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○地域の家畜衛生業務の企画調整 ○家畜の伝染性疫病の予察・予防、駆除・清浄化・撲滅、蔓延防止 ・オウシマダニ駆除・清浄化・撲滅対策 ・オウシマダニが媒介する法定伝染病バベシア病 ・風土病・沖縄糸状虫病の清浄化対策 ○畜舎・牧野衛生 ○家畜の繁殖障害の改善 |
○畜産経営の改善及び指導普及事業 ○優良家畜の増殖普及、人工授精の精液払い受け及び指導督励 ○牧野及び草地改良の指導、施設・草地開発の実施計画策定指導 ・団体営草地開発事業 ・里山等利用促進事業 ・畜産基地建設事業(スタビライザー工法) ○畜産経営環境保全 ○畜産及び畜産物の流通・価格の調査指導 |
1) | 牧野ダニの被害 |
牧野ダニ(オウシマダニ)が媒介する法定伝染病であるバベシア病やダニの吸血等により大きな被害損耗を被っていた。 昭和46年度から本格的な牧野ダニ対策事業がスタートしダニ駆除、清浄化、撲滅事業を継続実施してきた。 牧野ダニ清浄維持事業によって平成5年2月以降のバベシア病の発生がなく、また平成5年度以降はバベシア病原虫の確認がされず、さらには平成6年度以降は草地ダニ及び牛体ダニも確認されていない。 それによって、平成11年4月から牛の移動制限が解除された。 |
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2) | 牧養力の向上 |
昭和51年度から始まった公団営による畜産基地建設事業の導入によって末利用、低利用地が草地造成された。 平成9年度までの造成面積(スタビ工法も含む)は1,337ha、参加農家133戸、事業費は229億9,518万円が投じられた。 これによって牧草地の粗飼料生産量が著しく増大し畜産施設の活用と管理技術の普及によって飼養頭数が増加し、牧野ダニの撲滅と相まって着実に牧養力の増大が図られてきた。 |
戸数 | 頭数 | 1戸当り頭数 | |
石垣市 竹富町 与那国町 |
637 222 102 |
27,378 6,528 2,234 |
43 29 2 |
八重山計 | 961 | 36,140 | 38 |
県計 | 3,523 | 78,660 | 22 |
1) | 指導支援の開始 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
八重山地域の肉用牛は、自然草地を主体にした周年放牧で省力的、粗放的な管理がなされていた。しかし、肉用牛生産拡大のためには、旧態依然たる粗牧的な経営では限界があり、草地基盤の整備拡大、農業用施設更には農機具の整備等が要望されていた。 そのような背景から自給飼料生産によるコスト低減と農家所得拡大を図るため、飼料生産基盤の整備を推進しているところである。 その主なものは、公団営畜産基地事業(昭和51〜平成4年度)、団体営草地開発整備事業(昭和47年度〜)、農業公社牧場設置事業(昭和50〜平成5年度)、公社育成牧場整備事業(昭和47〜56年度)等である。 また、平成5年度より畜産基盤再編総合整備事業を実施しているところであり、今後は未墾地、遊休地等の造成改良、生産性の低い草地等の整備改良等を推進し飼料生産基盤の拡大整備を図る計画である。 |
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図-1 八重山第一区域畜産基地建設事業位置図 |
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表-2 草地開発・基盤整備事業実績 |
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肉用牛の改良に関しては、先進県からの計画的な優良種畜の導入、人工授精普及推進事業、計画交配事業及び肉用牛群改良基地育成事業等を推進しているところである。 流通に関しては、家畜市場及び食肉センターの整備を実施した。 経営面においては、地域環境との調和に十分配慮し、耕種との結合を深め、急激な畜産情勢に対応できる競争力の高い経営体を育成するため畜産経営技術高度化促進事業による指導を強化しているところである。 牧野ダニ対策としては昭和46年度から昭和52年度まで「石垣島牧野ダニ駆除事業」及び「沖縄牧野ダニ駆除促進事業」により薬剤の空中散布及び地上散布による草地ダニ駆除並びに牛体薬浴による牛体ダニ駆除の両面作戦によって一定の効果を上げた。 