シリーズ
─ たい肥利用の耕種農家を訪ねて(2)─

たい肥はマルチの役目

── 岡山県邑久郡邑久町 金居正彦さん ──

大 村 昌 治 郎


 無性にブドウが食べたくなるときがありませんか?それとも発酵したワインの方がいいですか?ブドウを生で食べるなら、ピオーネ。ピオーネといえば、岡山ですよね。岡山県が日本一の出荷量を誇るピオーネは、巨峰の改良品種の中で最高品質といわれています。大粒で、果肉はしまり甘みが強く、種がないのが特徴です。「たい肥利用の耕種農家を訪ねて」の2回目は、前回の軟弱野菜栽培農家に続いて、ピオーネ栽培農家を取上げてみました。

 
1.栽培作目と面積
 

 今回、登場いただくのは、金居正彦さん。金居さんは岡山県邑久郡邑久町でピオーネをハウス栽培しています。金居さんがどのようにピオーネ栽培にたい肥を利用しているか、農場でお話を伺ってきました。


写真−1 金居正彦さん

 現在、金居さんは岡山県農企業者クラブの副会長を務められ、平成12年度および13年度の岡山県良質堆きゅう肥共励会の審査員として参加していただきました。

 金居さんは昭和58年からブドウの栽培を始めました。当時はネオマスカットやベリーAなどの品種を栽培、その後、ピオーネに移行しました。その時からハウス栽培にしました。栽培面積は40aですが、良質のピオーネを作るのに、手が掛かるのであまり面積を多くすることができないそうです。

 ピオーネの出荷は、7月から8月中旬にかけて。ハウス栽培なので、露地栽培に比べ早く出荷できます。7月の夜と昼の温度差があった方が色づきがよく、味が良くなるそうです。ピオーネの収穫量は10aあたり1.8tぐらいにまでなります。

 金居さんの農場ではブドウ以外に、ミカン(60a)、ナシ(10a)を栽培しています。ミカンやナシは親の代から栽培されているそうで、引続いて金居さんも栽培しています。ミカンは10月10日ぐらいから出荷をはじめ、12月いっぱいで収穫を終了します。それから収穫したミカンを保管しておき、翌年3月ぐらいまでじょじょに出荷していきます。ミカンにも、できればたい肥を入れたいのだそうですが、手が足りないので、今のところ施肥していないそうです。

 
2.たい肥の施肥状況
 

 金居さんの農場では、ブドウに同じ町内の酪農家から購入した、たい肥を入れています。購入価格は2tダンプ1台分が3000円で、直接、自分でダンプに積んで持帰っています。たい肥は秋に施用しますが、年間に10台分20tを持帰り、ブドウ作付面積40aに使っています。10a当たりでは5tほど施肥する計算になります。施肥方法は、木の周り半径2mぐらいにマルチのように表層散布します。

表−1 栽培作目および施肥について

栽培作目  ブドウ(ピオーネ)、ミカン(温州)、ナシ(新高)
栽培面積 ブドウ(ハウス)40a、ミカン60a(うちハウス10a)、ナシ10a
合計110a
栽培時期 ブドウ:収穫期7月〜8月中旬
みかん:収穫期10月中旬〜12月
施用時期 ブドウにおけるたい肥の散布は10月初めから10月末に行う。
施肥量 5t/10a(ブドウのみ)
施用方法 木の周り半径2mぐらいにたい肥をマルチのように表層散布する。


写真−2 ハウス内のブドウ棚

 金居さんの農場は、傾斜地にあるため、施肥作業は大変そうですが、それでもたい肥は欠かせないようです。近所のブドウ農家もたい肥は入れているといっていました。

 たい肥を置きっぱなしにしておくと、カナブンの幼虫が棲みつきます。そうすると、ハウスにたい肥を施肥した後に、カナブンの幼虫が成虫になってしまい、ハウスの中で傍若無人に飛び回ります。そのカナブンがブドウの房にはまり込んで、商品価値がなくなるので、要注意だそうです。

 
3.たい肥の施用効果について
 

 たい肥を施用することで、土壌を改良できると、金居さんはいいます。土壌の物理性の改良が目的で、たい肥を施用するそうです。土壌が改良されるため、保温性、保湿性、排水性、保水性が良くなります。ブドウには、水が必要で、生育のためには保水性が良くないといけないし、木が病気にならないように排水性も良くないとブドウの木は元気に育ちません。たい肥を施用すると木が元気になります。木が元気になるから、ハウスで加温した状況でも、病気や連作障害にならない力があるそうです。更に、たい肥はマルチの役目にもなるようで、特に冬場における保温性があるといわれています。マルチの役目をするため、ブドウの根が張って、根が上の方にくるので管理しやすいといっていました。ただ、人によっては、ブドウの根は上の方にこない方が良いともいわれています。

表−2 たい肥の調達

入手先  岡山県邑久郡邑久町内 酪農家
種 類 乳用牛ふんたい肥
入手方法  酪農家から自分でダンプに積んで持帰っている。年に2tダンプに10台分
価 格 3,000円/2tダンプ


写真−3 金居さんの農場で使っているたい肥

 金居さんは元肥としては、油粕等を使います。たい肥には、肥料としては期待せず、腐植としての利用を第1に考えているとのことでした。

表−3 たい肥の施用効果

たい肥の連年施用 している。
たい肥の施用で、土壌はどう変わるか? 保温性、保湿性、保水性、排水性が良くなる。
ブドウの生育は? 保温性が高まり木が元気になるため、結果的に作物の生育に寄与する。
病害虫の発生は? ない
連作障害の発生は? ない
作物の根張りは? よくなった。根が張って、根が上にくる。
作物の収量は? よく分からない。

 たい肥の連年施用による障害は今までには起きたことがないそうです。たい肥を施用しても、「土に食われてしまう」ようです。だから毎年、たい肥を施用することができます。たい肥の施用効果として、収量が増えたとか、味が良くなったということは、特に感じないそうです。

 
4.最後に
 

 金居さんは、良いたい肥であれば、もっとたくさん入れてもよいと考えています。これからは、いかに良いたい肥を、必要なときに手に入れるかが課題だそうです。必要なときには、みんなが必要なので、牧場にたい肥がないことが多いそうです。

 畜産からのたい肥の情報はなく、自分で見つけるしかないと金居さんはいいます。そういうことから、更に畜産側がたい肥を流通させたいと思うのなら、もっと畜産から耕種に向けて、積極的にたい肥の情報を流す必要があると強く感じました。

(筆者:(社)岡山県畜産会・畜産コンサルタント)

本稿は、岡山県畜産会発行『岡山畜産便り』2001年11・12月号に掲載されたものです。