あいであ&アイデア 

削蹄のための手作りの保定枠

鹿志村 均


 茨城県多賀郡十王町で肉用牛経営(黒毛和種肥育)を行っている加藤洋明さんは、1人でできる削蹄のための保定枠(以下「保定枠」という)を全て手作りで平成8年3月に完成させました。
 加藤さんの肉用牛経営に対する思いは、徹底した低コスト化の実現であり、今回紹介する保定枠についてもどうしたら手軽に牛の飼養管理ができるかとの発想から生まれたものといえます。

保定枠の内容及び現状

1.保定枠の構造と利便性

 構造と大きさは、図−1のとおりで、収納時には (ア)(イ)の部分を折りたたみ、フォークリフトでどこにでも自由に移動できるようにしました(写真−1)。

写真−1 フォークリフトで移動

2.削蹄のための各種工夫

 @保定枠内での牛の扱い方
 牛の四肢を各固定部に保定するためには、相当の重労働となりますが、加藤さんは長年の経験から図−2の方法を編み出しました。

 また、蹄の保定も図−3により独自の保定方法を考えました(写真−2)。

 

 写真−2 前肢の削蹄を行う加藤さん

写真−2 前肢の削蹄を行う加藤さん
(保定している爪先に木片を入れ作業性を良くしている。)

A四肢・体格部の保定
 牛の体格部の保定は、頭部を含め図−4により行い、削蹄作業は図−5(写真−2・3)のように常に削蹄者が保定枠の外側でできることにしました。このことにより人はいつも安全で楽な姿勢がとれ、作業能率向上につながるとともに、牛にとっては、作業中に他の足への体重負担をかけない等、種々の工夫が加えられています。

写真−3 後肢の削蹄

3.製作に要した費用

 製作に要した費用は次のとおりです。

 ア.骨材(75mm角パイプ23mm厚)
  18,000円

 イ.チェーンブロック(500kg重)
  10,000円

 ウ.溶接用消耗品
   2,000円

 計 30,000円

 この他、床やスロープの板材、コンベアーのベルトは家にあったものを活用しました。


 成 果

 平成8年4月から7月までに、約400頭の削蹄ができました。加藤さんは、日常管理の合い間を削蹄に当て、1頭を仕上るのに1人でやると約20分、補助者1人が加わると約10分で終わるといいます。 実際に、調査者として削蹄しているところを見せて頂きましたが、息子さんとの2人での作業時間でも同様であり、初心者とは思えない腕前でした。
 削蹄してからの牛の様子を尋ねたところ、削蹄しなかった時の牛は、エサを給与に行っても体を起こす動作が鈍く感じられましたが、削蹄後は、牛の動きも軽快で、走って飼槽に近づくようになったと話してくれました。

写真−4 削蹄用具

 おわりに

 開発した保定枠は、初心者でも使いやすく短期に能率向上が図られました。この保定枠に込める加藤さんの思いは、人の立場から取扱い容易で安全で楽であり、牛の立場からは削蹄中他の足への負担をかけない等、人と牛にやさしい装置です。
 今後は、経営にも大きく貢献し、必要な備品として、他の農業者へも徐々に広まるものと期待されています。

(報告者:茨城県畜産試験場家畜改良部長)


本文は、茨城県畜産会の発行する「畜産茨城第282号」に鹿志村均氏が執筆した文章を許可を得て再録したものです。

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