大家畜部門 優秀賞・畜産局長賞

牛を通じて人と自然の調和した
経営を目指して

静岡県引佐町 峯野孝さん(肉用牛部門)

 峯野さんの経営の置かれている立地状況は非常に厳しいところである。中山間地の、しかも急傾斜地で、これまで和牛肥育を行っていたが、負債の累積から経営危機に追い込まれるという苦しい経過を経て、関係機関の指導、助言により、ホルスタインのモト牛育成を経過して、平成8年からF1のモト牛育成に絞って行っている。経営成績が非常に好転して、今日、立派な経営を行っている。

 きょう、発表者の皆さん、夫婦2人で今日の経営を築いたということで、奥様方に対して感謝の気持ちを発表の中で話しておられたが、まさに峯野さんの経営の場合も、夫婦が文字どおり対等に力を合わせて作業や経営管理を行って、しかもパート労力をうまく活用し、労力的にも余裕をもって経営をやっている事例だ。しかも、かつての和牛肥育のノウハウを生かし、県下の酪農家に和牛種牛の選定のアドバイス、あるいは自分で和牛の精液を買い、これを無料で酪農家に提供している。こういうことを通じて、酪農家と広いネットワークを築き、その情報交換によって、ヌレ子の調達等を有利に行っている。

 中山間地ということで、現在六段のところに畜舎が次々に建てられている。しかも、育成ステージごとに牛群を移すということで作業の効率化も図っている。

 現在、この地域はお年寄りがふえてきて、かつての産地であるミカン園が荒れている。峯野さんのところも、裏山のミカン園が父親の老齢化によって荒廃している。この土地の再生を願って、将来的には環境保全型の繁殖経営を取入れたいということで、現在既に簡易畜舎と繁殖モト牛が用意されている。これは、川名さんと同じように、現在、東京で勉強している長男の希望で、長男の卒業を待って実現が進んでいくと思われる。

 経営成績をみると、年間460頭のモト牛育成牛販売である。主として6ヶ月強の育成だが、これで総所得2,171万円、もと牛1頭当りの所得が7.6万円。しかも、所得率が育成で23.5%という、すばらしい成績を残している。