細断型ロールベーラを中心とした
新しい収穫調製技術

―― 青刈りトウモロコシ収穫調製作業機械がいよいよ実用化へ ――  

澁 谷 幸 憲

  はじめに

 生物系特定産業技術研究推進機構(生研機構)では、これまで青刈りトウモロコシをロールベールサイレージにできる「細断型ロールベーラ」の開発に取り組んできました。ここでは、いよいよ実用化が迫った本機についてその概要を紹介します。

 青刈りトウモロコシは、牧草と比べて栄養価も高く、収量も多い大変優れた飼料作物の1つです。単位面積当たりでみた牛の消化できる栄養分は牧草の2.3倍もあります。土地面積当たりの栄養収量が高いため、飼料作付面積の少ない日本にとっては、中心的な飼料作物といえます。しかし、その作付面積はここ10年で、3万haも減少しており、現在では、約9万haとなっています。特に、圃場が小区画で分散している都府県で、その減少幅が大きいことが認められます。さまざまな要因が挙げられていますが、1つは、これまでの青刈りトウモロコシの収穫調製作業に問題がありそうです。

  従来の青刈りトウモロコシ

 ここで、これまで行われている青刈りトウモロコシの収穫調製作業をみてみましょう。

 圃場では、1人がフォレージハーベスタあるいは自走式のフォレージハーベスタを使って、トウモロコシを収穫します。これにもう1人がトラックあるいはダンプワゴンを併走して荷受けし、荷台がいっぱいになったら、サイロまで運搬します。トラック等は圃場で荷受け、運搬、サイロで荷下ろし、空荷で圃場へ移動──を繰り返します。サイロでは数人が待ち受けていて、荷下ろしされた細断トウモロコシを十分な密封状態を保って貯蔵されるよう人力で踏み固める作業が行われます。サイロの種類によっては、例えば、スタックサイロやバンカーサイロなどでは、この踏み固める作業にホイールローダのような大型の建設機械を利用する例もあります。いずれにしても、サイロが満杯状態になるまで材料が運搬される間、この作業を続け、最後にシートをかぶせて完全に密封状態にする作業にも複数の人手を要します。

 こうした作業体系をできるだけ効率よく行うためには、圃場においては、フォレージハーベスタを休止することなく作業することが肝要となります。すなわち、運搬手段を複数用意し、圃場とサイロの間を荷受け専用トラックかトラクタけん引型フォレージワゴンで途切れることなく往復運搬する方法です。

 この方法は飼料生産を共同で実施している農家群やコントラクタなどで実施されており、特に1区画の圃場面積が広く、圃場とサイロの距離が近い立地条件下では存分に威力を発揮できます。しかし、府県では、1区画の圃場面積が狭い上、圃場が分散しているため、移動に多くの時間を要したり、フォレージハーベスタに待ち時間が発生するなど、どうしても作業能率が低下してしまいがちです。

 この収穫調製作業体系は、5〜6人程度の人手の確保が必要であること、真夏の炎天下でのサイロ詰め作業が大変な重労働となること、一度、作業を始めると1つのサイロを詰め終わるまでは作業を中断することが困難であること等から、組作業に必要な人員の確保が難しく、しかも中心となる担い手の高齢化が進んでいる府県では、成り立ちにくくなっています。こうしたことが、この10年間で大幅に青刈りトウモロコシの作付け面積が減少した要因の1つと考えられます。

 一方、牧草の収穫調製作業をみますと、今から15〜20年ほど前から、ロールベーラとベールラッパが急速に普及してきました。これにより、牧草の収穫調製作業は大幅に省力化が進みました。ほとんど人力作業の部分がなく、わずか2人で、楽にロールベールサイレージを作ることができます。これらの技術の普及により、草地面積はトウモロコシほど大きな減少はみられておりません。

 そこで、収量も多く栄養価の高い飼料作物である青刈りトウモロコシも牧草と同じように少人数で楽にサイレージにできないかという、関係者の切実な要望が「細断型ロールベーラ」開発の発端となりました。

  提案−細断型ロールベーラを中心とした新しい収穫調製作業体系

 新しい作業体系では、青刈りトウモロコシの収穫とロールベールサイレージの調製を、細断型ロールベーラと細断ベール対応型ベールラッパを使用してわずか2人と従来作業に比べて大幅に省力的に行うことができます。しかも、作られた細断ロールベールは、密度が高く、成形後直ちにラップフィルムにより密封することができるため、高品質で個体ごとのばらつきもありません。さらに、材料が細断されているため、解体しやすく給飼作業もたいへん楽です。

