乳用牛
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搾 乳 牛 |
成 牛 |
育成牛 |
計 |
飼養頭数 |
1,432 |
885 |
2,317 |
飼養戸数 |
31 |
31 |
- |
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肉用牛(繁殖)
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黒毛和牛 |
成 牛 |
育成牛 |
計 |
飼養頭数 |
115 |
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115 |
飼養戸数 |
9 |
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- |
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肉用牛(肥育)
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和 牛 |
乳用牛 |
交雑種 |
計 |
飼養頭数 |
675 |
2 |
927 |
1,604 |
飼養戸数 |
7 |
2 |
2 |
- |
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養豚
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繁殖用 成 豚 |
肥 育 豚 |
肥育豚 |
子 豚 |
計 |
飼養頭数 |
1,499 |
6,490 |
6,630 |
14,619 |
飼養戸数 |
15 |
15 |
15 |
- |
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採卵鶏
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採卵鶏 |
成 鶏 |
育成鶏 |
計 |
飼養頭数 |
159,500 |
12,500 |
172,000 |
飼養戸数 |
7 |
7 |
- |
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ブロイラー
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飼養羽数 |
年間出荷羽数 |
飼養頭数 |
115,400 |
438,000 |
飼養戸数 |
5 |
5 |
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1) |
活動のはじまり |
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有限会社「一番田舎」代表の鈴木宗雄氏は、自己の肉牛経営(長浦牧場)において黒毛和種の大規模一貫経営を実施している。長浦牧場は当初、乳用雄子牛の肥育経営を行っていたが、輸入畜産物が年々増加していく中で、量から質への経営転換を図るため、黒毛和種の繁殖・肥育の一貫経営に切り替えるとともに、優良種雄牛「豊喜号」を導入するなど、常に将来を見越した計画的な経営を実施してきた。 |
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表−3 長浦牧場の概要
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また、鈴木宗雄氏はJA糸島の肥育牛部会長として「糸島牛」を銘柄牛化するなど地域リーダーとしても大きく貢献してきた。
しかしながら、農畜産物の自由化に続く米の部分開放が決まり、農業の先行きに厳しさが増す中で、農業後継者が農業をやって行ける環境づくりをしようと、変化の波を真っ正面から受けながらも攻めの姿勢で取り組み、長浦牧場が推進母体となって地域農業者と提携した「一番田舎」構想が出された。
この構想は、今まで農家は生産のことのみ考えてきたが、これからは生産から販売まで農家側でやっていくことを理念としている。
この構想に前原市も連携し、ソフト部分で全面的に支援していくこととなった。 |
2) |
活動の位置づけ |
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有限会社「一番田舎」が所在する前原市は、都市近郊農業地域として発展してきたが、平成4年の市制施行とともに急速に都市化が進んでいる。
このような状況の中で、前原市では農業振興の目標を、[1]都市近郊の有利性を生かし、大きな変革と特色ある農業の展開により、食と農の共生関係を築く。[2]都市と農村が、また、消費者・都市生活者と農業者が相互に信頼、協調、補完しあう共生関係を築くとしており、この目標にいち早く取り組む体制を整えたのが「一番田舎」である。
「一番田舎」の取り組む姿勢として、「私たち農業・農村大好き人間は、緑豊かな自然環境を生かし、あなたの健康の真ん中に心身のリフレッシュの場、そして糸島農畜産物を自信を持ってお届けするために、輝く汗を出しながら、都市と農村(消費者と生産者)の交流を図っていく。」としている。このことが「一番田舎」の中で形として現れており、それが都市生活者の評価を受け、ファンが増えている。
こうした「一番田舎」の取り組みが地域農家への刺激となり、前原市の農業、農村において、これまでの生産者から農業経営者への意識改革や、流通販売の改善、ふれあい農業の展開、農産物のブランド化など、あらゆる面で新たな農業の展開が行われるようになった。 |
3) |
活動の実施体制 |
