特産地鶏の生産振興と付加価値商品づくりによる地域農業の活性化
−秋田比内地鶏の生産・加工販売の取組み−
佐藤修助
◎最優秀賞 最優秀賞:地域振興部門 あきた北央農業協同組合
|
業績発表する代表の佐藤修助さん
秋田県北部の大館市・北秋田郡を中心に飼われてきた比内鶏は、その肉、だしのうまみから、秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」の食材には欠かせないものとして、古くから県民に食されてきた。県では、比内鶏が国の天然記念物に指定された後、県畜産試験場において、交雑試験、飼養試験を繰返し、比内鶏のうまみを引継いだ、産肉性に優れた交雑鶏「秋田比内地鶏」を作出し、県の特産品としてその普及を図ってきた。
米価値下げ、減反対策の強化等を機に、農業経営の多角化、複合経営化を進め、それぞれの地域において、転作作物の生産が奨励される中で、本事例は、農家の複合経営作目として、比内地鶏の飼養を取入れ、農家所得の向上を図ってきた。また、比内地鶏の生産振興から付加価値商品の開発、加工、販売に至る一連の活動を通し、農家経営の安定と地域農業の活性化に大きく貢献し、県内外からの比内地鶏に対する評価を高め、秋田県における比内地鶏生産拠点としての地位を確立してきた。
あきた北央農業協同組合は平成11年4月、県北部の隣接する4町村(合川町、森吉町、上小阿仁村、阿仁町)の農協の広域合併により誕生した。現在の当農協における取組みは、昭和62年、合併農協のひとつである旧合川町農業協同組合において始められ、生産農家からなる「比内地鶏振興部会」の設置、飼養管理技術の確立、販売ルートの開拓、さまざまな比内地鶏関連商品の開発等が進められてきた。
この間、県畜産試験場、農業改良普及センターとの連携協力のもと、現地での実証試験等を繰返し、これら試験結果や比内地鶏振興部会員相互の情報交換から得られた有益情報をもとに、農協独自の比内地鶏飼育マニュアルを作成し、飼養農家を指導してきた。
また、農協と関係町村が協力し、簡易鶏舎用資材(パイプハウス)を無償で貸与するなど、比内地鶏の振興に力を入れてきたことにより、新たに比内地鶏の飼養に取組もうとする農家のほか、新規就農者も加わり、年々飼養羽数を伸ばしてきている。
当農協では、農家で飼育された比内地鶏を品質に応じた一定価格で買取り、肉製品のほか、鶏ガラスープを始め各種加工品の製造・販売を行っている。農家に対する技術指導、肉その他製品の処理加工、付加価値商品の開発および販売ルートの開拓等、比内地鶏に関する一連の活動は、当農協の広域加工センターと3名の専任職員が中心となって進めている。
比内地鶏の飼養羽数が年々増加し、これに伴い処理加工施設も拡充が図られ、更にこれによって新たな雇用が生まれるなど、地域経済に対する効果もあらわれてきている。
長年にわたり比内地鶏の品質を高位に維持し、安定的な生産供給を行うことによって、販売店および消費者から得た高い評価を活かし、これまで独自に開拓してきた比内地鶏の販売ルートを通して、地元農産物の販売を行い、比内地鶏のみならず、その他農産物の販売促進にも効果をあげてきている。
あきた北央農協比内地鶏振興部会のメンバー
あきた北央農業協同組合は、秋田県内陸北部・北秋田郡内の合川町、森吉町、上小阿仁村、阿仁町の4町村にまたがる。当町村は周辺部を山に囲まれ、冬期間雪の多い本県の中でも、特に積雪の多い地域であり、「マタギの里」としても知られている。
管内の農家戸数は約2400戸、経営耕地面積3230haのうち2700haを水田が占めている。農業粗生産額では、米が全体の53.3%、次いで畜産22.2%、野菜13.4%などとなっている。
畜産農家戸数は109戸(乳用牛14戸、肉用牛65戸、豚2戸、採卵鶏3戸、比内地鶏25戸)で、飼養頭数は乳用牛878頭(県全体の11.5%)、肉用牛(熊本系褐毛和種主体)479頭(同1.8%)、豚2210頭(同0.9%)、採卵鶏16万羽(同12.7%)となっている。県全体で出荷される比内地鶏25万羽の約20%を当地域が占めている。
(1) 活動開始の目的と背景