昭和53年度から沖縄牧野ダニ清浄化対策事業を継続し全体的に殺ダニ効果を上げ、特に昭和61年度から離島の黒島をダニ撲滅重点指導牧野と位置づけて、ダニ撲滅の原則である「一頭もれなく」を合い言葉にダニ駆除を実施し、平成2年に黒島において八重山地域では初めてオウシマダニ撲滅を達成した。 平成3年度からの「沖縄牧野ダニ撲滅対策事業」まで継続して、竹富島、小浜島、鳩間島、波照間島、西表島並びに与那国島の1つ1つの島を段階的にダニ撲滅重点指導地区に設定して事業を推進した。 八重山地域の牛総飼養頭数の70%をしめる16,000頭を飼養し、周年放牧や繋牧等の飼養形態及び地形的にもダニ駆除が困難であると考えられた石垣島のダニ撲滅対策事業を平成4年10月から「一島一牧場」の理論で全島一斉に実施し平成7年に清浄化、平成8年度から開始された「沖縄牧野ダニ清浄維持対策事業」において、平成8年にオウシマダニの撲滅が確認された。 現在は、平成11年度終了予定で最終段階の牧野ダニ清浄維持対策事業を実施しているところである。 |
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表−3 沖縄県下におけるオウシマダニ撲滅達成状況
ダニが全く確認出来ない状態を撲滅達成とした。 |
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図−2 オウシマダニ撲滅の経緯 |
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2) | 指導支援の位置づけ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
古くからのダニとの闘いの中で、春から秋までの期間はダニの発生に伴うバベシア病のまん延によりへい死牛が増加、生産子牛もダニ吸血に起因した栄養失調等により育成率が50〜60%程度であった。また、大部分の離乳子牛も削痩を呈し発育不良で、死亡率も高く、子牛の価格も低かった。 牧野ダニ駆除事業の推進により、平成元年頃から急激にダニの個体数が減少したため、バベシア病やダニ吸血による被害も減少し、生産率、育成率の上昇に伴い、畜産農家のダニ撲滅への一層の意欲と期待が盛り上がり、撲滅へとつながった。 このダニの撲滅、ダニが媒介する伝染病等の克服によって、これらに係る畜産農家の労働が大きく節約されたこと、また、牧野・草地改良によって牧養力がヘクタール当たり1頭から3頭近くまで増大したことによって肉用牛経営の規模拡大が可能になり、着実にそれが進んだ。 また、ダニ撲滅、伝染病等の克服、より良質な牧草飼料の生産によって、健全な繁殖牛の確保、健全・良質の子牛生産が可能になり、子牛の価格が上昇してきたことによっても経営規模の拡大が進み、農家の所得も向上した。 以上のことは、既存の肉用牛経営の規模拡大、それに加えて、他作物からの肉用牛への転換、離島他産業従事者の帰島による肉用牛経営の増加、高齢農業者の意欲の向上と作業条件の改善による肉用牛経営の長期継続を可能にし、当地域の肉用牛生産振興、地域の活性化に重要な貢献をはたしている。 |
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(1) | 生産率、育成率の向上について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3) | 指導支援の実施体制 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
八重山地域の畜産振興推進に関しては地域指導体制のとおり、家保振興課を中心として、県畜産課、農業改良普及センター、畜産会、市町及び農協等の関係機関と連携した飼料基盤整備事業、肉用牛改良推進、流通及び経営指導等の対策・指導を実施している。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
図−3 畜産関係機関の地域指導体制 |
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また、家畜防疫衛生業務は家保防疫衛生課を中心として家畜伝染病予防事業、家畜衛生技術指導事業、牧野ダニ対策事業及び家畜衛生に関する普及啓蒙を実施している。 沖縄牧野ダニ対策事業は国、県、市町等生産農家の一体となった長年の粘り強い努力によって実現した成功事例であり、オウシマダニ撲滅は世界的にも例を見ない成果である。 八重山地域における当該事業の推進においては、県家畜衛生試験場の技術支援の下に八重山家畜保健衛生所を核として、石垣市、竹富町、与那国町を主体に農業協同組合、和牛改良組合、肉用牛生産組合、牧野組合、家畜診療所、農業共済組合、農業改良普及所及び他家畜保健衛生所等、畜産関係機関を網羅した組織体制により着々と実施された。 その協力体制に基づいて国、県としては牧野ダニ駆除指導及び草地ダニ、牛体付着ダニ調査、牛採血によるバベシア原虫、住血微生物等の精密検査を年間を通して確実に実施してきた。 |
