生産技術セミナー

養豚経営の高成績は衛生チェックから(2)

− 養豚事例に学ぶ経営の基本 −

宮内 一典

 

4.養豚農家の事例(Sファームの場合)(承前)

 では、具体的に衛生改善を図った農場の事例を見てみましょう。この農場は平成4年に農場の規模拡大を計画した時に、それまでの病気(特にARがひどかった)対策として、SPF豚農場への変換を実施したのです。
 以前に使用していた豚舎(1棟)を一部改造(分娩・離乳舎)し、2棟を新築(種豚舎、肥育舎)して、平成4年5月にオールアウト、9月に種豚導入のスケジュールで行いました。
 使用する種豚の品種は変換前と変換後では変わりませんが(F1雌=ハマナスW1×クニエル、雄=サクラ201)、導入元は一般種豚場からSPF豚種豚場にかわっています。配合飼料も粉飼料からペレット飼料(ホクレンのSPF豚農場ではオールペレット飼料で飼育することにしています。)に切り換えていますが、成分内容は大きく変化していません。
 大きく変わったのは、管理棟、出荷施設の設置と農場回りの溝及び金網の設置です(写真−1〜3を参照)。管理棟は人の出入りについての規制のため、出荷施設は屠畜場との接触を遮断するため、溝は雨水の流入を防止するため、金網は農場従事者以外の農場内への立ち入りを規制するために設置しています。それ以外の農場施設、内容は一般の農場と変わっていません(図−1の農場レイアウトを参照)。
 この農場で養豚をスタートし、3年目になって成績が安定した平成7年度の生産成績を表−6に示しました。全国平均、北海道の指標値と比較してあります。衛生に気をつけてクリーンに飼養することが、いかに高成績につながるかが判ると思います。


5.養豚農家の事例U(N畜産の場合)

 この他に、一般農場のままで農場内での衛生状態をアップさせた事例を紹介します。
 この農場は平成5年より種豚の導入先をそれ以前の複数農場(4ヵ所)から種雌豚、種雄豚それぞれ1ヵ所に限定すると共に、農場内の水洗、消毒の実施、年に数回の衛生検査に基づき、その都度最も影響度の高い疾病から関係機関と強力して対策を実施してきた結果、平成4年と平成7年で次のような成績の向上が見られています。

 分娩回転数  1.7回 →  2.2回
 1腹産子数  9.8頭 → 10.4回
 保育育成率 87.0% → 95.4%

 この農場は今まで主に呼吸器病を中心に対策を実施してきましたが、これからは、それ以外の疾病をも対象にして今以上の成績を目指すべく、努力中です。生産成績、経営内容の詳細については、ある程度の経過を経て、状態が落ち着いた時点で報告出来ると思っています。


6.衛生をアップすることは、生産成績のみでなく、消費者にとっても重要な関心ごとである!

 北海道(農政部酪農畜産課)が北海道内の大手スーパー等に豚肉販売に関するアンケート調査をした結果があります(図−2)。この結果を見ると、小売店(消費者)も綺麗な環境で飼養された豚肉を期待しており、輸入豚肉に比べて国産豚肉の方が、鮮度が良く、安心でき、美味しいと感じており、これからも品質、飼料指定(抗生物質の使用していないもの)を希望し、農場の指定、SPF豚肉を望んでいます。この傾向は北海道だけでなく、全国であてはまると思われます。
 これからの養豚産業は、自農場の成績を上げるだけでなく、これらの消費者の期待に応えていく努力が必要になっていくのです。そのためにも、養豚場内は誰に見られても恥ずかしくない、綺麗な状態を維持してゆくことが必要になってきています。
 場内での衛生環境を向上させることは、成績をアップすると共に、輸入豚肉に対抗出来る今後の養豚を目指すための重要な条件になってきています。


(おわり)

 

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(筆者:ホクレン農業協同組合連合会畜産生産推進課)


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