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指導支援部門・最優秀賞


  埼玉県熊谷市 
 埼玉県熊谷農業改良普及センター

(代表 加藤 英男)
耕畜連携による飼料イネ生産・利用の支援
−地域の水田と酪農を結合する−

  熊谷農業改良普及センター管内は埼玉県北部の利根川、荒川沿いに位置し2市6町1村からなっている。管内の耕地面積は14,300haで、その45%が水田である。主な経営類型は米麦、露地・施設野菜、花植木、畜産経営等で総粗生産額は561億円、これは県全体の25%の生産となっている。
 管内は酪農を中心に畜産経営が盛んであり管内農業粗生産額の25%を占めている。平成12年度における管内の酪農経営戸数は200戸、飼養頭数は8千頭であり、県内飼養頭数の37%を占め県下第1位となっている。
 自給飼料の生産は、円高傾向の定着化の中で輸入乾草へシフトし減少傾向となっている。普及センターでは平成元年、妻沼町善ヶ島地区の水田基盤整備をきっかけに夏期畑作物の水田導入が困難な地域を対象として飼料イネ集団栽培の導入を図った。耕種農家との数度にわたる話し合いの結果、水田所有農家全戸(60戸)参加による水田集団転作協議会が発足し、その取り組みが始まった。飼料イネの収穫・利用については妻沼町酪農振興会に呼びかけた。酪農家は当初その利用について難色を示したが、その飼料価値や水田利用の意義等を理解してもらいここに耕畜連携が始まった。
 普及センターでは、飼料イネ集団栽培による高位安定生産技術の組立や低コスト化対策、良質サイレージの長期保存(アンモニア処理)技術等の課題やブロックローテーションの組立、栽培・利用協定の締結等について、各年度ごとに普及指導計画を立て、当時の農業試験場や畜産試験場、専門技術員、町農政課、農協との一体的取り組みにより、継続した栽培とその利用を図ってきた。
 平成11年からは、新たに「飼料イネ研究プロジェクトチーム」を発足させ専門技術員を中心に普及センター、農林総合研究センターの担当職員の連携を強化し、妻沼町と隣接する熊谷市について普及推進を展開している。これらの活動を通じ、平成10年の栽培面積10.5haに対し平成13年度は45haの作付けへと拡大した。
 普及センターを核とした支援体制ができたことで水田高度利用や良質粗飼料の確保、給与効果の実証、耕畜連携による水田と酪農が結合する地域農業の確立が図られ、この推進方法がプロトタイプとなり他地域への波及が進んでいる。

 
新技術「ロングマット育苗苗移植」の確立
生産性を高めるため新技術開発・導入が行われている。
  刈り取り作業実演検討会
検討会等を重ねることにより、米麦作農家・酪農家・関係機関等の連携が深まる。
     
 
妻沼町におけるアンモニア処理
アンモニア処理により飼料イネの貯蔵の安全性と品質の向上を図っている。
  飼料イネサイレ−ジをおいしく食べる牛
長期に保存されたサイレージにもカビの発生はなく、問題なく給与できる。また、夏場でも採食性は落ちない。