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地域振興部門・優秀賞
飼料給与の合理化と環境保全対策による地域酪農の活性化 
三和町酪農部会
三和町
双三郡三和町に「ミックスフィードセンター」が建設され、
同時に記念碑が建立された時の酪農家の記念写真。
 三和町酪農部会(現部会員11戸、代表者:広島県双三郡三和町羽出庭590-3温泉川 寛明)は、昭和38年に結成した三和町内の酪農家を構成員とした組織です。構成員の共存共栄を図るため、部会員が集団で行う経営の合理化等を推進し、地域農業の活性化に取り組んできました。 

 この地域は、地理的に丘陵に富んでいることから山間棚田が多く、効率的に自給飼料を確保するための基盤はゼロに近い状態でした。そこで当部会では、草地基盤の確保による酪農業の選択的拡大を目指して活動を始めました。 
 昭和42年「安瀬平草地利用組合」(構成員6戸、平成7年「農事組合法人安瀬平グリーンファーム」に変更)を結成し、三和町を介して国有林320,495平方メートルを借受け、構成員の経営施設・飼料圃などを整備し、共同作業を行うなど地域酪農の基盤を築きました。以降、地域に酪農が定着し、経営規模の拡大を続けるなか、当部会で課題提議されたのが、飼料給与の合理化でした。 

 この合理化策として、生産コストの低減と労働時間の短縮、更に飼養規模の拡大を図るため、TMRの製造・供給を、当部会が参加する双三酪農組合(構成員31戸)に強く働きかけて、平成2年「ミックスフィードセンター」が建設されました。以後、他地域の酪農家と協調し、TMRメニュー委員会における運営改善に努めた結果、安価で嗜好性の高いTMR供給システムが整備され、繁殖成績、乳量、乳質が飛躍的に向上しました。平成2年以降、地域における1戸当り経産牛平均飼養頭数の増加率は広島県の2.1倍に至っています。 

 このように地域における飼養頭数規模の拡大に対応して、畜産環境保全と糞尿の広域処理・利用体制を整備するため、平成7年から検討に入り、当部会の要望が受け入れられ、平成9年に町営の「有機センター」が設置されました。これにより、酪農部会全戸から排泄される糞尿は効率的に堆肥化処理が可能となり、地域資源として有効活用され、特に町の特産物である酒米、野菜の有機栽培への足がかりとなりました。有機センターの管理業務はグリーンファームが受託し、地域の有機農業の推進に貢献しています。 

 また、地域で生産される牛乳の付加価値を高めるため、平成4年、酪農仲間6名で「高原安瀬平乳業」を起業。ヨーグルト、アイスクリームの製造・販売を開始し、今では三和町の特産物としても高い評価を得ています。 
 当地域の酪農は当初から家族経営が主体であり、地域における魅力ある酪農経営を実現するため、平成9年「家族経営協定」を8戸が締結。家族の一人ひとりの役割分担と収入の配分、後継者の確保など、家族が対等に協力しあう体制を整えました。 

 当酪農部会は地域内外を問わず、積極的に、酪農経営者の子弟や、酪農経営を目指す若者を研修生として受け入れるとともに、後継者の育成に努めており、研修終了者は新規就農者として地域に定着し、酪農組織の一員として活躍しています。