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経営部門・畜産大賞



市村 栄宗さんご家族
  石川県羽咋郡押水町
 北栄産業有限会社 市村 栄宗
(養鶏経営)
衛生管理と生産性向上を追求する環境保全型養鶏
第40回農林水産祭天皇杯(畜産部門)
平成12年度全国優良畜産経営管理技術発表会最優秀賞
(主催:社団法人中央畜産会)

 市村氏は石川県立農業短大卒業後2年間、飼料会社の研究所や大規模養鶏場で研修を受け、昭和63年に父親の経営する養鶏経営に参画した。平成元年には農場の生産管理全般を移譲された後、衛生管理と生産性向上を重視し、ウインドレス鶏舎の建設、パソコン活用による飼養管理等の分析をはじめ、環境保全型経営を推進するため、大型オゾン脱臭装置の導入等を行った。その後、平成8年には経営全般も移譲され、9年には大型ウインドレス鶏舎の建設、鶏ふん自動袋詰機の導入、衛生管理の徹底を図るための独自のマニュアル作成を行い、今日の環境保全型養鶏を築きあげた。
 現在、飼養規模は11万羽、年間鶏卵生産量1,982トン、年間経常所得は72百万円と高い収益水準にある。市村氏の経営の評価すべき点をあげると、次のとおりである。
(1) 先端的施設・装置に独自の改良を加え、環境にやさしく、衛生管理を徹底し、しかも生産性が高い。ウインドレス鶏舎内の各所に小型カメラを設置して鶏舎内の様子や各種計器盤の作動状況を事務所や携帯電話によりチェックするシステムを導入。各ロットごとの産卵個数、死鶏管理、出荷・飼料仕入、鶏ふん出荷等すべてパソコンによる分析・管理ができるシステムを構築している。その他、鶏舎の温度調節のためのクーリングパットの設置や破卵防止装置も独自に工夫し、生産性向上に寄与している。
(2) 環境保全対策では、全鶏舎をウインドレス化し、悪臭、鳴き声、羽毛が出ないようにした。鶏ふん処理も発酵過程の悪臭除去のため、わが国初の大型オゾン脱臭装置を導入し、自ら整備、改良を行い、ほぼ完全に悪臭が除去された。さらに、除去率を高めるため自ら設計を行い、平成13年8月と12月に相次いで2号機、3号機を稼動させた。一方、農場内には手入れの行き届いた植木や花壇があり、常に消費者を意識した環境美化に努めている。
(3) HACCPの考え方をもとに、育雛から卵の出荷まで農場独自の徹底した衛生管理を実施。卵の安全性を確保し、消費者の信頼を得ることやサルモネラSEの事故に備え、ワクチン接種・消毒はもちろんのこと従業員の衛生教育、施設清掃、衣服・履物の消毒に至るまで総合的管理を行っている。また、従業員全員に飼養管理の徹底を図るため日常管理マニュアルを作成し、出入、飼料、給水、健康状態、温度管理、点灯管理等、多くのチェックをしており、社員が責任を持って仕事に取り組む体制を確立した。
(4) 量的には少ないが、消費者の信頼確保と経営のPRのため、特殊卵「田舎の卵」と「まじめなたまご」を生産・販売している。これは産卵日齢を210〜270日に限定した鶏に、海藻、パプリカ、アルファルファ等の天然原料とビタミンDやE等を強化した飼料を給与し、生産された2万個のうちの10%を厳選したものである。
(5) 鶏ふんは、ユーザーの希望を考慮して14種類20銘柄に分けて販売している。袋詰作業の労力軽減を図るため、自動選別袋詰機を導入した。製品はほぼ全量販売し、収入拡大に寄与している。
 以上のように、この経営は積極的に最先端技術を導入し、高度な自動化、省力化、合理化を行う一方、地域社会、地域環境にも配慮しながら、経営の向上を実践した優秀な事例である。


 
入雛直後のひよこ
育雛から成鶏まで、一貫した飼育管理により高い生産性を実現。
  成鶏舎内部
先端的施設に独自の改良を加え、効率的な生産管理を行うとともに、徹底的な衛生管理により卵の安全性を確保。
     
 
大型オゾン脱臭装置
自ら開発・改良したわが国初の大型オゾン脱臭装置。悪臭をほぼ完全に除去することに成功。
  環境美化に配慮した農場
鶏舎の周囲には、手入れの行き届いた植木や花壇があり、環境に充分配慮した農場として整備されている。