銘柄牛も大集合
―東京都中央卸売市場・食肉市場―


 食肉流通の玄関口である食肉市場。全国には10ヵ所の中央卸売市場と22ヵ所の地方卸売市場がある。近年、相対取引が増加しているそうだが、市場取引のシェアは牛肉で35%、豚肉で20%程度とのことで、特に中央市場は、卸売業者や専門業者の重要な仕入先であるとともに、取引の指標である建値形成の場であったり、また銘柄牛等品質の高い食肉の取引の場として重要な役割を果たしている。

 そこで、取引高が最も大きい東京都中央卸売市場・食肉市場を紹介する。

 東京・品川駅港南口から徒歩約5〜6分で跨線橋を渡ると、左手にあるのが東京食肉市場だ。近年品川駅近隣は、土地再開発が進み、食肉市場の周りには高層ビルが立ち並び、市場の建物が街のなかにすっぽりと包み込まれた感じである。

 「駅や高速道路の出入口が非常に近く、交通の便がよいのですから家畜の搬入や枝肉の搬出などとても便利です。先日も海外からのお客様が来られましたが、あまりの便の良さや都会の立地に驚いていました」と話される東京都中央卸売市場食肉市場の森本業務課長さん。反面、街のど真中であることから汚水や臭気など環境対策にはじゅうぶん配慮され、運営コストはかなりのものとのこと。

 さて、東京市場の一日当り取引頭数は、牛がおよそ580頭(和牛がおよそ75%)、そして豚がおよそ1300頭。東京市場の屠畜場で枝肉に解体処理される食肉は、汚水処理能力に合せて制限されているため、大動物が一日365頭、小動物は1710頭と決められており、それ以上は近隣県にある10カ所の指定屠場から枝肉で搬入されるそうだ。

 「指定屠場からの搬入費用は東京食肉市場が負担していますが、どうしても鮮度が落ちます。ですから直接生体で搬入したいという要望が非常に強いわけです」と森本課長さん。

 牛は前日に搬入され、当日生体検査を受け解体処理して、検査の後一晩冷蔵保管し翌朝からセリに、そして豚は枝肉検査当日の午後にセリにかけられる。

 格付けは、(社)日本食肉格付協会の職員がセリの直前に格付けを行っている。皮を全部剥ぎ取り、内臓、頸頭部、脛足部、尾部を切除した枝肉は、背脂肪厚、外観(均称、肉付き、脂肪付着、仕上げ)肉質(肉の締りおよびキメ、肉の光沢、脂肪の色と質、脂肪の沈着)等の基準により、牛枝肉はA・B・Cの歩留等級と1〜5の脂肪交雑評価、豚は極上・上・中・並・等外の取引規格により格付印(赤色)を押印してゆく。また、この段階でシミやズル等の瑕疵も併せて押印表示される。

 ところで、中央市場のなかで最も銘柄牛が集まる東京市場、その状況はどのようなものか。

 「格付等級のなかで、極上または上以上の枝肉について、産地の組合などから委託を受けてわが社で銘柄肉商標印を押印(青色)します。松坂牛、近江牛、佐賀牛、米沢牛、前沢牛・仙台牛その他各地の約60銘柄の押印を受託しています」と市場を案内してくださった東京食肉市場鰍フ深石大動物事業部長さん。因みにセリ業務は東京都からの委託により東京食肉市場鰍ェ実施しているそうだ。

 そしてセリ。取引単位は牛については一頭単位、豚は出荷元ごとの1〜10頭のロット単位で行われ、平成元年以来コンピュータに連動した応札機を使用し、セリ値は電光掲示盤に表示され、最も高い価格でセリ落とされる仕組みだ。

 表示は上場番号・産地・格付・枝肉重量・単価・買受人番号等である。

 「家畜出荷者への販売代金の送金はわが社が翌日行います。また、買参業者や仲卸業者からの購入代金の入金は30日以内となっています」と深石部長さん。どうやら生産者の資金繰りを考えて配慮がなされているようだ。

 昭和11年に現在地に東洋一の規模と近代設備を備え開設された本市場。すでに半世紀以上が過ぎ、この間改修・修繕はされてきたものの施設の老朽化が進み、またHACCPへの対応等時代の要請にじゅうぶんに応えられなくなってきているそうだ。 そして現在、東京都では平成17年度を目標に老朽化した施設の整備を行うとともに部分肉流通等の今後の食肉流通の変化に対応した総合的な整備を進めている。

「見学通路が予定されていますから、一般市民の方々が食肉処理やセリの様子を見学することも可能です。また施設内に調理室を設け消費者に肉料理の講習等交流の場も予定されています」と東京食肉市場から食肉に関する情報を全国の消費者に発信したいと話される森本課長さん。

 銘柄食肉はもとより、質量ともに日本最大の取引がなされる東京食肉市場。公正な取引の場であるとともに取引の建値形成の指標ということからも一日も早い総合整備に期待したい。



本記事は、畜産コンサルタント2000年1月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。