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有限会社「一番田舎」は、長浦牧場代表の鈴木宗雄氏とその共同経営者で水稲も作る宮本剛氏及び野菜を栽培する藤野宗氏の3名で作る「前原ふれあいファーム実行組合」と長浦牧場の2組織から構成され、それぞれが機能を分担し、代表は鈴木宗雄氏である。
「一番田舎」はこのように農業者のみで組織され、運営されているものであるが、前原市の支援組織「前原市農力開発推進機構」や関連組織「いとのくに田んぼの夢倶楽部」や「前原市ふれあい農業ネットワーク会議」の支援・協力の力も大きいものがある。支援組織、連携組織の役割は次のとおりである。 |
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図−5 「一番田舎」の組織
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(1) |
前原市農力開発推進機構 |
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前原市が行う産・官・学による前原市の農力の開発と、新しい農業の展開を実践指導する推進機構であり、「一番田舎」はこの支援を受け運営企画を行っている。 |
(2) |
いとのくに田んぼの夢倶楽部 |
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都市住民を会員(現在870名)として、前原の農業・農村情報を提供しており、これを通じ「一番田舎」の情報も送られている。 |
(3) |
前原市ふれあい農業ネットワーク会議 |
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農産物直売所、市民農園や観光農業などを行うグループが手をつなぐネットワークであり、「一番田舎」もこの会員で都市生活者の受け入れ体制づくりのための相互研修を行っている。 |
(4) |
運営企画会議 |
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「一番田舎」のスタッフと前原市農政課で定例会議を行い、農畜産物販売参加農家の研修も行う。 |
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表−4 補助事業等の活用状況
名称 |
有限会社「一番田舎」 |
区分 |
ふれあいファーム |
糸島農畜産物即売所 |
事業主体 |
前原ふれあいファーム実行組合 |
長浦牧場 |
事業名等 |
福岡県ふれあいファームづくり事業 |
農林漁業金融公庫資金事業 |
事業費 |
総事業費 42,028,809円 県補助金 20,719,000円 融資金 16,590,000円 自己資金 4,719,809円 |
総事業費 約70,000,000円 融資金 55,000,000円 自己資金 15,000,000円 |
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4) |
具体的な活動の内容と成果 |
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(1) |
有限会社「一番田舎」の推進母体である長浦牧場は黒毛和種の大規模一貫経営の実現はできたものの、「一番田舎」に相当の投資を行うことに多少の不安はあった。特に販売の核となる自らが生産した牛肉を売ることは、安い輸入牛肉が出回る中で、消費者に受け入れてもらえるかどうか、また、地域農家にとっても自分達の農畜産物が本当に売れるのかどうかの疑問を持ちながらの出発であった。 |
(2) |
しかしながら、牛肉については、長浦牧場が出荷した牛肉を食肉センターからブロックで引き取り、1年間研修を受けたスタッフが製品加工を行い、一度食べると「究極の肉を追求し、きめ細かく柔らかく、ほど良い脂肪がのっている糸島牛」として、口コミで消費者が増え、リピーターとなる客がたくさん出てきた。 |
(3) |
野菜、花、加工品等を出荷する耕種農家も、長浦牧場の「万能堆肥」を利用した有機農産物として販売が好調に続く中で、出荷品に自分の名前と自分が付けた価格を表示することにより良質、安全、新鮮、なおかつ安くという理念のもとに、生産・販売に力を入れるようになった。 |
(4) |
このことは、「一番田舎」代表鈴木宗雄氏が連日連夜の農畜産物出荷者との対話、ほ場巡回等を行い、消費者のニーズを伝えながら、より良いものを作って行こう、と激励しながら一体となった取り組みによるものと思われる。
こうしたことが消費者のニーズにマッチし、生産者と消費者の信頼関係が出来上がったと言える。 |
(5) |
出荷者も努力したものは販売額となってあらわれ、多品目、生産増に力を入れ多い人は月に50〜60万円の売り上げになり、「一番田舎」登録農家も当初の約10倍の420名となり、畜産のみならず地域農業活性化の拠点となっている。 |
(6) |
貸し農園も地元前原市はもとより福岡市等近隣市町からの利用者も多く、専門家による栽培指導や「万能堆肥」の無料提供もあり、利用者は持続的に利用するので空きが少なく順番待ちの状況である。 |
(7) |
「一番田舎」が都市と農村の交流の拠点となった成果は、「一番田舎」が「このまま農業・農村を衰退させないぞ」という、強い意気込みで企画運営されている結果と思われる。 |
(8) |
また、大規模な都市と農村の交流施設は、一般的には行政やJAが設置主体となって行われる場合が多いが、このように地元農家だけで組織・運営されている「一番田舎」は、関係者の並々ならぬ努力に負うところが大きく、功績として評価できる。 |
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5) |
地域振興の活動の年次別推移 |
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