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1 受賞後の変化(平成18年12月)
1)経営規模(飼養羽数)
受賞時点と大きな変化は無く、成鶏約11万羽程度の飼養羽数である。
2)施設投資等
新たにたい肥舎を2棟建設しており、現在、4棟のたい肥舎を整備している。今後、飼
養羽数を拡大する場合においても、鶏ふんの処理対策を万全にしてからという考え方に基
づいて、たい肥舎の整備を行っているとのことである。
3)代表者の変更
平成16年3月に代表取締役が、父から受賞当時専務であった栄宗氏に代わっている。
4)技術面
飼養管理方法など大きな変化は無い。ただし、従来の産卵成績を維持しつつ、産卵個数
の向上を併せて目指すこととしたとのことである。具体的には、産卵率を高く維持するこ
とであり、現在、160〜420日齢の間で全ロット90%以上の産卵率を実現している。特筆
すべきは、ピーク時では97%程度の産卵率を実現していることである。
鶏の飼養管理に際しては、従来以上に施設機械のメンテナンスに留意し、精密な飼養管
理に資している。なお、栄宗氏はこの経験をもとに、機械メーカーから機械のメンテナン
ス方法に関する講師を依頼されたとのことである。
2 経営移譲のポイント
平成13年度の大賞受賞当時、栄宗氏は専務取締役であり、父が代表取締役であったが、
実際の経営はすでに平成8年に経営全般を移譲されており、父は対外的な業務が主であっ
た。
ちなみに栄宗氏の経営参画過程を紹介すると、以下のとおり。
○石川県立農業短大卒業後2年間、飼料会社の研究所や大規模養鶏場で研修
○昭和63年 父親の経営する養鶏経営に参画
○平成元年 農場の生産管理全般を移譲される (主な生産管理の内容) ・衛生管理と生産性向上を重視し、ウインドウレス鶏舎を建設 ・パソコン活用による飼養管理等の分析 ・環境保全型経営を推進し、大型オゾン脱臭装置を導入 等
○平成8年 経営全般を移譲される
○平成9年以降 大型ウインドウレス鶏舎を建設 鶏ふん自動袋詰機を導入 衛生管理の徹底を図るための独自のマニュアルの作成
○平成13年 天皇杯、畜産大賞受賞 |
平成8年の経営移譲にあたっては、経営の方針決定等の経営運営にかかる業務のほか、
経営の財務についても完全に移譲されている。このため、現在では経営運営に関して父親
の関与はまったくといっていいほど無い。経営移譲の際には、親と子の業務委譲を以下に
スムーズに行うかが課題となるが、北栄産業では経営運営と財務を全て、一気に移譲した
ことがスムーズな代替わりに繋がったと栄宗氏は考えている。
このことは、他の畜産経営における経営移譲のあり方について参考となるといえる。
3 各種取り組みの背景〜本人談〜
1)経営継承のきっかけと環境重視型養鶏に取り組んだ理由
ハエがいっぱいいたり、悪臭がしたりということで、正直いいまして、畜産関係とい
うのは、本当に皆さんに嫌がられる商売である。私も正直、小学校のときに、やはり同
級生、友達と遊んだ際に、市村のところ行ったら臭いから遊びに行きたくないという経
験をよくしたものである。
そんななかで、父が一生懸命やっている養鶏の姿をみてきて、いずれは後継しなけれ
ばならないということを中学校の頃に思い、農業高校を選択、農業短大を出て就農した。
ただし、小さい頃の記憶、どちらかというとそういう3Kのイメージを完全になくし
た畜産経営、養鶏経営を目指そうということで環境対応型の経営に取り組んできた。
いまでは、農場に来られてもにおいが一切しないし、年間通じて鶏舎の中にハエはい
ない環境を実現している。どちらかというと、卵=畜産物ではなく、卵=食品という位
置づけ生産をしており、それを前提に安心・安全で高品質なものを消費者の方々に提供
している。
2)危害分析のためのマニュアル化のきっかけと効果
いち早く食品という感覚で取り組みたいということで、養鶏場に危害分析とかいろい
ろなことを組み合わせて入れることによって、少しでも安全なものを消費者に提供する
ということを考えてきた。
多くの養鶏農家では、鶏舎からの卵を洗浄してパック詰めするという鶏卵生産の後半
段階で危害分析とか、万が一あってはいけないという対応をしているのであるが、本経
営ではひよこを育てるときから、成鶏の飼育管理もすべてマニュアル化を行っており、
ポイントポイントについて、重要点をきちんと押さえている。それをすべて記帳してい
る。記帳は従業員またはパートがしっかりとやっている。
記帳は、正直、書くことばかりであるが、現場の方々が書きやすいよう、経営者側で
表のフォーマットを記帳しやすいよう作成してきた。
これにより、かえって飼養管理のレベルがかなり向上し、生産性も向上した。煩わし
いと思う部分ではあったが、違った面でのプラスというものが必ずマニュアルに基づく
記録記帳には出てくるはずである。
4 まとめ
衛生管理を徹底した生産性の向上と環境保全に留意した経営の展開という点では、受賞
時点ですでに確立していたといってよいが、その後、商品化率の向上を目指し産卵個数の
増加を目指すということで、新たな飼養管理のポイントを設定して高次の経営を確立しつ
つある。この背景には、経営主が長年にわたり培ってきた技術と経験があるといえよう。