(1) 平成7年度における収益性について (2) 平成9年度における重大な変化〜小規模層の収益性の落ち込みと経営間格差の大規模化〜 さらに、平成7年度と平成9年度における「雌子牛1頭当り販売・保留価格」と「去勢子牛1頭当り販売・保留価格」を比較すると、平成7年度においては規模拡大に伴う子牛価格の低落傾向が雌子牛でも去勢子牛でも確認できた。しかし、平成9年度においては30頭以上層における子牛価格の低落傾向は確認できず、むしろ「1〜5頭層」の落ち込みが目立つようになっているのである(去勢子牛では30頭以上層が405,941円に対し1〜5頭層では405,210円、雌子牛では30頭以上層が326,950円に対し1〜5頭層が295,227円)。したがって、「1〜5頭層」では急速に「成雌牛1頭当りの年間労働時間」を増やさざるを得ない状況に落ち込みつつ、なおかつ子牛販売・保留価格を低落させている現状からすると、高齢化の進行にともなう労働力不足から飼養管理時間にかかわる労働時間を拡大させつつ、一方では購入飼料への安易な依存と飼養管理の手抜きといった変化が進行しているのではないかと懸念される。こうした変化の意味は、これまで小規模層が存続してきた経営上の「強み」が崩れ、小規模層の存続を根底から揺るがす状況に至っていることを示しているといえよう。 こうした変化のもとで、規模の格差に伴う収益性の「段階的な違い」にも変化が現れている。平成5年度は「売上総利益」ですら赤字に陥っていたものの、平成7年度には「売上高」の下げ止まりによって収益性が回復し始めた時期であった。平成5年度の分析段階では、「10頭未満層」と「10〜15頭以上層」の間には、『「売上総利益」「営業利益」「経常利益」が万円単位で2桁台の赤字になっているのに対して、10頭以上の階層では1桁以下に留まっており、両者の間に段階的な違いが現れている」』2)と指摘され、収益性が回復し始めた平成7年度においても、厳密ではないが「10頭未満層」と「10〜15頭以上層」の間には、「営業利益」、「経常利益」の指標がほぼ2桁と1桁の格差があり、「10頭未満層」と「10〜15頭以上層」の間には「段階的な違い」を見出すことができた。しかしながら平成9年度においては、「10頭未満層」と「10〜15頭以上層」との間の「段階的な違い」から「15頭未満層」と「15〜20頭以上層」との間の「段階的な違い」にシフトし、さらに「1〜5頭層」を中心とした小規模層の落ち込みが進行している点に特徴がある。 2)栗原幸一「III.肉用牛経営の収益動向と要因分析」『経営診断からみた畜産経営の現状−畜産経営診断全国集計解析編−平成5年3月(社)中央畜産会 |