ダチョウ生産に猛ダッシュ!
―茨城県石岡市・「ダチョウ王国」―


 ダチョウというとアフリカ原産で、動物園の人気者。空を飛べない2mを越す大きな鳥をまず思い浮かべる。

 しかし、欧米では肥満やそれが原因での心臓病等の疾病が多いため、牛肉に比べてカロリーや脂肪が少ないダチョウの肉が健康食品として人気を集めている。さらに、昨年の狂牛病発生により安全な食肉として人気が高まった経緯がある。

 こうしたことから、最近、わが国においてもダチョウが健康食品として、あるいは地域振興策の一環として全国各地の個人や畜産組織、大学、自治体で飼われる事例が増えてきている。

 そこで、ダチョウ飼育の先駆け的存在であるとともに日本最大級の飼育規模を誇る常南グリーンシステム鰍ェ経営する「ダチョウ王国」を紹介する。

 茨城県石岡市の郊外、石岡駅から車で20分程走ると梨園地域の中に「ダチョウ王国」がある。柵内には何十羽という成鳥の大きなダチョウが群れており、それは実に壮観な光景だ。

 造園業をされている経営主の矢口社長にダチョウ飼育の動機を伺うと「子供の頃から鳥が好きでしたが、テレビでダチョウ飼育について知り、これだと思い、社員2人を連れてアメリカアリゾナ州の農場で4ヵ月余り研修を受けました。そして平成9年から研修先を通じ、雛の導入を始めたわけです」とのこと。

 平成11年現在の経営規模は、7haの敷地内にカマボコ型の育雛・育成舎が五棟、倉庫が一棟、管理棟が一棟でほとんどはネットフェンスで囲んだパドック。飼育羽数は、繁殖雌鳥が80羽に雄鳥が40羽、そして雛から育成、肥育中の成鳥の雄・雌を合わせて約1200羽を飼養している。繁殖から肥育まで行い、年間200羽を食肉として、200羽を雛や成鳥として生体販売している。

 品種は体重180sのレッドネック種とブルーネック種のクロスと、体重120sのアフリカンブラック種(ブルーネック種のハイブリッド)で、繁殖は雄1羽に雌1〜2羽とし、2歳〜25歳まで供用される。ちなみに寿命は70年以上とのこと。

 そして卵は1個が1.8s前後の重量というから驚かされる。

 ここで生まれた卵は、改造した鶏用の孵卵器を使い36.5℃で温め42日後に孵化する。「丈夫で環境に強いダチョウですが、孵化後3ヵ月齢までは弱く、じゅうぶんな注意が必要で、とくに1.5ヵ月齢までは30℃に保温しています」といわれるように飼育環境を変化させないことが育雛のポイントのようだ。

 飼料は抗生物質を含まない巣味飼料とEM菌発酵飼料を自家配合して給与している。成育にしたがいカロリーや蛋白をだんだん少なくし、7ヵ月齢からはラーメン製造屑やモヤシ屑、牧草(アルファルファ)も与えている。

 「成長が早く、12ヵ月齢で体重が100sになります。しかし、その後120sまで肥育すると24ヵ月齢までかかってしまい、そのうえ肉にはサシが入らず脂肪が増えるばかりで飼料効率が悪くなるわけです。このため12ヵ月齢で屠畜します」。

 屠畜についても引き受けてくれるところがなく、結局、独自で県の認可を得て平成10年屠場を作り、年間約200羽を屠畜・解体している。

 肉や内臓(レバー、ハツ、腸)・卵の販売先は料理屋、居酒屋が主体で、中元販売やインターネットを通じた販売などのほか事務所での直販も行っている。「食肉としてはまだまだ認知されていませんからPRが必要です」といわれるように肉の成分表や料理法、気軽にダチョウ肉が食べられる料理屋や居酒屋等のパンフレットを作成して配布している。

 この他、ダチョウに関連して飼育指導、関連機械器具、設備販売や施行等と幅広い事業を行っている。  「ダチョウ肉を生産して、はたして売れるかどうか心配する人が多いですが、健康食品志向が後押しをしてかなりの需要が見込めます。むしろ今必要なのはダチョウ肉の供給力です」「低カロリー、低脂肪のダチョウ肉は健康食品を必要とする高齢者、肥満者、若い女性を対象に確実に需要が伸びます。しかし、個人では限度がありダチョウ飼育をはじめる仲間を増やして供給力を高めることが、まず先決です」と本業の造園業よりもダチョウ飼育に情熱を注ぐ矢口社長。

 皮についても、皮革製品向けレベルのものとするために南アフリカ共和国に100枚単位で送り、なめすことを考えているそうだ。  高齢化社会が進み、健康面から食事も低カロリー・低脂肪が求められる今日、最も適した食肉のダチョウ肉。牛・豚・鶏に次ぐ第四の食肉として、量と質がともなった安定供給体制が確立できるかどうかが鍵といえよう。



本記事は、畜産コンサルタント1999年7月号にも掲載されています。
※情報は掲載当時のものです。