改訂された日本標準飼料成分表
(2001年版)とその使い方

柾 木 茂 彦

改訂の経緯と主な改訂内容

 日本標準飼料成分表は日本飼養標準(家禽1997年、豚1998年、乳牛1999年、肉用牛2000年、ほかにめん羊1996年改訂)の一環として数年間隔で改訂されている。

 日本標準飼料成分表は1980年、1987年、1995年に改訂されており、1995年版では、牛用飼料の栄養価に代謝エネルギー(ME)を取入れたほか、粗飼料の繊維成分としてNDF(中性デタージェント繊維)を加え、豚・鶏の飼料について、アミノ酸有効率を示す等、大幅な改訂を行った。

 しかし、1995年以降、畜産を取巻く状況の大きな変化に対応して、飼料事情にも変化が生じてきたことから、飼料成分の改訂について各方面よりその要望が高まってきた。

 そこで、家畜飼養標準検討会は、飼料成分表部会のもとに飼料成分表作業部会を設け、数次の検討会を開いて、改訂内容についての基本的検討を行ってきた。飼料成分表作業部会は、更に飼料の栄養価について学識経験の豊かな方々の協力も得ながら、日本標準飼料成分表2001年版を作成した。

 なお、2001年4月に農林水産省畜産試験場から独立行政法人農業技術研究機構畜産草地研究所に組織改編されたため、農林水産技術会議事務局編から農業技術研究機構編となった。

略語一覧

ADF(酸性デタージェント繊維)
CA(粗灰分)
CF(粗繊維)
CP(粗蛋白質)
CPb(結合性蛋白質)
CPd(分解性蛋白質)
CPs(溶解性蛋白質)
CPu(非分解性蛋白質)
DCP(可消化粗蛋白質)
DE(可消化エネルギー)
  EE(粗脂肪)
GE(総合エネルギー)
ME(代謝エネルギー)
NDF(中性デタージェント繊維)
NFE(可溶性無窒素物)
Oa(高消化性繊維)
Ob(低消化性繊維)
OCW(細胞壁物質)
TDN(可消化養分総量)

 本飼料成分表の主たる改訂内容は以下のとおりである。

  1. 1995年版の成分表の発行以降における飼料成分に関する情報を、国公立および民間の諸機関(約50機関)から広く収集(約2万点)し、成分値の見直しを行った。特に、配合飼料の主原料となっているトウモロコシについて、最新のデータにより成分値を提示した。また、1995年版刊行以後、新しく飼料として用いられ、追加掲載が要望されてきた飼料を加えた。
  2. 輸入粗飼料についてのデータを収集し、草種別にその成分組成、消化率および栄養価の充実を図った。
  3. 飼料のアミノ酸についてのデータの充実を図るとともに、反すう家畜で問題となる飼料蛋白質の溶解性による画分を、わが国で通常用いられている飼料について示した。
  4. 酵素分析による繊維分画成分の表を追加した。
  5. 日本飼養標準において、蛋白質の要求量は牛では粗蛋白質、豚および鶏では粗蛋白質およびアミノ酸を主体に表示されているので、今回の日本標準飼料成分表においては、可消化粗蛋白質(DCP)の表示を取りやめた。
  6. 飼料給与ソフトの利用への便宜を図るため、成分表をCD−ROMとして添付した。
  7. 外観の大きな変更としてA4判とし、また、主たる表に英文による表記を追加した。更に本表( I )に乾物中含量を加えた。

