生産技術セミナー

肉用牛肥育経営マニュアル(2)

−もと牛の能力を十分に引き出し肥育経営の所得向上をはかるために−

長崎県肥育経営マニュアル作成委員会

 

4.飼養と管理(承前)

(1)もと牛導入直後の管理と予備飼育

導入当日の管理

 もと牛導入直後から肥育前期にかけては、肥育の出来上がりを左右することにもなる重要な出発点です。導入直後には、まず、徹底した健康観察を実施し、挙動がおかしいものについては体温測定を行い早めに手当する必要があります。病牛であるか否かを選別する際、体温40℃を分岐点と考えてよいでしょう。導入当日の管理の一般的な手順を示すと、次のようになります。

 1)もと牛が到着したら、まず輸送トラックの側面から外傷の有無など牛の状態を確認する。次にトラックから降ろす時に歩様に異常がないかを確認する。
 2)牛を落ちつかせ、正確の体重測定を行う。
 3)呼吸器病、下痢等の発生予防のため抗生物質及びビタミン剤を規定量投与する。これら薬剤投与等の際には獣医師の    指示を受ける必要がある。
 4)以上の処置が終了したら消毒済みの牛舎に導入し飼料を給与する。飼料は良質な乾草を1頭当たり2kg程度給与する。この時、濃厚飼料は給与しない。水は1頭当たり10lを目安に給与する。ウォーターカップで不断給水する場合は、導入当日に限り一定時間ごとに給与する。

導入後の予備飼育

 導入後は一定期間(20〜30日位)の予備飼育が必要です。予備飼育の目的は、環境の異なる地域からのもと牛の導入であれば、疾病等、牛の状態に異常はないかを見極め、また、異なった環境や飼料に漸次慣れさせるためです。特にもと牛としての月齢の進んだ牛で、飼い過ぎによる脂肪の付着した太り過ぎの牛等は飼い直しを行う必要があります。
 できればこの期間は隔離された牛房が必要であり、一般の牛と隔てて管理することが望まれます。この時、牛床の管理も重要な要件です。管理者は牛床が常に乾燥し清潔に保たれるよう心がけるべきです。また、環境や飼料の急変を避けるため、生産農家の実状をつかむことも必要です。
 消化し易い粗飼料を十分に与えて漸次規定の飼料に馴化する期間でもあり、第一胃内微生物の変化に対応することが重要です。この期間の管理に失敗すれば下痢の発生やその後の発育にも影響することとなり、非常に大事な時期であることを認識すべきです。一般に導入後2週間以内の事故が多いと言われる由縁でもあります。
 導入後の飼料の粗飼料比率が高いと疾病の発生率が低いことが知られています(表4−1)。濃厚飼料の給与開始にあたり、その1日当たり給与量の目安は開始時、体重の0.5〜1%が安全とされています。以後、各個体の健康状態をよく観察しながら5〜7日ごとに0.5kg前後の濃厚飼料を増量します。そしてこの増量は、濃厚飼料の1日当たり採食量が育成・肥育に必要な水準に到達するまで続けられることになります。
 また、小さい子牛や弱い子牛は飼槽に近づくことができず、十分な採食をしていない場合が多いので、特に気をかける必要があります(表4−2)。

導入後の各種処置を行うべき時期

 通常、導入後に行われる各種処置(予防注射、駆虫剤の投与、耳標装着、鼻とおし等)はどの時点で行うのが最善でしょうか。新たな処置に起因するストレスを与える前に、まず輸送によるストレスから回復させるために一定期間休息させることは理論的には正しいでしょう。しかし、多くの試験や経験によれば、数日間ないし数週間休息させるよりも、到着後できるだけ早く処置する方が導入後の増体も良好で、疾病にかかる割合も低いことが報告されています(表4−3)。ただし、疾病にかかっていたり、疲労が激しすぎる場合には到着直後に強いストレスを与えることは禁物です。

