大家畜部門 最優秀賞・農林水産大臣賞
|
|
三代続く本物の酪農経営
大分県山香町 小原春美さん(酪農経営)
|
小原さんの経営は、大分県の国東半島のつけ根の山香町にある。同地は典型的な中山間地帯である。昭和32年にこの地で酪農を開始し、昭和38年には当時としてはかなり思い切った決断で制度資金を活用して18頭牛舎をつくり、本格的な酪農経営をスタートさせた。
平成2年には、経産牛60頭へと着実に規模拡大し、現在は夫婦2人と長男の3人の基幹労力で、経産牛80頭、育成牛27頭を飼養している。中山間地にもかかわらず土地の確保にいろいろな努力をし、11.8haの飼料基盤、しかもこれは面積だけでなく夏作にスーダングラス、裏作にイタリアンライグラスと非常に集約的な利用を行って、100頭以上の乳牛を飼養している。
経営の成果をみると、1頭当たりの乳量が9555s、乳質も立派である。年間所得が 3065万円。経産牛1頭当たりの所得が38万5000円。所得率36.1%の成果を残している。生産原価が都府県の中でも非常に低く58円30銭、それに対して乳価が105円。乳価の半分ぐらいのコストで生産している。
一方、借入金残高はわずか45万円。これは農地取得資金の残高である。
以上の結果でわかると思うが、審査委員会で小原さんが評価された点を幾つかかいつまんで紹介する。
第1に、経営規模の拡大が非常に着実である。頭数の拡大と同時に、飼料作の裏付けをもって規模を拡大して11.8haに、1頭当たり29aの飼料作の裏付けをもっている。
拡大投資は自己資金の蓄積を待って行うということで、畜舎投資の増改築に当たってはむだをしないこと。一方、飼料作については、思い切った機械化によって省力化、集約化を図っている。
第2に、乳牛改良についても熱心で、昭和52年から牛群検定事業の結果を利用し改良に努め高乳量の結果を残している。
第3に、経営の計数管理についても昭和40年から記録をつけ、昭和43年からは青色申告をすることで計数管理も非常にしっかりしている。したがって、投資に当たっては計数に基づいた経済性の検討の裏付けで慎重な投資を行っている。
第4に、省力的先進技術の導入については積極的である。例えば、現在とられているロールサイレージ、TMRの飼料によって、通年サイレージの給与体系を確立している。
第5に、ふん尿処理についても、スライドでみたように「家畜排せつ物法」を受けて、大型の一時処理施設を自分でつくる。同時に、小原さんが中心となって、町に働きかけて大型のたい肥センターを設置し、そことの連携を図るなど、たい肥処理については万全を期している。ただ、これだけの規模になると、一般に指導機関はフリーストール、パーラーが指導の対象になるが、現在3人の労力でやっている小原さんは、この頭数であれば、フリーストール、パーラーの体系でなくても、今の飼養体系でじゅうぶんこなせるので、これについては慎重な態度をとっている。
それから、家族協定を結んでおり、家族に対しては給料制をとっている。後継者の立場もじゅうぶん尊重している。なお、今年度中には、法人化を具体的に考えており、将来は長男の意向等を踏まえ、更なる飛躍を検討している。
このように、小原さんの経営は決して派手な経営ではない。しかし記録に基づく経営管理、省力化投資に裏付けされ、収益性、安定性、将来性ともに優れている。こういう点を評価し、大家畜部門の最優秀賞に決定した。
|