飼料成分表の構成

(別表)
飼料成分表の構成 飼料項目数
( I )組成、消化率、栄養価
A.牛用一般組成と消化率、栄養価 653点
 a 生草
  1 牧草類
  2 青刈飼料作物類
  3 根菜類および果菜類
  4 作物副産茎葉類
  5 野草類
  6 樹葉類
 b サイレージ
  1 牧草類
  2 青刈飼料作物類
  3 その他
 c 乾草
  1 牧草類
  2 青刈飼料作物類および作物副産茎葉類
  3 野草類
 d ワラ類および殻類
 e 穀類、マメ類およびイモ類
 f 植物性油粕類
 g ヌカ類
 h 製造粕類
 i 動物質飼料
 j 非蛋白窒素化合物・単体アミノ酸
 k 酵母類
 l 油脂類
 m 糖類
 n リ−フミ−ル類
 o 木質系飼料
 p その他
B.豚、鶏用一般組成と消化率、栄養価 219点
 e 穀類、マメ類およびイモ類
 f 植物性油粕類
 g ヌカ類
 h 製造粕類
 i 動物質飼料
 j 非蛋白窒素化合物・単体アミノ酸
 k 酵母類
 l 油脂類
 m 糖類
 n リ−フミ−ル類
 o その他
  生草、サイレ−ジ、乾草、ワラ類および穀類
別表1 牛用混播牧草類の栄養価  44点
  (II) 無機物含量 257点
  (III) セレン含量 88点
  (IV) アミノ酸含量 155点
  (V) アミノ酸有効率  
    29点
    36点
  (VI) 蛋白質画分 48点
  (VII) ビタミン含量 139点
  (VIII) 非フィチンリン含量 23点
  (IX) リノール酸含量 42点
  (X) キサントフィル含量 22点
  (XI) 糖・デンプン・有機酸類含量 135点
  (XII) 酵素法による繊維分画 66点

 飼料成分表の構成は別表のとおりで前版から大きな変更は避けたが、データの充実、使いやすさを考慮し、本表( I )をA:牛用、B:豚、鶏用に分け、見開きで飼料成分値、消化率、栄養価が同時に見られる構成とした。

本表( I )について

 成分値は、水分、粗蛋白質(CP)、粗脂肪(EE)、可溶性無窒素物(NFE)、粗繊維(CF)、酸性デタージェント繊維(ADF)、中性デタージェント繊維(NDF)、粗灰分(CA)について、従来どおりの原物中の含量、標準偏差とともに乾物中の値も示した。

 本成分表の一般成分値は従来の値、および今回収集した値を吟味した後、乾物中含量によって集計を行い、平均水分量を使って原物中の含量に換算した。標準偏差は測定例数が4以上の飼料についてだけ乾物値について計算を行った後、原物値に換算して示した。欠測値についてはできるだけ文献値により補充したが、測定値の得られなかった項目については「−」で示した。

 NDFに関しては実測値があるものはそれを用い、信頼できる実測値のないものは、実測した飼料中の粗繊維またはADF含量とNDF含量との間の回帰式を利用するか、あるいはNDFと粗繊維・ADFの比率が飼料固有の値を示す飼料の場合にはその係数を用いて計算によって求めた。

 消化率は、CP、EE、NFE、CFについて%で示した。消化率は従来どおり、原則としてデータベースに収集蓄積された実測値について飼料の来歴をみて代表的な値であるかどうかを点検し平均値を求め、各家畜間、類似の飼料間、同一飼料内での細区分間の差などを比較し、また、諸外国の値も参考として検討した数値である。

 牛の消化率は山羊またはめん羊による試験成績を含むものであり、反芻家畜一般に適用できるものとした。

 豚と鶏の消化率は、幼動物と成動物の成績の差異、当該飼料の利用実態を検討した上で最も使われる状態に適用できるように取りまとめた。

 消化率の実測値のない飼料については文献値の引用とともに家畜間、飼料間の差等を比較検討した上で最も妥当と考えられる数値をあてた。

 栄養価は、牛の成分表では、可消化養分総量(TDN)、可消化エネルギー(DE)および代謝エネルギ−(ME)について原物中と乾物中含量を併記した。豚についてはTDNおよびDEの表示とした。これまで牛および豚の成分表で表示していた可消化粗蛋白質(DCP)は、今回の改訂版において以下の理由により表示を取りやめることとした。牛ではルーメンにおけるエネルギーとのバランス次第で可消化でも利用されないCPを生じるため、蛋白質の要求量をCPで表示していること、豚および鶏では蛋白質の要求量をCPおよびアミノ酸を主体に表示していることから、DCPは蛋白質の栄養価を評価法としてはじゅうぶんなものでないためである。DCPを必要とする場合はCPの消化率、CP含量から計算で求める。

 栄養価は実測値を基本としたが、それが、その飼料の代表的な数値であるかどうかを点検し、動物間、類似の飼料間、同一飼料内の細区分間等で比較検討し、成分値および消化率として表に示された数値に対応した栄養価となるように多少の調整を行った。鶏用飼料はTDN、GE(総エネルギー)、MEで表示した。

