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以下、経営の評価すべき特徴点をあげると・・・、 第1は規模拡大が着実で4回にわたって畜舎を新増築している。昭和60年には村有の採草地16haを借りて放牧地を造成するとともに、転作田の借地を増やし、頭数に見合った飼料生産を行っている。 第2の特徴点は飼料生産に積極的で、現在は借地12.4haを含めて14.4haに達し、チモシー主体の混播で年3回刈り取り後、ロールベールサイレージに調製し、TDN自給率63.5%となっている。水田転作地の借地は地域の転作達成に貢献するとともに、農地の荒廃防止に役立っていることを評価すべきである。 第3の特徴は自宅裏山の村有地16haの放牧地で妊娠牛の夏期6ヵ月間の放牧や飼料生産のロールベール体系の導入、繁殖雌牛のフリーバーンでの群管理飼養で、成雌牛1頭当たりの労働時間は35.5時間と省力化が進んでいるが平均分娩間隔12ヶ月と1年1産を確保している。 第4の特徴は増頭に当たっては育種価の高い牛群の自家保留で牛群改良を進め、現在は系統繁殖の結果4系統にしぼり全体の3分の2に達し、育種価Aランクの牛が60%弱を占めている。牛群改良に当たっては詳しい個体記録をつけるとともに自家産子牛の肥育成績の追跡調査にも力を入れている。さらに改良速度を早めるため受精卵移植も積極的に行っている。 第5の特徴であり、評価すべき最大のポイントは子牛1頭当たりの生産原価が15年度19万円弱、14年度19.2万円と20万円を下回っていることである。この成績は都府県の生産原価としては群を抜いて低く、周年放牧の飼養体系をとっている沖縄の離島並みである。この成績の背景としては、?1年1産で繁殖成績が良いこと、?省力化が進み労働コストが低いこと、?自給飼料生産基盤がしっかりしており、購入飼料費が成雌牛1頭当たり年間6.5万円弱と少ないこと、?敷料費がエノキの廃菌床や稲ワラの回収でほとんどかかっていないことなどがあげられる。 最後に家族労働力2人で余裕をもって成雌牛59頭を飼養し、年間総所得1196万円、所得率62%の立派な経営成果をあげていることにも注目すべきである。 石賀さんは後継者になる長男が自宅通勤で酪農協に勤務しており、近い将来就農が予定されており、さらなる飛躍が期待できる。 |