(2)体組織の発育と飼養

 体組織の発育過程と、これに合わせた飼養管理についての理解は、良質の牛肉生産の上から最も重要な事項であるとともに、未だ未解決の問題も多く残っているといえるでしょう。
 各配合飼料メーカー推奨のたくさんの種類の配合飼料や混合飼料、そして粗飼料までもが市販されています。これらは各々の示された基準どおりに給与すれば、一応の成果は得られるでしょう。ただし、これらの飼料を利用する個体の差により、各々異なる結果が得られたり、また、自家生産の飼料や安価に入手できる特殊な単味飼料の活用によりコストの低減をはかるための自家配の出現等、極めて複雑な技術展開となっているのが現実かと思います。
 一般には一定の配合飼料を基材として、自分なりの単味飼料を時期に応じて添加(強化)給与している例が多く見受けられます。これらの例を各々飼料計算を行い、飼養標準と比較してみると、成分的にアンバランスな例が多く、また、極めて不経済な結果となっている場合が少なくありません。
 この単味飼料や微量成分の添加については、少なくとも牛体各組織の発育過程や、個々の添加飼料の性質をよく知って配合計画を作成することが、飼料効率の上からもまた経済的な面からも重要です。
 牛体発育の過程や単味飼料の特性については、すでに多くの指導書が出版されているので、ここでは要点を復習するにとどめることにします。いたずらに高価な飼料を添加しても、その効果が現れず、かえって飼料費が高くなったり、あるいは肉質に悪影響を及ぼすことがないようにしなければなりません。
 長崎県畜産会の最近の調査によれば、肥育牛1頭当たりに購入飼料費は16万円から25万円までの実に大きな開きがみられます。肥育農家においては、これらのことについて先ず念頭にない農家や間違った配合を悠々として実行している農家も多く見受けられます。更に粗飼料の種類と給与量、給与時期、給与形態(生草・干草・サイレージ・キューブや切断長等)を考えれば、さらに複雑となっています。群飼育の中でこれらを厳重にチェックすることは極めて困難ですが、少なくとも一応の給与量を確認し、成分計算を行い、無駄を省く再点検が必要と思われます。

育成期と肥育期の考え方

 牛の産肉生理を研究した農林水産省草地試験場の山崎は産肉生理理論の中で最も重要なポイントとして次の3点を指摘しています。

 1)牛の体は最初に脳が発育し、次いで骨、筋肉、脂肪の順で発育する。
 2)栄養は脳や頭のように早い時期に発育する部分に優先的に送られる。したがって初期の段階で栄養が不足した場合、次ぎに発育する骨には栄養が十分にいきわたらない。さらに、筋肉、脂肪のように発育の時期が遅い組織ほど栄養不足による影響が大きくなる。
 3)肥育牛の体構成(枝肉中の骨・筋肉・脂肪の割合)は肥育パターン(増体のさせ方)により異なる。

 肥育に関わる者が肥育技術を語る時に、この点を共通の認識としていない場合、結果としてナンセンスな議論となるでしょう。
 胃袋等の内臓が最も発達する時期は8ヵ月齢をピークとして13ヵ月齢頃までといわれています。このため、13ヵ月齢前後が育成が終了する時期と考えるのが妥当であり、この間は骨や内臓の発達を促することに専念すべきです。この時期の飼料給与は、濃厚飼料は制限給与、粗飼料は不断給与することが基本です。
 14ヵ月齢以後は肥育期であり、この時期には筋肉内の脂肪沈着を促して肉質の改善を図ることが主眼となります。この時期の飼料給与は、第一胃内での異常発酵を生じない程度に粗飼料の給与量を制限した上で濃厚飼料を不断給与します。
 また赤肉は生後3ヵ月から18ヵ月頃まで継続して発達します。

粗飼料

 肉牛肥育時の粗飼料の果たす役割として、次のような機能が重要視されます。

 1)第一胃へかさ(ボリューム)を与え発酵をよくする。
 2)そしゃく・反すうの材料となり、唾液分泌を促す。
 3)第一胃に対する研磨作用により胃の反転運動を促進し、第一胃粘膜と胃筋層を丈夫にする。
 4)下部消化管に対する物理的刺激で飼料の滞留時間を長くし、全体の消化を高める。
 5)ふん便の性状をよくする。

 また、実際に肥育牛に粗飼料を給与した場合の効果については数多くの報告があります。肥育前期に粗飼料を多給した牛は、肥育後期の増体が著しく改善されます。表4−4は濃厚飼料多給時に併用する稲わらの切断長と肥育成績の関係を示しています。第一胃内のVFA(揮発性脂肪酸)総量やプロピオン酸濃度は脂肪合成に影響し、VFAやプロピオン酸が多い状態が好ましいのですが、稲わらの切断長が長い場合はこれらの濃度は低下します。稲わらは5cm程度に切断して給与した方が効果的です。


