経営自慢

魅力ある酪農経営をめざして

古市 伸治

 

はじめに

 福井市は、県庁所在地として福井県の西北部に位置し、西方は山岳地帯を隔てて越前海岸公園に臨んでいますが、その他は、おおむね平坦地となっています。
 農業形態は水田単作を中心として、都市周辺の市街化の増大が進み、農家戸数・就農人口が減少して、兼業が大半を占めています。
 また、酪農は経営主の老齢化、後継者不足に加えて、都市化による環境衛生問題等で飼養戸数が減少警句にありますが、これから紹介するM牧場のように積極的に経営合理化をはかって、飼養頭数を増やし着実に規模拡大している農家もあり、当地域の飼養頭数はあまり減少していません。


M氏の酪農経営

経営規模拡大

 経営主であるM氏は、小さい時から乳牛を見て育った関係もあり、根っからの牛好きで経営を父から引き継いで20年が経過、経産牛23頭から始めて、昭和58年には30頭飼育の牛舎を建築するなど専業経営を目指してきました。
 しかし、後継者不足や都市化による環境問題が厳しくなっていて、仲間が次々と廃業し、現状では所得の向上が図れないと考えて、平成5年度から公社営畜産基地建設事業により経営規模拡大を行い、平成7年11月に完成しました。
 経営概要は、経営主、お父さんの家族労働力とパートの雇用によるもので、飼養規模は平成8年11月現在で、経産牛80頭(飼養規模の目標は経産牛86頭、育成牛18頭)の専業経営です。
 施設は、フリーストール・ミルキングパーラー方式の導入による省力管理で飼養頭数の増頭を目指したものです。搾乳方法では3頭ダブルのオートタンデム型ミルキングパーラーを取り入れることで、搾乳ユニット当たりの搾乳作業能率を高め、また、搾乳する際の姿勢が楽になり、事故も少なくなりました。
 牛舎は開放式であるためか、従来の施設に比べて牛がのんびりしており、鳴き声は殆ど耳にしなくなったようです。このように施設面での導入・改善を行ったことと、高齢の父の協力と朝晩の搾乳時のパートを雇うことで、その他は殆ど経営主が1人で飼養管理ができるようになり、生産性の向上と労働時間の短縮が図られました。

労働力構成、乳牛舎、施設・機械

 M牧場の労働力構成、乳牛舎及び主な施設・機械の概要は表1・2のとおりです。

飼料給与等の飼料管理

 自給飼料は、河川敷地(10.3ha)での採草地利用を行い、混播牧草をロールベールサイレージにしています。これにより飼料の自給率を向上させ、また、未利用副産物を利用することで生産コストを低減するとともに、牧草の品質を安定させるためにラッピングマシン等の大型機械を導入して作業の効率化を図っています。
 経産牛への飼料給与では、カッティングミキサーフィーダーで飼料の調整、給与を行っていて、特に大口径のドラム頂部よりロールベールを丸ごと投入が可能で、ロールベールの細断と飼料のミキシングが同時にでき、さらに、トラクターで牽引して牛舎に運ばれ給餌できて、時間と労力を省くとともに、原材料を均一に混合したエサ作りができるなど、多頭化する酪農経営においてその能力を発揮しています。

経産牛の飼養管理の改善

 経産牛の飼養管理では、ミルクメーターから出力される個体ごとの乳量データは自動的に記録されるので、パソコンの酪農経営管理ソフトを活用して個体の繁殖管理に役立てています。そのほか、牛群検定を活用することで、飼料給与の改善、搾乳衛生管理、繁殖管理等の生産全般にわたるチェックと改善に利用し、また、優良雌牛の選抜確保など牛群改良による乳量・乳質の向上を目指しています。
 糞尿処理は、糞尿と雑排水が混合されたものを圧搾機で汚水とスラッヂ(固形分)に分離し、雑排水を含む尿の処理については、微生物により浄化槽で浄化処理して再利用されます。スラッヂは発酵プラントで機械による攪拌発酵を行い、良質の完熟堆肥にして周辺の耕種農家に販売されていますが、需要に応じきれない状況で、周辺の環境と調和した糞尿処理設備となっています。


おわりに

 今後は、自給飼料の生産拡大による生産基盤の安定、地域住民とのふれあいの場を提供するなど周辺環境に対してより一層配慮し、また、スーパー総合資金の利用による低利資金の調達など経営改善を講じながら徹底した経理・経営管理を行い、将来は法人化も目指していきたいと考えています。また、労働面では経営外からの雇用の確保を充実させて、週休2日制の導入をはかって経営にゆとりを見い出していきたいと今後の抱負をいだいています。


(筆者:福井県畜産会 畜産コンサルタント)