 更に、購入粗飼料が多く用いられているわが国の現状に基づき、輸入乾草を本表内に付加えた。すなわち、国内で流通している輸入乾草、ストロー類を輸入乾草としての項目を設けて25点の実測値を示した。特に流通量の多いアルファルファ、スーダングラス、エンバクの乾草については品質ごとに分類した値も示した。アルファルファについてはCP含量で20%以上、17%以上20%未満、17%未満の3段階に分類、スーダングラス、エンバクについてはCF含量で30%未満、30%以上35%未満、35%以上の3段階に分類した値を表示した。

その他の表について

 アミノ酸については外国の分析値も採用して乾物中含量とCP中含量を示した。今回、デグサ・ヒュルス・ジャパン社よりデータの提供を受け、収録点数を大幅に増やした。なお、提供を受けたデータについては従来の分類項目に合わない部分もあるため、備考欄に○を示した。豚に対するアミノ酸有効率は新しいデータに基づき20品目を追加した。

 今回の改訂で新しく蛋白画分(分解性蛋白質CPd、溶解性蛋白質CPs、非分解性蛋白質CPu、結合性蛋白質CPb)を、飼料の蛋白質の特性評価をする上でも重要であることから別表で表示した。第1胃内での蛋白質の分解率は第1胃内微生物への蛋白質の供給量を決めるパラメータであり、乳牛の飼養標準(1999年版)、肉用牛の飼養標準(2000年版)にも記載されているが、今回は具体的な草種名を記入した。この表の数値は、ナイロンバッグ法、インビトロ法を用いての実測値のほか、文献からの数値も参考にして作成した。

 繊維の特性を表わすため、わが国で多く用いられている酵素分析法の値(OCW、Oa、Ob)を実測値のあるものに限って取上げ別表とした。この分画はα−アミラーゼ、プロテアーゼ溶液およびセルラーゼ溶液で飼料を処理することによって得られる。この方法によって得られた総繊維を細胞壁物質(OCW)、OCWをセルラーゼ処理し消化性の高い部分を高消化性繊維(Oa)分画、低い分画を低消化性繊維(Ob)と呼ぶ。また、OCWとの比較のため、同じサンプルでのADF、NDFの実測値を同表内に取入れた。ADF、NDF値は、サンプルが異なるため他の表の値とは異なる。また、主要飼料の糖・デンプン・有機酸類は別表とした。

 ミネラルは新しいデータに基づき約70項目を置換えた。セレンについては繁殖、白筋症対策等で関心が高いことから、できるだけ多くのデータを掲載するため別表としてとりまとめた。

 ビタミンはβカロテン含量に対する関心が高まっているが、従来の全カロテンとの数値との関連づけるだけの根拠がないのでβカロテンを別表として追加した。

 リンについては全リンとともに非フィチンリンの含量を示した。また、家禽のための飼料情報として必須脂肪酸のリノール酸と色素のキサントフィルを表示した。

 表中の値をほかの飼料計算のソフト等で使用しやすくするため、Excelの表としてCD-ROMを添付した。簡単な飼料計算用ソフト添付等の希望もあったが、飼養標準等で考慮されるべきものと考え、今回は単純に値のみ表として提供した。

おわりに

 最後に牛海綿状脳症(BSE)の発生防止のため、飼料安全法に基づく「飼料および飼料添加物の成分規格等に関する省令」が改正され、牛を対象とする飼料は哺乳動物由来蛋白質(乳および乳製品や農林水産大臣の指定するものは除かれる)を含んではならないとされる等、肉骨粉等の製造、使用および保存については厳しく規制されている。飼料設計にあたっては飼料安全法やこれに基づく省令等の規定を遵守しなければならない。今回、動物性の飼料についてはミートボーンミール等牛海綿状脳症(BSE)に直接関連する飼料は牛用の表からは除いた。これらの成分値は牛以外の家禽、家畜への給与は禁止されていないため、これらの表には記載されている。しかし、魚粉等は規制前のため牛用の表に記載されている。成分表はデータベースとしての役割をもつため、記載されている物があらゆる家禽、家畜に使用できる物とは限らず、今後もこれらの取扱いについては省令等に従って行われなければならないことを付記する。

(筆者は(独)農業技術研究機構畜産草地研究所・家畜生理栄養部栄養素機能研究室長)