1.家畜・家禽のサルモネラ症は、生産性低下や死亡等による被害が著しいのみならず、これら感染動物由来のサルモネラ汚染畜産物が人の食中毒の原因となるため公衆衛生上からもその防除が重視されている。我々はわが国の家畜・家禽におけるサルモネラ症の発生・伝播状況に関する疫学調査から動物の輸入や移動に対する防疫の重要性を指摘した(J.Cli.Microbiol.23:360-365,1986)。また、サルモネラ伝播源となる飼料のサルモネラ培養検査法として、燐酸緩衡ペプトン水による前増菌培養法の優れていることを確認した。この方法は1977年の飼料安全法の施行に伴うサルモネラ検査の公定法とされた。さらに国産初のDNAプローブ法による簡易迅速サルモネラ検査キット(核酸キット・サルモネラ)を開発・実用化した(Jpn.J.Food
Microbiol.15:47-53,1998)。一方、サルモネラ感染防除対策として成鶏の正常盲腸細菌叢の培養物(CEテクト)を開発・実用化し、本製品の投与により初生ひなの腸管におけるサルモネラ定着・増殖阻止と腸管の免疫細胞の増加効果を確認した(鶏病研報、34:252-257,1999)。
2.家畜・家禽のマイコプラズマ症は、慢性の呼吸器障害(肺炎、気嚢炎など)による増体あるいは産卵の低下、飼料効率の低下などが大きな生産性阻害要因となるので、その防除が重視されている。我々は、わが国における鶏のマイコプラズマ・ガリセプチカム(MG)およびマイコプラズマ・シノビエ(MS)による鶏の呼吸器感染症を初めて確認し(Natl.Inst.Anim.Hlth
Q.4:68-76,1964)、これらマイコプラズマと他の病原体の複合感染あるいは飼育環境の影響などによる本性の発症機序を解明し、防除対策を提唱した。また、MGおよびMS急速凝集反応用診断液を開発し、血清診断法を実用化した(Sci.Tech.Rev.51:15555-1567,1996)。一方、豚マイコプラズマの肺炎の血清学的診断法としてモノクロナル抗体を利用したELISAおよび補体結合反応を実用化し、わが国の屠場出荷豚の88%が抗体陽性で58%が肺炎を有することを明らかにした。(Isr.J.Med.Sci.23:657-662,1987)。さらに豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチン(マイコバスター)を開発し、野外応用により顕著な肺炎発生の予防効果ならびに生産性向上を確認した。(J.Vet.Med.Sci.61:1131-1135,1999)。 |