肉用牛。それは、創意工夫と熱意の世界です。

日本が世界に誇る食材、「和牛」。これは、国内で生まれて飼育された4品種の肉用牛だけに使用が許された価値ある名称です。生産者はみな誇りをもって和牛を育て、出荷しています。
皆さんは、和牛をはじめとする肉用牛がどのように育てられているか、考えたことはありますか? その過程には生産者の方々のさまざまな飼養管理技術と創意工夫があり、愛情と熱意があふれています。
ここでは肉用牛生産の現場を紹介します。皆さんが「命を育み、つなぐ」ということへの関心を抱くきっかけになることを願っています。

公益社団法人 中央畜産会

【肉用牛生産の現場】命をはぐくみ、つなぐ仕事

本動画のガイドブックがPDFでご覧頂けます。

和牛肉が食卓に並ぶまで

和牛肉が出荷されるまでに必要な時間は、およそ2年半。
その間に数多くの飼養管理作業がありますが、次のように、3つのステージに分けることができます。

繁殖管理

雌牛に「新しい命」を宿らせる

肉用牛の生産は、飼育する雌牛の発情を見極めるところから始まります。発情の兆候がある牛には人工授精を行い、胎内に人の手を使って新しい命を宿らせます。どちらの作業も、専門的な知識と技術が欠かせません。
肉用牛の生産者は一般的に、子牛を産ませることを専門にする「繁殖経営」の農家と、子牛を買い付けて出荷できる状態になるまで育てる「肥育経営」の農家に分かれていますが、今回取材した牧舎みねむらでは両方を行う「一貫経営」に取り組んでいます。

宿った命を無事に産ませる

人工授精後は妊娠しているかどうかを確認する必要があります。牧舎みねむらのように繁殖・肥育の一貫経営をしている生産者の場合、妊娠してから出荷するまでの期間は約3年3か月。確実な収入を得るためにも、妊娠確認はとても重要なプロセスです。
妊娠を確認できたら、元気な子が産まれるように母牛を管理します。牛の妊娠期間は、和牛の約9割を占める黒毛和種の場合で約285日間です。そして分娩は繁殖管理における最大の山場。難産になると、人間が介助します。

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子牛育成

生まれたての子牛を元気に育てる

無事に生まれた子牛の哺乳・哺育は、分娩直後から始まります。生まれてからの3か月間が、牛の成長の上でとても大切な時期です。この間に大きな病気をすることもなく健康に育つことができれば、ほとんどの場合、問題なく次の「肥育段階」に移ることができると言われています。しかし、この時期の子牛はとてもデリケート。下痢を起こした時は速やかに処置するなど、万全な健康管理が必要です。
また、「耳標付け」はこの時期に必ず行うことが法律によって定められています。

健康に育て、肥育段階の下地をつくる

子牛の育成段階は、次のステップである「肥育」の下地づくりとしても重要。特に、飼料(餌)には気を配る必要があります。育成段階にあった内容の飼料を、質だけでなく量のバランスも考慮しながら与えることで、しっかりした消化器官が育ちます。
またこの段階では、前ページで紹介した「耳標付け」以外にも行うべきことがあります。「去勢」は安定した生産や肉質向上のために欠かせない処置ですが、場合によっては獣医師による助けが必要です。

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肥育管理

より良質な肉用牛を目指す

生後、哺育・育成が終わり、すくすくと育った子牛は「肥育」の段階に移ります。肥育とは、家畜の健康に留意しながら、肉量・肉質がよくなるように飼育すること。今回取材した牧舎みねむらでは、20か月未満の牛とそれ以上の牛で、牛舎を分けて管理しています。特に重要なのが、飼料(餌)の与え方。峯村さんは、成長度合いに応じて飼養環境や飼料を変えていくことで、自分たちが生産した肉用牛の付加価値を高める努力をしています。

美味しい牛肉となって食卓へ

しっかりした肥育管理のもとで育てられた牛たちは、肉付き具合などを観察した上で、最も味がよくなっていると思われるタイミングで出荷されます。出荷時期は品種や経営方針によっても大きく異なります。「信州プレミアム牛」を扱う牧舎みねむらでは28か月から30か月ですが、別のブランド牛ではそれぞれの肥育期間で出荷されます。
出荷された牛は、その品質に見合った適正価格で取引をするための「食肉格付」がされてから、私たちの食卓に届けられます。

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