耕畜連携で農業を楽しむ
―栃木県喜連川町・一本木活性たい肥利用組合―

 平成11年、家畜排せつ物の管理・利用促進法をはじめとする、いわゆる環境三法が施行された。そしてこの三法により、家畜ふん尿の適正管理と肥料としての成分表示を明確にするとともに、耕種農家をはじめとする農地や草地に有効利用する道筋が定められたわけである。

 畜産経営にとって規模拡大は、ふん尿量の拡大を伴うわけで、環境保全の観点からは、たい肥化等の適正な処理・管理はもちろんのこと、持続性の高い農業生産方式の導入という意味では、今後耕種経営との連携を図り、たい肥をうまく流通させて行くことが課題と言える。

 そこで、養豚農家と耕種農家が共同でたい肥利用組合を設立するとともに、地域の耕種農家と連携を図り有機野菜の産直活動を行う、一本木活性たい肥利用組合を中心としたグループ活動を紹介する。

 一本木活性たい肥利用組合のある喜連川町は栃木県の北東部に位置し、古くから足利氏の城下町として開け、また今では温泉の町として知られる。

 たい肥利用組合の設立は平成8年8月で、養豚一貫経営の許野農産の矢野幸男さん(52歳)を組合長に、構成員は水稲・ハウスナス・シュンギク等を栽培する耕種経営の蓮見直彦さん(48歳)、山田勇さん(60歳)の3戸の共同施設として設立した。

 「組合の設立以前から豚ぷんたい肥を自分の水田はもとより、蓮見さんと山田さんに使っていただいていました。そして規模拡大によるふん尿のあまりの多さから従来のたい積方式ではだめだと思い、2人に相談して組合を設立し、国の補助事業で施設整備を行いました」と矢野組合長。

 ちなみに、組合の施設の概要は、
  1. たい肥発酵処理施設1棟(ロータリー攪拌、650m3
  2. 浄化処理施設一槽(170m3
  3. フォークリフト1台
  4. トラック1台
  5. たい肥袋詰機1台
 で、総事業費は5800万円とのこと。


 そして、たい肥の原料となるふん尿は、矢野組合長が経営する繁殖母豚280頭の養豚一貫経営から供給されるが、排せつされたふん尿はまず固液分離され、ふんはロータリー攪拌式のたい肥発酵処理施設で、180日間かけて好気性発酵されたい肥になる。水分調整は戻したい肥を主体に、一部オガクズを使用している。なお、この施設は生ふんの投入場所が変えられるので、発酵槽の状況(水分・温度・形状等)を観察しながら発酵ステージにあった処理が可能だそうだ。「施設の導入に当っては県内外を視察し、製品の状態、ランニングコスト、処理日数等町の指導・協力を得て比較検討しました。組合の運営方法を含め大変お世話になりました」と話される矢野組合長。平成9年4月に施設が完成した。

 たい肥の発酵過程での臭気を軽減するため木酢酸を添加している。定期的に県機関の臭気調査を実施しているが、数値は基準以下である。また、たい肥利用者の散布作業の利便性を考え、たい肥の形状は粒状(5〜10o)にしている。「耕種農家の利用を考えた場合、化学肥料と同じようにブロードキャスターで散布できる形状でないと利用は促進されません」と利用者の立場が最優先の矢野組合長。

 たい肥の利用拡大とともに製造者としての責任を明らかにするため、成分分析を行い栃木県肥飼料検査所に届出て、製造許可・販売許可を取得している。製品はバラと袋詰めで、販売価格はバラが1t当り1万円、袋詰めは20lが450円、10lが380円で、袋には窒素、リン酸、カリ、石灰、苦土の成分内容とともに作目ごとの使用量の目安が記載されている。

 さて、たい肥の生産と流通の状況はどうか。矢野さんの養豚場からふんが年間2770t排出されて、利用組合で発酵処理され、およそ年間200tのたい肥が生産される。販売状況はJAへの供給が17t、庭先販売が95t、喜連川オーガニッククラブが68t、その他サンプル等が20tとなっている。「たい肥生産をはじめた当初の秋、各農家に10袋ずつ配って使ってもらいましたが、作物がとにかくよくできたので、今では固定客となっています。家庭菜園の方も含めおよそ120件と取引しています」とたい肥が足りない模様。

 ところで、年間68tのたい肥を供給する喜連川オーガニッククラブ、この組織もたい肥利用組合の3人の発案で平成10年2月に設立された。「3人で相談して、地域の新年会の席で有機野菜の産直をしようと提案しました。今では13戸の農家が参加しています」と耕畜連携が基本と言われる矢野組合長。宇都宮市内の民間スポーツクラブ(栃木県健康倶楽部)の敷地内を無償でお借りし、市内の消費者を対象に毎週土曜日に有機野菜の産直を行っている。また、オーガニッククラブは、産直のほか田植え、稲刈り、イチゴ狩り等の消費者交流体験農業の実施やフリーマーケット・各種イベントへの参加に取組んでいる。

 「先日クラブの総会を行いましたが、13戸の農家でなんと172品目も販売していました。なかには保健所の許可を得て加工品製造を行う人もいます。たい肥を上手に使い新しい作物の生産を競っている感じです。とにかく楽しんでいます」とオーガニッククラブ会長の蓮見さん。

 耕畜連携で設立された一本木活性たい肥利用組合。そしてこの利用組合を核に設立された喜連川オーガニッククラブ。利用者の立場に立ったたい肥生産がどうやら成功のカギのようだ。


本記事は、畜産コンサルタント2000年6月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。