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表−4 石垣島におけるダニ駆除実施体制(衛生検査及びダニ駆除確認体制) 1班は原則として3名体制とする。 1日6班を構成し各班にかならず家畜防疫員(獣医師)を入れる。 採血検査を実施する時は各班に獣医師を1名ずつ加え計4名で行う。 |
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図−4 沖縄県牧野ダニ清浄化対策事業(関係機関との連帯体制) |
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飼料基盤の整備に関しては、国、県畜産課、農業開発公社及び市町と連携の上、諸事業を推進しているところである。 また、家保に暖地型牧草種苗圃を設置して、畜産農家に対して直接牧草の種苗・種子を払い下げ、自給飼料の生産拡大を支援しているところである。 草種としてはジャイアントスターグラス、パンゴラグラス.(A−24.トランスバーラ)の種苗とナツユタカの種子を有償で払い下げている。 図−5 事業実施フロー図 |
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4) | 具体的な支援指導の内容と成果 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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5) | 支援指導の活動の年次別推移 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
支援指導活動の主な内容や取り組み成果を簡略にまとめると表−10のとおりである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表−10 支援指導の活動の年次別推移 |
1) | 八重山地域内でダニ撲滅に向けた重点地域を定め、順次、その重点地域を移して全地域においてその目標を達成してきた。この過程で、最初の重点地域の経験やノウハウが効果的に活用された。 |
2) | また、沖縄におけるダニと九州・本州等におけるダニとは生態・生理が異なっており、八重山地域におけるダニ駆除の技術がそのまま適用の可能性をもつわけではないが、その経験やノウハウについては他地域にも有効な先行事例となる可能性は大きい。 |
3) | さらに、八重山地域では放牧が重要な地位を占めており、その経験は九州・本州等における今後の放牧が部分的あるいは全面的導入が行われる場合に、有効な情報になることは十分に想定できる。 |
4) | 八重山家畜保健衛生所の業務体制と所掌事務内容は、九州、本州等における家畜保健衛生所の場合と異なるが、八重山家畜保健衛生所の上記の取り組みと成果は、他地域の家畜保健衛生所に少なからぬ刺激とヒントを提供することも十分期待できる。 |
5) | 八重山地域において、オウシマダニ撲滅に挑んだ経験とノウハウは世界各地のオウシマダニ撲滅に向けて大いに指針になり得るものと思われる。 |
1) | オウシマダニ撲滅を28年間で実現したので、今後は侵入防止対策に万全を期していかなければならない。 |
2) | また、衛生対策として外部寄生虫のハエ、蚊等の駆除、及び内部寄生虫類などを含めた総合的な牧野衛生対策と損耗防止を図っていかなければならない。 |
3) | 草地、畜産基盤の整備により肉用牛の改良、増殖、飼養管理技術及び経営指導等の生産振興面に対しきめ細かい対応を推進していく。 |
4) | 暖地型牧草の特性を活かした集約型管理放牧によって牧養力の増大を図り、低コスト生産と増頭を確立していく。 |
5) | 畜産の流通体制として家畜市場の統廃合により市場性の向上を図っていく。 |
6) | 県の平成17年度の増頭計画は42,000頭であるが、達成は、ほぼ可能であり50,000頭が当面の目標である。 |
7) | 肥育技術の向上により枝肉成績が高く評価されてきており、石垣牛のブランド化に向けて質量ともに推進していく。 |
8) | 八重山地域は我が国の最南端に位置しているため、海外からの口蹄疫や悪性伝染病の侵入防止及び発生予察について重点的に対策を確立していかなければならない。 |