(2) 子牛価格の推移〜鈍化する回復傾向〜
 平成5年度から平成7年度までの「子牛販売収入」は24万円から25万円台を推移し、繁殖経営の収益動向を悪化させる主要因となった。肉用牛の子牛価格は牛肉輸入の自由化が実施された平成3年度以降でも「枝肉価格の上昇→子牛価格の上昇→子牛生産頭数の増加→子牛価格の低下→子牛生産頭数の減少」1)という循環が確認されており、循環期間の変動はあり得るものの、再び価格回復期に入り価格上昇が始まるとみられていた。しかしながら平成8、9年度の子牛価格の水準は昭和63年度、平成元年度の35万円台を大きく下回った27万円台にとどまっており、回復のテンポは遅れている。

 (3) 「利益」と「所得」の増減要因
 これまで繁殖経営における「利益」と「所得」の増減は、もっぱら「子牛販売収入」による「売上高」の増減に起因してきた。したがって、「売上高」が25万円台を割り込むまで落ち込んだ平成5年度を最低水準として、平成6、7年度と「売上高」が回復するにつれ「営業利益」「経常利益」「経常所得」等の指標を回復させた。しかしながら、平成7年度の収益性の回復は肥育牛の販売による「その他収入」の一時的な拡大によるもので、「子牛販売収入」による回復ではなかった。平成7年度の「子牛販売収入」は平成5年度当時と同水準の24万円台にとどまっており、その回復傾向はサンプルの片寄りによるものとみてよかろう。その後、平成8、9年度の「子牛販売収入」の動向を見ると、子牛価格は回復傾向にあるものの、上昇のテンポは明らかに低くなっており、その影響により、収益性の回復も鈍化しているといえる。このことは同時に、子牛価格の兆しを見せないまま次の子牛価格下落局面に繋がる様相も見せているといえる。

 (4) 購入飼料費の増加傾向
 「当期生産費用」うち、「購入飼料費」の占める割合は平成元年度に18.3%であったが、その後年々微増を続け、平成9年度には23.9%にまで増加している。図1は、雌牛1頭当りの「購入飼料費」を繁殖雌牛の飼養頭数規模別にプロットしたものである。これによると、「購入飼料費」は繁殖雌牛の飼養頭数が拡大するにつれてわずかに減少する傾向にあるが、小規模層では同じ飼養頭数でも雌牛1頭当りの購入飼料費の格差が1万円以上あり、小規模層の中には購入飼料への依存度を強めている経営が増加しているものと思われる。子牛価格の上昇傾向が鈍化している状況下にありながら、購入飼料への依存度が拡大することは生産コストをより一層圧迫し、今後の収益性の悪化を予想させる要因となっている。



1)栗原幸一「II.肉用牛経営の収益動向と要因分析」『経営診断からみた畜産経営の現状−畜産経営診断全国集計解析編−』平成7年3月(社)中央畜産会


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