情で採食不足だった牛は、搾乳中でもまだ食べられます。搾乳中に粗飼料を与えておけばベターなのですが・・・。

 全ての牛に粗飼料を満度に採食させることは、とんでもなく粗飼料が高いなどの余程の事情がない限り、全ての技術・作業に優先すべきことです。

 また、もしこの時間帯を長め(3時間半以上)に持てれば、その時間の両端で濃厚飼料を与えれば、1日変則4回給餌の意味が出ます。この間隔が短すぎるのに、給与量をあまり減らさないでいると、労多くして効果はわずかとなりやすいものです。下手をすると、粗飼料を長時間にわたり採食できない状態が続き、アシドーシスなど逆効果になりかねません。

 もし、昼に濃厚飼料を給与できれば結構な5回給餌という多回数給与ができます。

 搾乳は必ず家族あるいは夫婦で…という理由はありません。1+α人でゆっくり作業し、他の人がその他の効果的な仕事をしっかり行い、時間は延びたが有益な作業も増えるということの方がうまく行くかもしれません。時間が延びれば変則4回給餌も価値が増し、しかも昼間作業をほとんどする必要がなくなれば、御の字でしょう。

c. 午前中

 1日中、フルに仕事をし続けるのは、通常長続きしないし、思考する時間も失います。経営に変化を与えてくれる人との接触や業者との交渉などもできません。

 午前と午後のどちらを自由時間的なもの(牛舎作業から解放される時)として選べばよいのでしょうか。普通は午後です。社会一般の活動時間と一致するからです。

 逆にいうなら、午前中にほとんどすべてのなすべき仕事を終わらせておき、そして、午後は夕方まで完全に牛舎から離れます。その代わり粗飼料は切れないように給与しておくことが肝要です。しかし、ある程度目途がついたら、朝と昼と夕で作業をじゅうぶんに行い、午前も空けられるような管理手順を作るのも価値があります。特に、圃場作業が立て込むときに有効です。

d. 昼

 昼食時にほとんどの農家の人は家に戻ります。全く誰もいないということは、めったにありません。日常作業の中心部であり、この絶好の給与チャンスを逃す手はないでしょう。

 朝の管理終了後、昼まで全く給与作業をしていない場合、昼には、まず残飼を掃き込み、不足の粗飼料を与え、軽く作業できるタイプの中間飼料と朝と同じ濃厚飼料を配給します。

 その後、夕方まで持つ量の粗飼料を与えます。ただし、注意すべきは、濃厚飼料を完全に食べさせるか、牛床近くにしっかり寄せておいてから、給与しないと、それ欲しさに乾草を放り、届きにくくしてしまいます。特に長草のサイレージ類はじゅうぶんにほぐしてやらないと、隣の牛に引っ張られたり、すぐ遠くに放りだしたりします。これは、朝時間帯の最終でも、夕の最終でも、次の給与までの時間が長い場合はみな同じです。特に、夕の最終は朝まで長い時間があるので、このようにする価値があります。

e. 午後

 自由時間になります。手持ち無沙汰な誰かがいるのなら、途中で餌を掃き込んだり追加したりしてもらうのはとても有益でしょう。

 しかし、着替えした後、牛舎に入るのは、かなりおっくうなようです。そのためにも日常的にドライでクリーンで安楽な牛舎にしておくことがたいせつといえます。そのような場合、牛舎に入る気になります。

f. 夕の搾乳前

 少し早めにいき、餌の掃き込みや、その他一連の作業をします。朝の搾乳前ほどの重要さはないでしょう。

g. 搾乳時間帯とその前後

 bの項の説明と同じです。

h. 夕の搾乳後

 早くあがりたくて気のせく時間帯です。それ以後は牛舎に行かないのなら、朝までは最も長く管理がない時間帯になります。じゅうぶんな対応が大きな価値を生みます。

 夜間から朝にかけて、ルーメン微生物の活動を停滞させてもあまり意味がありません。ルーメン内でゆっくり長効きするタイプの濃厚飼料と変えたり、それを補強したりすることも考えます。

 牧草類は、朝までじゅうぶんあるように気をつかいます。

i. 晩

もしも、就寝前に牛舎に行くのを嫌がらない人がいたら、牛のトラブル観察を兼ねて、餌の掃き込みや粗飼料の追加をするのがよいかもしれません。しかし、牛が起きて排糞し、体を汚す原因をつくるマイナスもあります。

次回は、以上を参考にして乾乳から分娩、産褥期からピーク給与時、その後の飼料給与法などを説明します。

(筆者:北海道十勝北部地区農業改良普及センター・主査)