あいであ&アイデア

分娩豚舎をハウス式で建設

古御門 徹

 

 ハウス式豚舎といえば、三重県では昭和60年前後から肥育豚舎として取り入れる農家が増え、糞尿処理の省力化や施設投資の低減に役立ってきました。このように、ハウス式豚舎といえば概ね60kg以上の肥育豚を飼うための簡易なものを思い浮かべますが、ここで紹介するのは、分娩豚舎をハウス式で建設したものです。

 今回紹介する萩敏彦さん(42歳)は、三重県四日市市の西部で種雌豚約70頭を飼養する養豚一貫経営農家です。

 この分娩豚舎は、大きさが28m×9mで252u、高さ(最上部)が約5m、この中に24の分娩ストールが備えられています(図参照)。32mm径の園芸用のパイプを利用し、家族労働力のみ(男手2人)で基礎から仕上げまで約6カ月を費やして建設しました。建築されたのは平成3年で、当時の材料費としてパイプ代100万円、シート代40万円、カーテン代25万円等が主な経費でした。外壁、断熱材については、無償で譲り受けたものを利用し、さらに低価格で仕上げることができました。構造は基本的には園芸用ビニールハウスと変わりはありませんが、天井を取り付けるためと、強度を増すために、室内に28本の支柱が立てられ、これらがパイプを支えています。本県は全国的に見れば温暖な気候の地域で、大雪の心配はそれほどありませんが、何年かに一度は春先に湿った雪が降ることもあります。平成7年の暮れには、四日市市内で50cmもの大雪となりましたが、幸いにもこの分娩豚舎に被害はありませんでした。修繕らしい費用は今までのところほとんど見当たりません。

 室内は温度管理がしやすいように床面から2mの高さに天井が張られています。天井も側壁も断熱材を使っており、これにより防暑防寒対策に問題はありません。防暑については、ダクトによる送風、水滴による豚体の冷却(ドロップクーリング)で対応、子豚の保温については、電気ブルーダーで保温するといった通常の豚舎と同等の設備で充分対応ができます。防寒については、側壁、天井の断熱材(25mm、30mm)によって十分な温度が保たれます。

 糞尿処理については、ピットのような設備は備えていません。24の分娩豚房ですから、人力で作業が可能です。

 当経営の繁殖成績は、分娩回転率2.2回、種雌豚1頭当たりの内豚出荷頭数で20頭となっており、ズバ抜けた成績でもありませんが、ここ何年かコンスタントな成績を保っています。また、70頭の種雌豚に対して分娩房が24房ということで、余裕のある移動が可能で、分娩舎での事故もほんのわずかです。

 さて、この豚舎の汎用性はどうでしょうか。経営者自らも語るように「種雌豚で70頭程度までの経営なら、更に多額の投資を控えようとするならば、最適な豚舎である」ようです。

 

(報告者:三重県畜産会畜産コンサルタント)


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