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地域振興部門・最優秀賞



岩手短角牛
  岩手県岩手郡滝沢村
岩手県短角牛振興協議会
(代表:会長 伊達勝身)
いわて短角牛再興による地域振興をめざして
―自然・安全・安心なISO9001認証牛肉生産の取り組みー

日本短角種は、北東北の厳しい気候条件と草地条件に適応した優れた放牧特性を持つ品種であり、岩手県では短角牛として呼ばれている。岩手県短角牛振興協議会は、澄んだ空気と水、豊かな牧草資源で育つ特徴を活かし、「安全・安心」を希求する消費者意識に対応するための品質保証のしくみづくりを行い、県内短角牛飼養の統一基準による地域一貫の生産体制を構築した。

岩手県内の短角牛飼養頭数は、昭和61年の19,350頭をピークに牛肉輸入自由化の影響等により平成15年現在で5,102頭までに激減した。このため協議会では、肉質や等級による牛肉の評価ではなく、自然と風土を生かした生産技術の特徴を最大限に活用した生産過程の内容そのものをPRすることで、頭数の減少に歯止めをかけることを考えた。

平成16年2月、岩手県内の短角牛は既に共通の条件による飼料給与がなされていたことから、これをもとに11項目の基準からなる「いわて短角和牛認証制度」を作成した。その主な内容は、国産粗飼料とホルモン剤を含まない飼料の給与、岩手で生まれ・育ち・処理されて牛であること、生産者と飼料や医薬品等の給与内容が明らかにわかること等である。現在、基準をクリアした牛に「いわて短角和牛認証シール」が付けられ販売されている。さらにこのしくみを消費者により一般的に浸透させるための方法として、また、県内各地で行われている短角飼養の共通部分を集約する手法として、肉用牛生産において国内初となる国際的な品質規格「ISO9001」の認証を平成16年3月に取得した。現在、これに基づきマニュアル化が行われ、「生産計画の立案→実行→検証して問題があれば改善する」というサイクルで実行されている。

品質管理の取り組みは確立されたものの、脂肪交雑やきめ、しまり、肉質を重視する現状の枝肉格付評価では、有利性が発揮されないため、市場出荷よりも生協や有機的に生産された農産物等を扱う流通業者との契約販売を行うことで、安定的な販路を確保してきた。また、PRをいわて牛普及推進協議会と連携しながら実施している。

以上のような取り組みを実施してきたが、これらの取り組みは単に短角牛の生産振興のみに寄与しているだけではない。短角牛を維持していく試みは、夏山冬里方式という伝統的・合理的な耕種部門との複合、地域内の資源循環、さらに森林や草資源の維持管理といった環境保全機能等、農業の多面的機能を十分に発揮することで産地全体に貢献している。また、郷土の食と文化を見直し、推進していくという県内スローフード活動を実施することで、畜産と地域社会の共生を実現している。