生産技術セミナー

食品残差を利用した養豚用自家配合飼料

入江 正和

 

  現在の養豚においては低コストで高品質な豚肉をつくることが非常に大切になってきました。そこでコストを安くするため食品残渣を有効に活用しながら、品質の良い豚肉を生産しようというお話をしたいと思います。


諸外国の養豚の実状

 近年、豚肉も国際競争の時代に突入しました。諸外国における豚肉の生産コストと品質に関する情勢は皆さんにとって大変気になるところだと思います。アメリカからはチルド肉輸入が増えましたし、特に最近では、輸入肉がハムなどの加工品用としてだけでなく、スーパーの精肉売り場にもみられるようになりました。これまでのように加工品は輸入、精肉は国産という図式が成り立たなくなってきているのです。

 まず最初に諸外国の養豚の実状を紹介しましょう。アメリカの養豚ではトウモロコシなどを自家生産しています。そのため、飼料費は安く、円高のためもあって、生産コストはわが国の半分以下です。豚肉の品質は悪くありません。デンマークからの輸入肉は安価ですが、明らかに品質の違いがあり加工用です。 台湾は、わが国同様、豚肉の品質はよいのですが、飼料のほとんどを輸入飼料に頼っています。台湾の養豚は、物価や人件費、公害対策費などが安く、今後コストアップするとみられています。

 以上のような国際情勢を考えますと、わが国の養豚においては、低コストで高品質な豚肉づくりがいかに重要かがお分かり頂けると思います。


低コスト化を図る有効な方法

 さて、低コスト化を図るための一番有効な方法は生産コストの4割を占める飼料費を抑えることです。そのためには、安価に入手できる食品製造副産物や雑残飯などの食品残渣を自家配合用飼料として有効に利用することです。

 一時、省力化の観点から残渣養豚から配合飼料へ切り替える農家が多かったのですが、最近では、また、食品残渣を有効に活用しようという活動的な生産者達が出始めました。以前の残渣養豚との大きな違いは、数ある食品残渣から良質なものを選び、少しでも品質の良い豚肉を生産してゆこうという点です。以前はつくれば売れるという時代背景から、悪くいえば、安かろう悪かろうというような豚肉を生産していたわけですが、現在では、良質な食品残渣を選び、それらを有効に利用してコストに見合った品質の良い豚肉をつくる努力がなされています。


食品残差を有効活用するための7つの条件

 さて、一口に食品残渣といってもパンや菓子、麺類等の食品製造副産物、飲食店からの雑残飯などいろいろなものがあります。これらのものをどのように選び、どのように配合すればよいのでしょうか。

 食品残渣を養豚飼料として有効に活用するためには7つの重要な条件があります。

 1つ目の条件は、飼料としての安全性に問題のないことです。つまり豚の生理に悪影響を及ぼすような有害物質を含んでいないか、あるいは衛生状態は大丈夫かという点です。

 2番目は、豚の嗜好性に問題がないか、つまり豚が喜んで食べるかということです。なお、これに関連した話なのですが、雑残飯を煮沸し、水を加え、パイプラインで飼槽に送り、夏場でも良好な発育を示している例があります。粉状の飼料よりも液体状の飼料の方が豚が喜んで食べるためです。これはいってみれば、ドブ飼いを改良し、省力化と嗜好性の良くなるリキッド・フィーディングを食品残渣に応用した成功例ともいえるでしょう。

 3番目の活用のポイントは、その食品残渣がどのような栄養価値を持っているかです。通常はTDNやDCPとよばれる数字で判断します。また、ビタミンやミネラル補給源として役立つ食品残渣もあるでしょう。いろいろな食品残渣の栄養的価値は、飼料成分表を参考にしてください。掲載されていないものは、多くの場合、人用の食品栄養成分表が役立ちます。

 4番目の条件は当然のことながら価格の安いことです。入手価格は、栄養価値だけでなく、収集経費、粉砕や加熱などの加工処理経費を考えることが必要です。食品産業から出される食品残渣は排出業者が経費をかけて処理しなければならないということを知っておくと、取引の際、有利でしょう。