 表4−5は濃厚飼料と稲わらを混合して給与した場合と分離して給与した場合を比較した試験の結果です。肥育成績は平均値としては両区間に差はありませんが、稲わら混合給与区は発育が揃っており、また、内臓障害の発生率が低いことがわかっています。多くの研究成果から粗飼料給与の効果を要約すると、次のとおりです。

 1)牛群の増体が均一になり、落ちこぼれが出ない。
 2)鼓張や下痢がなく、肥育期の食い込みがよい。
 3)牛の体型がひとまわり大きくなる。
 4)と殺した時に内臓障害がほとんどない。

濃厚飼料

 濃厚飼料の種類や給与方法の違いは、当然肥育成績に影響するので、多くの肥育農家の関心が高いわけです。しかし、この分野について詳細に解説することは本書の目的ではないので、今回は普段見落とされやすいいくつかの項目について若干の考察を行います。
 肥育農家は単味飼料を用いる場合にはその特性を十分理解してから使うべきです。表4−6はマイロとトウモロコシの混合比率と肥育成績の関係を示しています。一般に穀類を単一で給与するよりも何種類かを混合した方が増体や飼料要求率がよくなります。これは、第一胃内でのでんぷん分解のピークが分散され利用性が高まるためといわれています。
 飼料穀物の加工方法の違いと肥育成績の関係を調べたのが表4−7です。それによると、粉砕したトウモロコシはひき割りに比べ、飼料摂取量が少なく、また、増体量も少ない結果となりました。圧ぺんでは飼料要求率が最もすぐれていました。
 飼料の粒度は牛にとって非常に重要です。実際細かい飼料の給与により、鼓張症、アシドーシス、第一胃粘膜の異常などの発生が多くなり、消化率も低くなります。細かい飼料により発酵不全が生じ、胃運動の低下や飼料の微少粒子が付着するなどで胃粘膜に異常をもたらし、場合によっては肝膿瘍を起こすこともあります。
 また、牛では大量の飼料を一度に摂取すると、第一胃発酵が急速に起こり、分解産物である揮発性脂肪酸等でpHが急速に低下し、発酵不全、第一胃粘膜の異常などの障害が発生し易くなります。一方、少量ずつの飼料を採食するとこのような障害の発生が防止できます。図4−1に飼料の分給回数と第一胃内発酵の様子をモデル化して示しています。1日飼料摂取量を同じにした時、少しずつ小分けにして給与した方が第一胃の性状は安定します。
 熟練した肥育農家は、配合飼料や配合内容を変更する場合にはゆっくりと時間をかけて行うことを常識としており、飼料を急変させないよう心がけています。図4−2は乳用種去勢牛肥育時に稲わらを4週間ごとに給与した試験区と不断給与した対照区の第一胃内プロトゾア数の変化を示しています。試験区の牛は稲わらの無給与時にプロトゾア数が激しく減少しており、第一胃性状が激しく変動したことがわかります。この時の内臓所見では、第一胃と第四胃の異常が多くなり、肝膿瘍の発生が増加したと報告されています。以上のように第一胃性状の激しい条件下で飼育された牛は、内臓の異常が生じ易く、これが肥育成績にも影響します。したがって、配合飼料の変更、配合内容の変更、粗飼料の種類の変更、稲わらの使用時などでは、約2週間、少なくとも7〜10日をかけて徐々に切り換えていく必要があります。また、稲わらの断続給与はさけるべきです。

飼料給与と残飼処理

 肥育中期から後期、特に出荷1〜2ヵ月前になれば飼料給与の最後の追い込み時期となり、如何にして少しでも多くの飼料を食い込ませるかが焦点となります。この間の飼料給与は一定量の稲わらを与えながら、濃厚飼料を不断給与させる方法が一般に用いられています。ここで重要なのは、本当の意味で不断給与されているかということです。ただ漫然と飼槽にえさが入っているだけで、よく見ると牛の唾液で変敗した飼料や、ひどい場合には糞がそのままとなっているケースも少なくありません。飼槽を毎日丁寧に清掃することが成績向上のための第一歩であることを自覚して、常に残飼を清掃してから飼料を給与するよう心がける必要があります。牛は糞の臭気を極端にきらい、飼槽に糞が入っているとその周辺は採食しません。表4−8は不断給与を行う場合の着眼点を示しています。

表4−8 不断給与の着眼点

 

