◆HOME◆畜産大賞の概要◆平成13年度選賞事例一覧
|
|
旧農林水産省畜産試験場 体細胞クローン豚作出グループ 代表 大西 彰 岩元 正樹、秋田 富士、武田 久美子 美川 智、粟田 崇、花田 博文 体細胞クローン豚の作出技術の開発 |
体細胞クローン技術は、将来、優良家畜の増殖を可能にする画期的な技術である。また、胚の凍結保存技術が確立していない豚においては、育種、改良された系統(系統豚)の維持、さらには稀少品種の保存などにも広く応用できる。医学分野では、ヒト臓器移植における代替臓器としての利用も考えられており、体細胞クローン豚の開発が強く求められていた。 世界各国で体細胞クローン豚の開発にむけて研究が激化する中、当研究グループは、体細胞クローン豚の作出に成功し、その結果を世界で初めて Science誌に報告した(大西ら、2000)。当研究グループでは、従来の電気融合法ではなく、操作が容易で、今後、作出効率の向上が期待できるピエゾ式マイクロマニピュレーターを用いた顕微注入法によってクローン個体を作出した点に大きな意義がある。 体細胞クローン個体の作出にあたっては、まず、ホルモン投与により発情誘起した欧米種(白色のランドレース種)より未受精卵子を採取し、除核した。次に、中国種(黒色の梅山豚)の胎児由来の線維芽細胞核を、マイクロマニピュレーターを用いて除核卵子に注入した。核移植胚は活性化処理し、約2日間培養した後、仮親の卵管に移植した。110個の核移植胚を4頭の仮親に移植した結果、1頭が妊娠し、正常な黒色の子豚1頭が生まれた。誕生した子豚は、毛色およびDNA鑑定からクローンであることが確認された。この体細胞クローン豚は、順調に発育し、14頭の正常な産子を分娩した(岩元ら、2001)。その後、さらに複数頭の体細胞クローン豚を得ている。 本研究成果は、今後、畜産業の発展に大きく貢献するとともに、学術的にも発生工学分野の新たな展開を可能にするものとして高く評価されている。また、医学などの他分野においても、ヒトの代替臓器や有用物質生産を目的とした形質転換個体の開発研究の進展に大きく寄与するものと考えられる。 |
豚の体細胞核をピエゾ式マイクロマニピュレーターを用いて、除核した卵子に注入する。 | 培養後、2〜4細胞期に発育したクローン胚。これからの胚を仮親に移植する。 | |
作出に成功した豚体細胞クローン(Xena) |