 この新しい作業体系の中心となる細断型ロールベーラは、ハーベスタからの細断材料を荷受けするホッパと、材料を細断ベールに梱包する成形室、細断ベールの外周を結束するためのネット供給部の大きく3つから構成されています。作業は、農家の皆さんのお手持ちのフォレージハーベスタをトラクタ側面に装着し、細断型ロールベーラを同じトラクタの後部にけん引して行います。併せて開発されたのが、細断ベール対応型ベールラッパです。本機は、細断ロールベールの両側面から挟み込んでテーブルに積載できる自載アームを持っていることが大きな特徴の1つで、もう1台のトラクタ後部に装着した本機により、細断ベールを崩すことなく、こぼれも出ないように拾い上げて、迅速に密封することができます。

 
写真−1 細断型ロールベーラ本体   写真−2  細断型ロールベール対応型ベールラッパ

 本作業体系の特徴をいくつか列挙してみます。

 本作業体系は、わずか2人で細断材料の梱包から密封まで省力的にできることから、天候の急な変化にも対応可能です。すなわち、密封さえしてしまえば、細断ロールベールは雨にあたることがなく品質の劣化を未然に防ぐことができるため、農家の方の都合にあわせた柔軟な作業スケジュールを立てやすいといった特徴があります。

 また、フォレージハーベスタのアタッチメントを交換することで、牧草の収穫調製作業にも利用可能です。調査事例では、材料が細断されているため同径の従来型牧草ロールベールサイレージと比べて1.7〜2倍の梱包密度を有していました。このことは、設置面積が少なくてすむことや、牧草サイレージの品質向上が期待できる点など多くの効果が期待できます。

 さらに作業体系として、ワンマンオペレーション作業のほかに、枕地の確保が困難な小区画な圃場における作業に対応するための定置作業(細断型ロールベールを圃場の隅や畜舎近辺に定置利用する)や、低馬力トラクタ2台による伴走作業(フォレージハーベスタ装着トラクタと細断型ロールベーラけん引トラクタの2台組収穫作業)の計3つの作業体系が利用可能であり、農家の実情にあわせて選択できます。

 次に細断ロールベールの特徴についてみてみましょう。材料が細断されているため成形時やベール放出時に若干の量が細断ベールに成形されずにこぼれとして見られますが、その量は密封時のものと合わせても、細断ベールの質量全体のわずか3%程度以下です。

 また、出来上がった細断ベールの密度は、調査事例では、乾物換算で1m3当たり200kgでした。これは、地下角形サイロなどに材料を詰めたときの地下5〜6m程度の材料密度に相当し、非常に高密度で梱包されていることが分かりました。良質なサイレージ調製のポイントは、いかに素早く嫌気的条件を保つかにかかっていますが、梱包密度が高いことは、空気の侵入を許さない、空気の入る間隙が少ないということになり、その重要な要素となります。この点からも本機により成形されたロールベールサイレージの高品質を裏付けているといえましょう。このように品質が安定している点は、高密度で運搬効率が高いことと相まって、流通サイレージとしての利用の可能性も期待できるといえます。

写真−3 ラップ前の細断ロールベール   写真−4  細断ロールベーラを利用した作業の様子

  おわりに

 以上、開発中の細断型ロールベーラについてその概要を紹介しました。本機は、平成14年度、関係諸機関の協力を得ながら全国7ヵ所でさまざまな作業条件、圃場条件のもとで、現地試験を繰り返し実施してきました。本機で作られた細断ロールベールは、そのサイレージ品質や牛の嗜好性などについて現在、各機関で鋭意調査中です。

 機械については実用化に向け、おおかたの課題が抽出され、オペレータの意見も多く集められました。来月末には、生研機構において技術公開され、本機の基本性能や作業能率について最新データに基づく調査結果などを交えて紹介する予定です。

 さらに、来年度には、これまで得られた課題や要望に応えた実用型機による現地試験を行ったうえで、メーカーより市販化される予定となっています。飼料用トウモロコシ圃場において、青刈りトウモロコシのロールベール作業風景が見られるようになるのももう間近です。

(筆者:生物系特定産業技術研究推進機構・畜産工学研究部飼料生産工学研究)