 1.牛にとって「自由採食」であること。
  ・「不断給与」と「自由採食」は同じでない。

 2.飼料が絶え間なく飼槽にあるよう給与すること。
  ・給与回数の調整
  ・一度の給与量の調整(前回の飼料が若干残っている程度)
  ・えさならし及びえさ盛り(飼槽内のえさを1ヵ所に集める)

 3.群内頭数に合った飼槽のサイズ

 4.群内勢力の均一化
  ・強い牛と弱い牛では摂取量が違う。
  ・同じ牛種、同じ性を群にまとめる。

 5.給与時刻の一定化
  ・牛は飼料投与直後に多く採食する。
  ・採食により第一胃内サイクルが変化する。
  ・給与時刻が不定であると、このサイクルが乱れる。

 6.不断給水
  ・飲水が制限されると飼料採食量が低下する。
  ・冬期の凍結、給水器の汚れ、水圧に注意する。

(木村、1991)

   上記の他に管理者は飼料給与に際して次の事項にも留意すべきでしょう。

 1)1日の最初に与える飼料は日の出から3時間以内に給与すべきである。濃厚飼料を多給される牛は空腹感に耐えられないものである。空腹感の強い牛は飼料をむさぼり食い、濃厚飼料を一度に多く食下すればアシドーシスになり易い。
 2)牛の飼料摂取量は彼等が最も快適な時間帯、即ち夏では夕刻、冬では日中に最も多くなるのが普通である。このため、夏と冬では時刻によって給餌量を変えるのも一つの方法である。
 3)常に牛個体の食欲と摂食量に留意し、お互いの採食競合を避けながら採食勢力の均衡をはかり、場合によっては飼料の追加給与も検討する必要があります。

個体観察と手入れ

 肥育成績の向上を願うのであれば、管理者は時間の許す限り牛舎の中で牛の個体観察を励行すべきです。飼槽に近づいてこない牛や元気のない牛を発見した時は糞便の状態や陰毛への異物付着に注意するとともに、体温測定を行い、異常がみつかれば速やかに治療しなければなりません。個体観察の着眼点を表4−9に示しています。
 また、牛体の手入れ、削蹄、体重測定等はできる限り実施したいものであり、その効果は必ず現れるものです。特に蹄の変形や敷料不足によるコンクリート面の露出等は体重の負荷のためストレスとなり、運動量にも制約を与えることになります。
 去勢は普通もと牛育成段階でおこなわれますが、正しい方法で適切な時期(3〜5ヵ月齢が目安となる)に実施されれば、肥育成績への影響はありません(表4−10)。
 肥育関係者の中には、牛の角は肉質を判断する上でぜひとも必要と考えている人も少なくありません。しかし、角と肉質の関係についての調査をした報告によると、関連は少ないようです。一方、角があると採食時の競合が激しく、また、血腫やあて身等の事故の起こる確率も高くなります。すでに肥育牛を除角することにより増体のばらつきが少なくなり、肥育成績が良くなることが実証されています(表4−11)。今後は、肥育牛の除角を積極的に進めるべきです。


5.敷料と交換

(1)敷料管理と意義

 牛床は、肥育牛の食堂兼寝室です。肥育牛が快適に生活できるよう、飼養者が責任を持って管理しなければなりません。快適でストレスが少ない状態とは、飼料を採食しその後ゆっくりと横になって反芻を行っている状態です。敷料が汚れていたら牛はゆっくり横になって休息することができません。牛床の泥濘化を認める農家では格付等級が低かったという調査結果も出ています。このようなことから、敷料は肥育牛にとって絶対的な要件です。
 敷料の汚染に伴って肥育牛の行動にも影響が生じます。絶対的な飼料採食量には影響しないものの、横になる回数と時間の減少が見られます(図5−1)。また、すべり易くなり肢蹄疾患の原因にもなります。
 敷料が不足し、糞と尿によってぬかるみ状態となり、牛が横臥を嫌い、牛を立ったままの状態におくことや、牛体や肢蹄を汚染し、牛の移動によって糞塊が飛び散り、場合によっては飼槽の中まで汚染する結果となり、牛の採食量に影響し肥育効率低下の原因となります。
 牛床管理の不徹底は、肥育経営者としての資格がないといっても過言ではありません。

(2)敷料の種類と特徴

 敷料を使用する目的は、畜体の保護(保温、転倒防止、つめの保護、畜体の汚染軽減)悪臭の軽減および堆肥化のための糞尿の水分調整です。従って、敷料として用いる資材は牛の肌によくなじみ、臭気成分の吸着性および吸湿性の高いものがよいでしょう。
 敷料および水分調整材として利用可能な資材は表5−1、5−2に示すとおりです。現在もっとも一般的に用いられているのはのこくずです。もみがらやわら類はそのままでは吸水性、保水性が低いのであらかじめ細断あるいは粉砕してから使用するのがよいでしょう。また、乾燥したもどし堆肥を使用している例もあります。

