◆HOME◆畜産大賞の概要◆平成16年度選賞事例一覧
|
洲本市酪農農業協同組合のみなさん |
兵庫県洲本市 洲本市酪農農業協同組合 (代表:代表理事組合長 赤松清助) 淡路島から心と体にやさしい牛乳を届けます ―消費者が求める牛乳生産への取り組み― |
洲本市酪農農業協同組合は、京阪神地区の食料供給基地淡路島にあり、安全・安心な牛乳・乳製品を供給している。ニーズにそった商品開発、組合員への徹底した乳質指導を行うとともに、生協取り引きを通じて生協組合員に生産現場の確認と現状への理解を深める活動等を行い、生産者と消費者づくりが一体となって安全・安心な飲料供給のできる生産地づくりを行ってきた事例である。 洲本酪農は、昭和23年、生乳販売と島内洲本地域の飼料協同購入を担うために設立され、同38年からは島内で学乳供給を開始、同40年には近代的な牛乳処理工場を建設するなど、協同組合機能の充実に取り組んできた。その後、組合員の経営安定と組合運営の健全化を目指すため、乳質改善を中心に捉えて大手量販店を中心とした市乳販売の拡大に取り組み生乳生産量も増加したが、飲用乳価が値下がりに転じた昭和62年頃からこれらの販売戦略の見直しを迫られることになった。平成元年、「酪農家の実態を知ってもらうとともに、洲酪の良質・新鮮な牛乳をアピールする」ことでの新たな展開を目指し、対岸の「大阪いずみ生協」との交流を開始した。取り引きに至るまでの条件は、飼養環境、水源条件、粗飼料成分などに厳しい品質管理を求められるものであり、あわせて生協組合員が生産者と一緒に生産現場において生産内容の確認を行う活動も実施してきたが、このことが組合員のより一層の乳質改善意識を強くした。このようにして深まった消費者との絆をモトに、消費者ニーズに対応する商品戦略と地域の生産振興活動を実施してきた。 消費者ニーズに対応する商品戦略の代表的なものは、「低温殺菌牛乳」である。自然で搾りたての風味を求める消費者の声とこれまで努力してきた組合員の乳質改善努力が結びついた取り組みでもあり、さらに工場もより生乳に近い風味で処理できるよう一般的なバッチ方式よりも施設投資費の要するホールディングチューブ方式を採用した。また、牛乳独特のにおいを抑え、牛乳嫌いの人でも飲むことができる「ハーブ牛乳」、これも消費者の提案から開発されたものである。現在、給与しているハーブは購入しているものではあるが、地元産のハーブを利用しての生産も動き始めている。さらに組合側も、乳質上位の生産者の生乳を使用した牛乳や生産者指定牛乳など消費者を意識した戦略的な商品開発を行っている。 余剰乳については、アイスクリームの製造・販売店を洲本市中心部の第三セクターの観光施設に出店し、地元農産物としての販売を行っている。このような取り組みと徹底した乳質改善指導によって安定的な運営が行われ、島内のどの地域よりも高い酪農専業化率となっている。 また、組合は市と連携して設立した「洲本市推肥流通協議会」において市内のたい肥とイナワラの流通に係わる調整役を果たしており、酪農生産に責任を持ちつつ、このたい肥循環によって京阪神地域に出荷される野菜の有機的な生産に一役買っている。 近年、いずみ市民生協との交流事業は、明石海峡大橋の開通により往来が便利になったことから年14〜15回と頻繁に行われるようになった。その内容も安全・安心な生産内容の把握から搾乳や哺乳体験といった都市の子どもへの食農交流も含めた形で変化しているが、大消費地京阪神地域の食を支える淡路島の機能の一つであるともいえる。 以上のように、生産者・消費者がお互いに顔が見え、声の届く関係のもと、消費者のニーズを積極的に生産指導と販売戦略に生かしている本組合の活動は、組合員が生産に専念できる環境をつくりだすとともに、野菜農家にたい肥供給を行い、地域農業全体の循環的な食料供給活動に貢献している。 |