米価の値下げ、減反政策の強化を機に、これまで稲作が主体であった当地域の農家も、所得の維持向上のために、米に代わる新たな転換作物を経営に取入れる必要に迫られるようになった。
当管内においては、畑作物としてトマト、キュウリ、トウモロコシ、キャベツ等の栽培に力を入れる一方で、周辺のほかの地域で、じょじょに取組まれるようになってきた比内地鶏を農家経営に活かそうと、比内地鶏の飼養が開始された。
比内鶏は、古くから当地域を含む県北部を中心に飼われてきた地鶏で、秋田県の郷土料理「きりたんぽ鍋」には欠かせない食材として利用されてきた。
昭和17年に、国の天然記念物に指定され、現在も、保存会を中心として保存活動が行われているところである。県では、比内鶏を肉質改善の素材として、比内鶏よりも肉量が多くておいしい肉用鶏を作るための試験研究を県畜産試験場において開始、昭和48年から保存会より種卵を導入し原種鶏を生産維持、食用に供するための試験を重ね、雄系に比内鶏、雌系にロードアイランドレッド種をかけ合わせた「秋田比内地鶏」を作出、昭和53年から生産者へのモトビナの供給を開始し、普及を図ってきた。
こうしてモトビナ供給の体制が整えられたこと、また比内地鶏を特産品として定着させ、農家の安定した収入源とするとともに地域の活性化に結びつけたいとする関係者の思いが比内鶏振興につながっている。
当管内での比内地鶏の飼養は、パイプハウスを利用した簡易な施設で、転作牧草地などを有効に活用した、平飼いが行われている。このように、初期投資が他の畜産とは異なり、少なくて済むことや、比内鶏が地元になじみの深いものであったことが、農家の参入を容易にした要因の1つと考えられる。
当初は、秋から冬にかけて、きりたんぽ用として県内市場向けの出荷が中心であったが、生産農家に対し安定したより多くの利益還元を行うために、付加価値をつけた加工品の生産にも取組んだ。
今日、比内地鶏は、薩摩鶏、名古屋コーチンなどと並ぶ日本3大美味鶏の1つとして高い評価を得るに至り、県外での1年を通した需要にも対応すべく周年出荷体制へと切替えが進められている。
(2) 活動の位置づけ
農業情勢の変化とともに、若者の農業離れ、農村の過疎高齢化が進み、稲作主体の農業経営から複合経営への転換が求められるなど、地域農業の進路もさまざまな選択を迫られてきた。
あきた北央農業協同組合では、地域の新たな農業活性化の手段として比内地鶏を農家の複合作目として取入れ、所得の向上を図り、更に付加価値商品を開発販売し、他の産地とは異なる特徴ある生産方式をとることにより差別化を進めて、比内地鶏の産地としての地位を確立し、加えて、比内地鶏の知名度を全国に高めたことにも大きく貢献してきた。
比内地鶏の飼養は、設備投資に多くの資金を必要としないことのほか、労力的に高齢者でも可能であること、またマニュアル化された飼養管理技術と、それに基づいた初心者にもわかり易い指導が行われていることなどが、新規参入者、就農者を生み出している。
比内地鶏を使った商品を製造することにより、加工部門での新たな雇用が発生していることや、独自に開拓してきた比内地鶏の販売ルートを活用して地域で作られる農産物や加工品を販売し、その売上を伸ばすなど地域農業の活性化や経済効果にもつながっている。
消費者の求める味のよさ、安全性を追求し、産地としての信頼を獲得し、それを守り発展させていこうとする比内地鶏に携わる人たちの意識が、地域農業全体に浸透し、活力を与えている。
(3) 活動の実施体制(別図)
[1]あきた北央農協広域加工センター
比内地鶏振興部会の事務局を受持ち、比内地鶏に関する生産技術指導、食肉処理加工、商品開発、営業活動、販売流通等、一連の活動の拠点となっている。
昭和63年、構造改善事業により比内地鶏処理施設を建設、その後関連商品製造のための機械、施設の整備を行ってきた。平成11年の広域合併後、職員3名を比内地鶏関連事業の専任とし、事業を展開している。
[2]あきた北央農協比内地鶏振興部会
比内地鶏生産農家で組織され、平成13年度部会員は27名となっている。生産者が自分たちで厳しい罰則を含む規約をつくり、独自の飼養マニュアルに従い、比内地鶏産地の誇りもって、質の高い比内地鶏の生産に取組んでいる。
