中小家畜部門 最優秀賞・農林水産大臣賞

経営を育雛から採卵・直売と
多角化し、高付加価値化商品の開発とインターネットなどを
活用した販売の取組み

 (有)畠中育雛場・畠中兼雄さん(養鶏経営)

 畠中さんの経営は、かつての産炭地の中心である飯塚と田川の中間地に立地し、昭和46年、現在の本場があるところに土地80aを購入し、最初はビニールハウスによる育雛から始めている。

 その後、昭和50年には採卵を始め、昭和53年から60年にかけて分場を設置している。4つのうち現在1つは閉鎖しているため、3つの分場が稼働している。一方で、販売等の多角化を行っている。昭和58年からは直販を開始し、平成10年にはインターネットの販売も始めている。

 また平成10年からは卵を利用した加工品、更に11年にはアイスクリームの製造販売。このように育雛経営からスタートし、発表者一代で売上総額が5億円を超え、所得が 8293万円という大型の経営を築き上げている。その間、昭和56年に有限会社へと法人化もしている。

 また資料にあるように、畠中さんの経営は今日では非常に多角化しているが、もともと育雛が会社の中心である。年間34万5000羽のヒナを供給している。採卵部門は4万羽程度だが、鶏種は18に及ぶ。これは育雛場からスタートしたという歴史的な経過もあると思う。そしていろいろな部門に手をつけられ、経営の拡大を行っている。

 育雛事業でなぜ採卵かということだが、ヒナの売残りの活用、自ら採卵することによって、ヒナを買ってくれるお客さん30戸に対する技術指導もそれぞれの鶏種ごとにできるという利点がある。

 卵その他加工品についても、発表では共生という言葉を使っていたが、自らの経営とお客さんの事業がバッティングしないようにいろいろな工夫をしている。卵は、基本的には、ブランドとしては彩彩卵(いろいろらん)、それからインターネットで卵の庄(らんのしょう)という屋号で売っている。その結果、卵の販売価格は、県の平均に比べて約 1.5倍の卵価を確保している。

 それでは、何でも手がけるから何でも中途半端かというと、例えば採卵の部門をみると、成鶏1羽当たりの年間の産卵量18.5kg、飼料要求率が2.0%と、県下でもトップクラスの技術成績を残している。また衛生管理は、娘さん夫婦がどちらも獣医師であり、2人の力で衛生管理には万全を期している。エサについてもPHFの飼料を使うというこだわりをもっている。

 発表では詳しく触れられなかったが、卵以外に自分のところの鶏ふんを使った野菜、農産物等も販売の場を提供することで、地域農業の手助けをしていることも特徴の1つといえる。

 現在、これだけの経営を常雇30人、パート14人という大変大きな雇用のもとで行っている。ただ、畠中さんの有限会社は同族法人である。夫婦、娘夫婦、兄弟、その6人が有限会社の社員で、それぞれの役割分担が非常にうまくできていることに注目する必要がある。

 それから、畠中さん自身、一代でここまで築き上げたこともあり、施設、機械の保守点検に非常に注意している。したがって、古い施設、機械を今日も有効に稼働させている。これが投資の抑制、結果的には減価償却費の低減につながっているのではないか。ふん尿処理についても、平型の撹拌乾燥機を2つの分場に設置しており、昨年度は補助事業で縦型のコンポストを導入している。年間の鶏ふん販売額も 661万円と多額である。

 畠中さんの経営は、発表者自体が今日の経営を確立し、厳しい養鶏業界の中で経営を多角化し活路を見出してきた1つの典型的な事例である。将来的には、これは畠中さんの夢だが、「有機農産物生産農場をつくりたい。そして有機肥料による農産物を消費者に提供したい」と語っていた。長女夫妻の獣医師2人と、畠中さん夫婦の二人三脚で、これからの更なる飛躍がみられるのではないかと期待している。