農林水産大臣賞

遊休地を活用し経営規模拡大を目指す
都市近郊肉用牛経営
〜「頭と体を使うと肉用牛経営は儲かる」を夢に〜
宮崎県宮崎市 長友明・真理子さん
(肉用牛繁殖経営)

長友さんの経営は宮崎市郊外の海岸部の農村集落にあり、施設野菜生産が盛んなこの地区では、混住化はまだ進んでいない。しかし兼業化、老齢化が進み遊休地が多く発生し、これを逆手にとって借地7.5haを含めて9.2haの飼料畑をベースに着実に規模を拡大した経営である。現在夫婦2人の労力で成雌牛約100頭を年2作の飼料畑で飼っている。

肉用牛経営のスタートは昭和55年長友さんが県立農業大学校を卒業したのを契機に本人の希望で育成牛5頭を後継者資金を活用して導入したのが始まりで、自家育成で徐々に規模を拡大し、繁殖牛が30頭になった平成元年に結婚とともに経営移譲を受けている。その間ハウスキュウリ、カボチャで生計費をかせぎ、肉用牛の収入は頭数拡大や畜舎建設に振り向けている。平成8年に成牛が50頭になり、労力不足もあってハウス野菜を中止し、肉用牛専業に転換している。その後も毎年10頭前後を増頭してきている。

長友さんの経営の評価すべき点は―

第1は、規模拡大を堅実に自家保留で増頭し、畜舎・施設は自己資金やリース事業を活用して整備し、100頭経営にも拘らず借入金残高が737万円と少ない。

第2は、地域の遊休地の借地で飼料畑が充実しておりTDN自給率42%、地域から集めた稲ワラを入れると52%と高い。また、砂質土壌のため適当な夏型飼料作物がないため夏作には乾草調製に向いている自生するメヒシバを利用し、冬作イタリアン―夏作メヒシバで低コスト飼料生産を行っている。ちなみに自給飼料のTDN1kg当たり生産コスト49.5円となっている。

第3は、敷料に地元のシメジ菌床の廃材を安く入手し、オガクズとともに利用し、牛床が直下型換気扇の設置やもどしたい肥の投入等もあって乾燥し、臭気がほとんどなく、環境保全に役立っている。

第4は、繁殖成績も平均種付回数1.3回、分娩間隔12.4ヵ月と高成績で子牛の平均販売価も地域平均より10%高となっている。

第5は、廃用牛の高付加価値化と県の後代検定牛の肉質評価のため常時4〜5頭の肥育を行っているが、将来は30頭まで増やし、収益向上を図る計画をもっている。

第6は、ふん尿処理施設も整備し、大半は飼料畑に還元し、地力増強を行っている。

第7として以上の対応の結果、経営成果として総所得1273万円、成雌1頭当たり13.2万円、所得率42.4%と立派である。

最後に長友さんの経営には随所に創意工夫がみられ、繁殖ステージごとに成牛を3群に分け牛舎をローテーションさせたり、牛の鳴き声を抑えるため出生日の近い子牛を10頭前後まとめて集団離乳しているし、給餌面では乾草、稲ワラ主体に伴うビタミン不足を補うため、ルーサンペレット・ビタミン剤入り配合飼料を給与、さらにふん尿等の流水防止のためパドックを全面コンクリート張りにしてふん尿の完全回収を行っている。

長友さんはまだ若く、後継者問題を議論する年齢ではないが、当面は市場評価の高い安平、糸桜系に母牛を整備し、子牛価格の上昇を図っていく計画をもっており、より一層の経営充実を期待したい。