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遠藤さんの経営は道東内陸部の中標津町にある。 酪農開始は戦前で遠藤夫妻は4段目にあたり、74haの草地が畜舎周辺に1団地としてまとまっている。これは祖父の代に土地購入と交換分合でまとめたものである。現在この土地基盤の上で夫婦2人の労働力で経産牛90頭を含めて140頭の乳牛を飼養し年間所得2505万円をあげている。 以下、遠藤牧場の評価すべき特徴点をあげると・・・・、 第1は経産牛頭数が60頭になった段階で飼養方式をフリーストールパーラー方式に切り替えるとともに、機械類の整備を行っているが、従来からの放牧重視の経営を続け、畜舎に近い20haの草地に1番草刈り取り後、放牧し、草地の効率的利用と省力化を行っている。遠藤牧場ではアスファルトの15aパドックがフリーストール牛舎に付設され、ロールラップサイレージを自由採食させ、さらにパドックから放牧地へも自由に牛が移動できるようになっている。このため、牛の運動量が多く、足腰の強い牛となり、フリーストールの周年舎飼い方式より供用年数が2年伸びている。一方フリーストール内ではセミTMRを給餌し、乳量に応じた配合飼料の増し飼いはパーラー内で行っており、一群管理のフリーストール飼養に伴う購入飼料費を抑えており、低コスト生産につながっている。 第2は家族労働力2人という条件で1番草の適期刈りによる品質向上を行うため20ha分の刈り取り、バンカーサイロへの詰め込みと年3回のスラリー散布もコントラクターに任せ、労働過重を回避している。 第3の特徴はフリーストール方式の欠陥である牛の耐用年数が短くなることを先述した放牧の導入によって改善し、牛の耐用年数が伸び、初妊牛8頭、経産牛15頭の個体販売収入が約650万円に達し、高所得に大きく貢献している。 第4の特徴としては地区の酪農仲間14戸で町有地を借り、共同放牧場を設置し、多い年で年間15〜16頭預け、育成コストの低減に役立てている。 第5の特徴は夫婦2人で2505万円、1人当たり1250万円の高所得である。一方生乳の生産原価も3.5%換算で1kg当たり43.3円と安い。その背景としては、飼料基盤がしっかりして乳飼比が32%と低いこと、生体販売が多いことに加えて経産牛1頭当たり年間労働時間が51時間弱と省力化が進んでいることがあげられる。 遠藤さんはより一層の省力化のため1番草からの放牧を検討しているようだが、そのためには草地の拡大か、飼養頭数を若干減らすかの選択に迫られているが、当面は現在の飼養規模で低コスト、省力生産で収益向上を図っているものと思われ、今後の一層の経営充実を期待したい。
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