 5番目は先ほどのことと関連しますが、食品残渣の収集や給与にあまり手間のかからないことです。給与のために、加工処理が必要であったり、挟雑物を取り除く必要があると、人手がかかります。たとえ、家内労働であっても人件費はただではありません。

 6番目は安定量を入手できることです。食品残渣を飼料配合するにあたっては価格と栄養を計算する必要があります。そのため、飼料原料が不安定にしか手に入らない場合、それらの計算をいちいちやり直さなければなりません。また、飼料内容が次々に変わることは豚にとっても好ましくありません。

 最後の1つは、豚肉などの生産物に悪影響を及ぼさないことです。この点は現在の養豚生産においてたいへん重要なことでしょう。食品残渣利用で、第一に問題になるのは生産された豚肉の脂肪の質です。


豚肉の脂肪の質への影響

 飼料は豚の体の脂肪の質に大きな影響を与えます。軟脂を発生させないためには、どのような飼料配合設計にすればよいのでしょうか。まず、配合飼料中の粗脂肪含量をできる限り低く抑えることが基本です。油の多い食品残渣は使用しないか、油分をできるだけ取り除くようにします。その上で、各種配合飼料中の油の質に注意します。特にリノール酸などの不飽和脂肪酸を多く含んでいる飼料は軟脂を発生させる大きな原因となります。そのため、リノール酸を多く含む飼料はできる限り配合割合を低くする必要があります。日本飼養標準には各種飼料に含まれるリノール酸含量を掲載していますので、有効に活用してください。他のいろいろな食品残渣については人用の食品分析表が利用できます。

 一般的にパン、うどんなど、粗脂肪含量が少なく、可溶無窒素物の多い食品残渣は硬い脂肪をつくる飼料です。このような飼料を多く配合することによって脂肪の質を向上させることができます。食品残渣に併用する飼料としては麦類などを選びます。その上で、特に脂肪を硬くする効果のあるカポック粕やカポック吸着飼料を加えるとよいでしょう。

 とはいえ、食品残渣はどうしても脂肪の多いものになりがちです。こういう場合には、前期と後期に分けて異なる飼料を作るのも軟脂対策として有効です。たとえば、前期2ヵ月間は軟脂を発生させるような高脂肪飼料でもよく、後期2ヵ月間には脂肪を硬くする飼料配合設計をします。このような方法をとれば、同一原材料の飼料を給与するにしても豚の脂肪の質に大きな違いが出ます。

 飼料成分からある程度、生産される脂肪のしまりを予測することはできます。しかしながら、脂肪の質に影響する要因は他にもありますので、最終的には生産物の品質をみながら、飼料配合を改善してゆく必要があります。 以上、食品残渣を自家配合飼料に有効に活用するため、7つの条件を述べました。基本は、入手できる食品残渣をうまく活用して、飼料費を下げ、その生産コストに見合った品質の良い豚肉をつくることでしょう。なにも格付で極上をねらう必要はないのです。しかし、等外は価格が安すぎるので問題です。


おわりに

 最後に、積極的に食品残渣を有効活用して、軟脂防止だけでなく、高品質化を図っていこうとしている生産者を紹介します。食品残渣が安価なことと、月齢を延ばすと肉質が良くなることを利用して、肥育期間を延ばし、流通業者が好む豚肉を生産しているのです。枝肉重量が大きくなると良好な格付が得られない場合もあるのですが、肉質がよいので等級の割には比較的高い単価で買われます。枝肉重量と単価で計算できる1頭あたりの売上は高くなり、管理費などのコスト低減につながり有効です。さらに、この生産者はリサイクル飼料を給与した豚肉として、手作り加工品教室などを開き、消費者にもうまくアピールされています。

 おしまいに、養豚家の皆さんには、食品残渣を有効に活用し、低コストで高品質な畜産物を生産されることを願ってやみません。

 

(筆者:大阪府立農林技術センター主任研究員)


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