[3]県畜産試験場、北秋田農業改良普及センター、北部家畜保健衛生所
秋田県は、県特産の比内鶏を農業振興に活かすため、県畜産試験場において比内地鶏を作出、飼養試験を繰返し、飼養管理技術の確立を進めてきた。
更に、地域を管轄する農業改良普及センターおよび家畜保健衛生所による農家への技術普及、衛生指導等を進め、定着を図ってきた。
また、比内地鶏振興のため、平飼い施設に対する助成事業(県農村高齢者生きがい対策事業、昭和56年〜60年)、生産拡大施設に対しての助成事業(秋田比内地鶏生産振興対策事業、平成3年)、簡易鶏舎設置に対する助成事業(あなたと地域の農業夢プラン応援事業=地域特産品目産地化対策事業、平成12年)等を実施してきている。
[4]秋田県農業公社比内地鶏センター
比内地鶏需要の増加により、モトビナ生産体制の強化が要望され、秋田県種苗センター比内地鶏ふ化場(現秋田県農業公社比内地鶏センター)が新設され、平成4年から県畜産試験場に代わり民間のふ化場とともにモトビナの生産業務を開始した。更なる需要の増加に対応し、平成12年度において、施設増築によりモトビナ供給体制の強化を図っている。
(4) 具体的な活動の内容と成果
パイプハウスの鶏舎と放飼いされている比内地鶏
当地域周辺の市町村、中でも秋田県大館市、比内町は、同じく県内有数の比内地鶏生産地域であり、当地域に先駆けて比内地鶏の生産に取組んできている。
当地域は、そうした他地域での取組みに遅れての参入であったため、いかにして生産を軌道に乗せ市場参入し、比内地鶏の産地として認知され生き残っていくか、そして農家所得の向上をいかにして実現していくかが課題であった。
[1]生産基盤の確立
比内地鶏による地域振興活動は、特色ある質の高い比内地鶏の生産を通して、産地としての地位を築きあげてきた生産農家の取組みが重要なものとなっている。
農協は、農家から比内地鶏を買取る際、その品質に応じ、質の高いものは高い価格で買上げることにより生産意欲の向上を図っている。
一方、農家が組織する比内地鶏振興部会では、高品質生産を維持するために、次のような取組みを実施している。
ア 飼育マニュアルに従い、統一した飼育管理を行い、品質の維持向上に努めている。品質が悪いものを生産した場合や決められた飼養方法に従わない場合には、ペナルティを科すことを、会員ら自らが部会規約に定め取組んでいる。
イ 2ヵ月ごとに全鶏舎を巡回し、互いの良い点を参考に、悪い点は指摘しあいながら改善を行っている。また、有益と思われる情報はすべて公開し、会員全体の技術レベルの向上を図っている。
ウ 他県の地鶏産地の現場を視察し、先進的な取組みを学ぶための研修活動を実施している。
エ 自分たちの生産したものがどのように販売され、消費者のもとに届けられているかを確認し、また消費者の生の声を聞き生産活動に役立てるために関東方面を中心に年4、5回、店頭に立っての宣伝販売活動を行っている。消費者の声は、生産の励みとなっている。
このようにして、質の高い地鶏を生産しようとする生産農家の共通した意識に支えられ生産基盤がつくられてきた。
これまでの活動が評価されてきたことにより、比内地鶏経営に取組もうとする新規就農者があらわれ、また農協の広域合併後は、旧合川町農業協同組合以外の町村からの新規参入者も加わるなど面的な広がりもみせている。
[2]独自の飼育マニュアルと飼育管理の特徴
当地域に先駆けて比内地鶏の飼養に取組んでいた地域もあり、これを参考に飼養管理について、詳細なマニュアルをつくることにより、当地域で生産される比内地鶏を特徴づけ差別化を図ってきた。
県畜産試験場での試験結果および農協・比内地鶏振興部会での独自の飼養試験結果をもとに、鶏舎の建て方、飼養密度、飼料配合など、飼育管理に関するさまざまな事項を盛込んだマニュアルを作成した。
当マニュアルにより、品質の安定が図られ、新規に取組もうとする者の参入が容易にできるようになり、また経営を早期に軌道に乗せることが可能となった。
