農林水産大臣賞・最優秀賞
採卵養鶏一筋、地域の仲間と共存・共栄
〜コスト削減とともに、より安全・安心な鶏卵生産・販売を目指して〜

 島根県大田市 (有)旭養鶏舎
(採卵鶏経営)

 (有)旭養鶏舎は島根県西部の日本海に面した大田市にあり、国道9号線からわずかに入った場所に立地している。旭養鶏舎の発足は昭和36年にさかのぼり、今回の発表者である竹下正幸氏の母親も参加した5000羽規模の6戸の協業経営であったが、45年に経営不振から操業を中止し母親が施設を引き受け個別経営として再出発した。同年、竹下氏が大阪でのサラリーマンを辞め、母親とともに養鶏を始め、協業時代に借金返済をしながら着実な規模拡大を行い、45年から休眠状態であった(有)旭養鶏舎を平成2年に再開し、竹下氏の経営努力と地域に養鶏仲間との協調・連携によって島根県最大の20万羽養鶏を築きあげてきたことにまず、注目すべきと思う。

 旭養鶏舎の評価すべき特徴点をあげる。

 第1は昭和49年に6人の養鶏仲間と任意組合である「ミネラルエッグ生産組合」を設立し、ヒナ、飼料、生産資材等の共同購入を行うとともに、卵の出荷調整と価格交渉を行っている。現在の組合員は9人に増えているが、竹下氏が設立時から中心的役割を担い、現在はこの組合員は同一鶏種、同一飼料を使用し、共通の使用マニュアルに従ってピンク卵を生産し、卵の過剰時には旭養鶏舎が組合員の卵の処理を引き受けている。

 第2は「販売なくして生産なし」という経営理念のもとに需要の動向を見極めながら着実な規模拡大を行うとともに、「安全・安心な卵作り」のために機械システムの導入と徹底した衛生管理を行い、消費者の信頼のもと、現在は大阪全農高値の25円高で安定した供給を行っている。

 第3は森林浴エキス飼料(ネッカリッチ)の給餌で生産された卵をネッカ・エッグまたはネッカ卵のブランド名で統一出荷し、一部を温泉卵に加工販売しているが、ほとんどを生食用として、販売先は島根生協をはじめスーパー関係に多く出荷している。廃鶏は鹿児島県の業者に1羽30円で販売し、収入の確保に寄与している。

 第4に鶏ふん処理は5基のコンポストで余裕をもって処理し、袋詰め後「旭有機」のブランドで販売し年間売上高1651万円に達している。

 第5は技術水準も高く収益性は年間所得1億0700万円、所得率11.7%、成鶏100羽当たり所得5.2万円、一方1kg当たり生産コスト157円に対して平均販売価格213.5円となっている。

 今後は消費者の需要を踏まえて、現在の1000羽の平飼い赤卵の規模を増やすとともに国道沿いの地の利を生かして、廃鶏を食材の中心とした観光農園を計画しており、今後の一層の発展を期待したい。