(3)敷料の交換とその費用

 一般的には、のこくず、もみがら等が使用されていますが、牛床のコンクリートが露出しない程度に厚く施用します。
 交換の頻度は、敷料の種類、投入量、飼育密度、環境温・湿度(季節)の条件によって変化しますが、肥育牛のストレスを考え、常に乾燥した状態におくことが大切です。具体的には、牛体に湿った敷料が付着する程度の状態になった時点で行うと良いでしょう。また、敷料の交換には多大な労力を必要とするので、飼育密度を考慮し、舎内の通気、換気扇の設置や折をみて敷料の攪拌や切り替えし等により、使用量を調節しながら節減に努めます。
 敷料の費用は、経営によって肥育牛1頭当たり0〜3万円くらいの開きがあります。生産費調査によると肥育牛1頭当たりの敷料費は生産費の約2%を占めています。また、その内の90%(乳用おす99%)を購入に依存しています。敷料をいかに安く、いかに省力的に集荷し、効率的に活用するか常に関心をもたなければなりません。

(4)堆肥としての利用

 敷料を堆肥生産から捉えると、有機資材の堆肥過程での分解性は資材のC/N比や木質化の程度と密接な関係があります。概して、C/N比が高く、リグニン含量が高いほど分解が遅くなります(表5−2)。従って、混合する資材により堆肥化の期間が異なります。また、敷料を堆肥化のための水分調整材としての使用目的からみると、敷料そのものの吸水限界量ではなく、堆肥化至適含水比の範囲を目安とします。堆肥化に適する水分は60〜70%といわれています。
 のこくずは吸水性が優れているため広く利用されていますが、一方、堆肥での利用を考えた場合、分解が遅く、作物の生育阻害物質が生成する場合があることなどが欠点としてあげられます。また、最近では高価なため入手がしだいに困難となっています。もみがらは吸水性が劣りますが、堆肥の通気性が改善され分解され易くなります。
 要は敷料としての役目とともに、良質の堆肥として徹底利用することを考えなければなりません。堆肥舎は発酵促進と養分の流失を防ぎ良質堆肥を生産するために、雨水を避け、また、周辺環境汚染の原因とならないよう留意しなければなりません。畜舎の周辺に雨ざらしで放置し、いたずらに害虫の巣となるような実態は好ましくありません。


6.給水

牛の飲水行動と飲水量

 牛の飲水行動と飲水量は時間や季節によって違いがあり、一般的に日中、夏期にその量が多く、これは気温の上昇と一致しています(図6−1、6−2)。また、飲水量の不足は、尿排せつ量の減少となり、尿石症発生の原因ともなります。
 飼料摂取量と飲水量には密接な関係があり、人為的に給水を制限した場合、飼料の摂取量は減少します(表6−1)。したがって、飽食させるためには清潔でしかも適当な温度の水を自由に飲ませることが重要となります。このため、日常の管理に際しては、給水量(ウォーターカップの水圧)、飲水の汚れ、給水器の設置場所や破損の有無、牛群の規模に適合した給水器の大きさや数、冬期における凍結防止策等に配意しなければなりません。

水質と温度

 水質と肉質は極めて密接な関係があるといわれ、昔からよい水の出る所によい牛が育つともいわれています。表6−2は水質と肥育成績の関係を調査しています。正常の飲水よりも塩分濃度がやや高い水を給与された牛は、飼料摂取量や増体量が9%低下しています。また、暑熱の厳しい夏期や高栄養で飼育されている牛において水質の及ぼす影響が大きかったと報告されています。
 水田やため池等からの流れ水や小川からの取水はなるべく避けた方がよいでしょう。やむを得ずこれらを利用する場合は、事前に水質検査を行う必要があります。
 表6−3は飲水の温度と肥育成績の関係を調べた試験です。この試験では夏期に飲水として18℃の冷水を給与した試験区と32℃の水を給与した対照区との成績を比較しています。その結果、冷水を給与した試験区は対照区よりも飼料摂取量が5%、1日当たり増体量が12%多く、飼料要求率は6%低下したと報告されています。


(次号へつづく)


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