農協と町村が協力しパイプハウス資材を無償で農家に貸与し、簡易鶏舎としてパイプハウスを普及定着させ、更に休耕田等を利用した放飼いによる自然に近い形の飼養方式を組合わせ、味、安全性にこだわった、ストレスを与えない健康的な地鶏の生産を進めている。
[3]販路の開拓
当初は、きりたんぽ需要期にあわせた県内出荷が中心であったが、県全体での飼養羽数が増加したことで、需給バランスの不均衡による値崩れが懸念される状況となったため、消費の伸びが期待される首都圏をターゲットに販売を展開することとなった。
しかし、米や野菜と異なり、比内地鶏に関しては、販売ルートをもっていなかったため、販路開拓は1からのスタートとなった。
農協職員がスーパー等を個別に訪問、幾度も粘り強く足を運び、売込みを行った。情報に乏しく、不慣れな営業活動のため、取扱店の獲得は困難を極めた。
当初は、「比内鶏」の名前は知っていても、実態はあまり知られておらず、飼育方法、加工方法等について詳しく説明しながら、味のうまさ、安全性を強くアピールしながら営業活動を行った。
農家の比内地鶏にかける熱意をどうしても消費者に届けたいという思いで、懸命な営業を展開し、じょじょに取引先を増やし、現在、取引スーパー、飲食店等の店舗数は、630店舗を数え、また宅配等を利用する顧客も、年間2万人を超える数となっている。
[4]付加価値商品の開発
農家から買取る比内地鶏の価格は、農協が決定している。農協では、比内地鶏だけの販売では農家に対してじゅうぶんな利益の還元が行えないとして、比内地鶏を利用した付加価値の高い商品作りに取組んできた。こうした商品の販売は年々伸びており、農家からの比内地鶏買取り価格の高値安定につながっている。
[5]周年生産体制への移行
県内外とも比内地鶏は、鍋物以外にも焼き鳥などとしての需要が増えている。これまでの季節的需要から、1年を通した需要に対応し得る生産に向け、飼養技術確立のための飼養試験の実施を県に要望し実現させた。
冬期間、降雪量が多い寒冷地で、1年を通して質の高い比内地鶏生産をいかに行うかが課題であった。県畜産試験場と協力し飼養試験を行い、冬期間も放飼いをしながら飼養する、当地域の飼養方式にあった飼養方法が実用化され、その結果、周年飼養、周年出荷が実現し出荷羽数の増加につながった。
[6]地域の農業、経済に対する効果
比内地鶏の振興により、生産農家の所得向上に効果をもたらしたことはもちろんであるが、その他、比内地鶏の販売ルートを利用した他の農産物・加工品の販売を行い、売上を伸ばしているといった効果もみられる。
長年にわたり比内地鶏を通して培った取引先との信頼関係を背景に、比内地鶏以外の農産物等の有利販売が行われている。
また、商品の1つにきりたんぽセットがあるが、販売量の増加とともにきりたんぽの需要が増えたことにより、農家では、庭先に衛生的なきりたんぽ製造施設を建て、農閑期の11月から3月にかけて製造を行って、新たな収入源とする例もみられるようになった。
更には、比内地鶏の処理・加工に携わる人たちの雇用も増え、1日平均40人の雇用が生まれるなど、経済的な効果もあらわれてきた。
|
|
取引先スーパー店頭でのPR販売。生産者も店頭に立って、秋田弁で商品説明をし、懸命にPRに努めている
|
「きりたんぽセット」用のきりたんぽ作り。米の消費拡大、農家収入の向上に寄与している。
|
比内地鶏に関しては、長年にわたる改良、飼養試験により、冬期寒冷多雪地帯でも1年を通じ飼養できること、パイプハウスを利用した簡易鶏舎等を利用することにより、設備投資および飼養コストが安く抑えられることなど、農家にとって取組みやすい条件が整ってきている点で、普及の可能性が高いといえる。
また、今後更に高齢化の進むことが予想される農村地帯においても、労力的にも無理がないことなども、長期に取組むことのできる部門として期待できると考えられる。
一方、生産振興とあわせ、安定した需要の確保を図る上で、生産物の品質の維持が重要な課題となる。
こうした意味で、当取組みの中では、特に生産農家で組織する部会の果たす役割が大きなものとなっている。
