活動・取り組み内容の調査報告書

 

中野市農業協同組合(マシーネンリンク事業)

                  
 本事例は、「マシーネンリンク(農作業受委託)事業による堆肥流通の促進および耕畜連携の支援 −農協における堆肥の流通および耕畜連携への支援−」というテーマで、平成14年度畜産大賞指導支援部門に出品された事例である。
 農協がマシーネンリング事業により作業受委託の仲介、調整を行い、畜産農家と耕種農家が作るそれぞれの組合・部会組織を結び付け、堆肥の散布作業とアスパラガスの定植を作業を一緒に行うことで、たい肥流通の効率化および労働力の軽減と機械投資額の削減を図っている事例である。


1.取り組みの概要   1)取り組みのきっかけ
 JA中野市では、昭和42年にアスパラ生産部会を設置するなど、アスパラガスの産地形成に力を入れてきた。アスパラガス栽培には多量のたい肥が必要となるため、耕種・畜産の生産者間で個別にたい肥供給が行われていたが、@高齢化と兼業化による労働力不足、Aアスパラガスの品質維持と向上に必要なたい肥の安定供給が課題となっていた。
 一方、畜産農家サイドでもふん尿処理とそれに伴うたい肥流通が課題となっていた。
 これらの課題に対処するためは、@労働力不足を解消するための大型機械の購入、Aたい肥の継続的流通体系の確立が必要となる。農協では、若手生産者をオペレーターとして活用した作業の受委託と、新規投資を抑え既存大型機械の効率的利用を図る取り組みとしてマシーネンリンク事業の取り組みを開始した。

 

2)取り組みの内容
 マシーネンリンクとは、ヨーロッパで行われている農作業受委託のことを指す。ヨーロッパでのこれは、委託者と受託者で脱退の自由な組織を作り仲介調整を行うマネージャーを雇い運営し、農協とは全くの別の組織である。
 JA中野市が行うマシーネンリンクは、農協職員がマネージャーとして管内農家からあがった作業要請の調整・取りまとめを行い、畜産農家の堆きゅう肥オペーレーター組合と耕種農家のアスパラ生産部会に所属する者に作業を依頼する。なお、作業に要する機械類は農家各自が所有しているものを利用している。

表 マシーネンリンク事業で行う農作業のメニュー
・堆肥の注文の取りまとめ
・堆肥販売の仲介、斡旋
・堆肥の散布
・畑の耕起、深耕
・マルチ
・苗の定植(アスパラガスを中心とした野菜)
・草刈り                 等 
※年中いつでも申込みができ、必要に応じメニューを選ぶこともできる

3)取り組みの成果
(1)この取り組みにより、耕種・畜産ともに大型機械の保有及び利用を効率的に行えるようになり、コスト低減が図られた。
(2)また、若手の生産者がオペレーターとして活躍することで、とくに耕種農家にあっては高齢・兼業化した農業者の労力不足を解消し、離農を防ぎ、地域農業の維持と産地形成に貢献している。
(3)畜産農家においては、堆肥の販売、流通の効率化がスムーズに図られている。

 

4)体制


 

 

2.最近の取り組み(活動の変化の内容とその背景) 取り組み体制・内容については推薦当時と大きな変化はない。ただし、この取り組みによる労働力不足の解消によって耕作放棄がくいとめられているという地域的な成果を農協担当者(マネージャー)は実感しているようだ。

 なお、平成10年頃からキノコ養殖の廃材(コーンコブ)をたい肥に代わる有機質肥料として利用する農家が現れ、平成13年度から本事業の利用が減少している状況にあったが、平成16年度に利用料金の見直しを行ったことで16、17年度は増加傾向に戻っている。

 また、まだ1割程度にとどまっているが、隣接地域からのたい肥散布希望も徐々に入るようになってきている。


図 マシーネンリンク事業の対象作業面積と取扱金額の推移


 

3.関連情報

 ・「マシーネンリンク(農作業受委託)事業による堆肥流通の促進および耕畜連携の支援−農協における堆肥の流通および耕畜連携への支援−」信州のちくさん広場:長野県畜産会)

 ・JA中野市ホームページ

 

(調査・報告者:龍谷大学教授 稲本志良)