経営技術セミナー

経営間の連携強化に畜産会が果たす役割

塩原 広之

 

 「畜産経営が今後積極的に取り組んでいく必要があると考えられる事項は何か」と問われたときに、現時点で私は以下の三つを挙げたいと思います。

 1.経営間の連携強化
 2.銘柄畜産物の生産などによる川下への経営展開
 3.積極的な畜産環境対策による地域との共存

 私は、中でも特に力を入れて進めるべき事項は、経営間の連携強化であると考えます。その理由と、それに対して私たちが取るべき対応を、養豚経営を例に考えてみたいと思います。

 養豚生産の現場では、オーエスキー病等の慢性疾病が蔓延したことへの対応などが原因のひとつとなって、経営間の交流が十分にはかられなくなった結果、経営の内向き志向が強まりました。生産技術上の疑問や経営の問題点を外に出そうとしなくなり、常に不安を抱えたままの状態が続いたと言えます。加えて農業の国際化への不安、深刻さが増す畜産環境問題等が重なって、養豚の先行きに悲観的な見通しを強く持つようになり、このことが養豚経営からの離脱者を急速に増加させた一因になったのではないかと思います。

 この沈滞する養豚情勢の中で自分の経営の方向を見失わなかったのは、経営間の連携強化を積極的に行い、集団として早くから経営改善と低コスト化に取り組んできたいくつかのグループでした。正確な経営情報を得るとともに、経営者のディスカッションの場を作ることで、経営者の孤立感を払拭したことが、大きな力になったものと考えられます。すでに地域的な孤立化が進みつつある養豚の現状では、これを心理的な孤立化に結びつかせないような努力が求められており、そのために経営間の連携強化の必要性が高まっています。

 では、経営間の連携強化が養豚経営の改善にどのような方向を与えるのか、また、それを進めるに当たって、付加すべき要因としてどのようなものがあるのかを図−1に整理して考えてみました。経営間の連携強化によって、@集団としての有利性の発揮によるコストの低減、A@及びBの実現や集団としての役割分担による規模拡大の可能性、Bふん尿処理の共同化等による実効性のある畜産環境対策の実現、C販売物の「定時、定量、定質」生産による有利販売の実現、D経営者相互の切磋琢磨による経営の進化・発展、の五つの方向が考えられます。また、Bについてはふん尿の資源化や環境美化活動の展開による地域との共存、Cについては銘柄化や高品質化による消費段階までをも意識した優位性のある販売の実現、Dについては経営技術の高度化や法人化による、より基盤の強固な経営体への発展、などへの展開も考えられるでしょう。

 このように経営間の連携の強化は、今後の養豚経営の生き残り策のひとつであると位置づけられますが、その中で私たちが果たして行かなければならない役割は、「経営者相互の切磋琢磨による経営の進化・発展」に結びつけていくための情報を担って行くことではないかと思います。

 具体的には第一に、生産者の情報交換、交流の場の設置により、個々の経営間はもとより、他の養豚集団との積極的な意見交換や、農業の他部門、消費者との交流などを通して、養豚の置かれている状況を確認する、あるいは経営のヒントの得られる機会を提供していくことです。これは物理的に交流することで可能となる場合もあるでしょうし、インターネット上やパソコン通信等によって実現が可能となる場合もあると考えられます。これらの様々な手段を駆使して、連携強化の推進者としての役割を果たして行くべきだと思います。

 第二に、総合的な畜産情報の作り手であると同時に情報の受け手として、経営マネージメントに必要な情報を正確に整理、提供していくことです。個別経営に対する経営診断も経営の客観化の情報の一つとして当然この範疇に入りますが、点的な診断指導とともに、経営間の連携をさらに促進するための面的な指導を目指した情報の提供を、積極的に行う必要があると考えます。また、埋もれている、あるいは生産者の利用しにくい情報を掘り起こして加工することも、より現実的で高度な経営の展開を可能にする手段の一つだと思います。

 私たちがつかめる情報は、畜産全体の情報量からすればわずかかもしれません。しかし、畜産経営者が今後最も必要とする、経営間の連携強化を図っていくための情報の強力な発信者としての役割は、非常に大きいものがあると思います。そのための努力がいま最も求められているのではないでしょうか。

 

(筆者:群馬県畜産会 畜産コンサルタント)


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