このため、当部会では、取引先および消費者からの絶対的信頼が得られるよう一定の品質規格を維持し、安定した生産供給を図るため飼養マニュアルの厳守、違反した場合には厳しいペナルティを定めた部会規約のもとに生産が行われている。このことからもいえるように、生産者1人1人が各自の生産したものに責任をもち、絶対の自信をもって消費者に届けようとする共通した認識をもって生産に取組んでいる。
生産者のこうした意識が、あらゆる農産物の生産に携わる人々にとって、重要かつ必要なものと考えられる。
他県の多くの地鶏が、雌雄ともに有効に利用されているのに対し、比内地鶏は雌が中心となっている。
比内地鶏は、鍋物以外に飲食店での焼き鳥などの需要も伸びており、現在、県畜産試験場では、雄を有効利用するための飼養試験が行われ、実用化の段階にきている。
今後、雄が有効に利用されることにより、比内地鶏全体の出荷羽数の増加が見込まれ、飲食店などに対してより求めやすい価格での供給が可能になること、生産現場においては、飼育期間の短縮により生産コストの引下げが可能となることなど、効果が期待されている。
比内地鶏は、農家の安定した複合作目として所得の向上に効果をあげていることから、今後、地域でも一層進むことが予想される高齢化にも対応し得る作目として、畜産農家の空き畜舎なども有効に利用しながら普及を図っていきたいと考えている。
秋田県としても、全国的に高い評価を得ている秋田比内地鶏の生産振興を図り、更に期待される需要の伸びに対応すべく、生産基盤の強化に取組んでいる。
平成12年度には、経営の複合化による農業所得の確保・向上のため、「あなたと地域の農業夢プラン応援事業」を実施し、簡易鶏舎設置のための助成を行って、生産拡大のための支援措置を行ったほか、現在(社)秋田県農業公社と民間業者の2元体制で供給を行っている比内地鶏のモトビナ供給体制を強化拡充するためのモトビナ供給施設の増設等、整備も行われた。
今後、秋田県としては地鶏肉特定JASを視野に入れ、付加価値の高い、差別化された商品として、よりいっそう多くの消費者の方々に受け入れられるよう認定に向け取組んでいきたいとしている。
当管内では、地元で生産された牛乳を利用したブランド牛乳や、牛肉を使った加工品なども生産されており、農協では、こうした畜産物のほか地元特産品ともあわせ、消費者に安心して食べてもらえる農産物の生産と、生産農家の思いが伝わるような商品作り、販売展開を進めていきたいと考えている。
(秋田県北秋田総合農林事務所 普及課長)
古くから県北部地域では、自分の庭先で飼育した鶏を調理し、「きりたんぽ鍋」を食してもらうことが最高のもてなしだった。その鶏が、昭和17年に国の天然記念物の指定を受けた比内鶏である。
日本3大美味鶏とうたわれながらも、その産肉性の低さから畜産経営の1部門となるまでは容易ではなく、地域における需要も新米ができる秋から冬にかけての「きりたんぽ鍋」に限られるため季節生産がその主流となっていた。
地元需要だけでは季節変動が大きいことから、生産者とJA、行政が一体となった販売促進活動を行い、首都圏を中心に新たな需要を掘起こし、同時に加工センターを中心に加工品開発に着手し、比内地鶏という地域資源の高付加価値化によって消費の裾野を広げる活動を続けてきた。
新たな需要はそれまでの「きりたんぽ鍋」一辺倒だった比内地鶏生産を大きく変化させ、冬期飼養を取入れた周年出荷を実現している。
「農家の手に1円でも多く残したい」という思いを実現すべく、生産拡大を図る一方で加工品を開発し、生産組織の強化を図るとともに販売チャンネルの多角化を実現し、現在では取引先が数百社を越えていることは、JAあきた北央の取組みが評価された結果といえる。
昨年は、農外からの新規参入者2名も新たな生産者として加わっている。
経営が不安定になりがちな新規参入者においても確実な収入が得られており、農業経営の安定に寄与している。
これは地域における指導体制の確立と生産現場における飼育マニュアルの徹底により技術的にも安定しているものと評価できる。
比内地鶏という地域資源に恵まれたことを活用して、農家所得の増加を目指すとともに秋田のもてなしの心を伝えるこの活動を今後とも支援していきたい。
発表会資料はこちらでご覧いただけます→ |