簡単にできるたい肥の作り方

── 防水シ−トを用いた家畜ふんたい肥の作り方 ──

 

高 橋 朋 子

はじめに

 平成11年11月、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、家畜ふんや家畜ふんたい肥を屋外にたい積することができなくなりました。また、家畜ふんのたい肥化処理や保管のための施設に関しても、本法律のなかで構造基準が定められています。その基準は、施設の床は不浸透性材料で作り、適当な覆いおよび側壁を設けることです。床に使われる不浸透性材料としては、コンクリートや鋼板だけでなく、防水シートが認められ、更に覆いについても防水シートが認められています。したがって、法律上、防水シートだけを用いた屋外での家畜ふんや家畜ふんたい肥の保管、たい肥化が可能となります。そこで、家畜ふんが防水シートを用いて良好にたい肥化できるか、試験を実施しました。

 床面に防水シートを使ったたい肥化で問題になるのは、重機による切返し作業です。床面がコンクリートの場合には、バケットやパワーシャベルなどの重機による切返し作業が可能ですが、床面に防水シートを用いた場合には、切返し作業により防水シートが破損するため、切返しの度に防水シートを交換しなければなりません。そこで、切返しをしなくても良好な発酵が進む方法について検討しました。

切返しをしないで良好に家畜ふんを発酵させるためには

 家畜ふんたい肥を作るときに実施する切返しは、たい肥の中心部の嫌気的になった部分に空気を触れさせるために行います。切返しを行わないで良好に発酵させようとすると、まず、たい肥の通気性が長期間保時されることが必要となります。そのためには、たい積する家畜ふんの水分を、オガクズ、モミガラ、戻したい肥などの水分調整資材で70%程度に調整することが大切です。バーク、剪定枝チップや抜排根チップを、水分調整資材として利用すると、オガクズよりも粗いため、更に良い通気性を保つことができます。

 また、家畜ふんはたい積している間に、下のほうが自重でつぶれてくるため、通気性が悪くなります。そこで、たい積物の下のほうに、例えば、穴のあいている暗きょ排水管を埋設すると、たい積物の通気を確保する効果が期待できます。このとき、暗きょ排水管の両端がたい積物の外に出ていることが必要です。

防水シートによるたい肥作りの手順

 防水シートによるたい肥作りの手順は、以下のとおりです。(図−1

図−1 防水シートによるたい積

(1)  家畜ふんに水分調整資材を混合し、水分を70%程度とします。
(2)  防水シートを地面に敷きます。
(3)  パワーシャベルやバケットなどで水分調整したふんを防水シートの上に高さ約1.5〜2mのかまぼこ状にたい積します。
(4)  暗きょ排水管を埋設する場合は、3分の1の高さ(約50〜70cm)までたい積したところで、1m間隔に暗きょ排水管(直径5cm、長さ4m)を置き、両端がたい積物の外に出るようにし、その上からまたふんをたい積します。
(5)  たい積が終了したら、防水シートをたい積物の上にかぶせます。
(6)  上にかけた防水シートが風で飛ばされないように、マイカー線で止めます。止め方としては、マイカー線の両端に古タイヤや砂袋をつけます。また、上の防水シートの端にビニールハウスに使うパイプをパッカーで挟み込むとまくれあがりにくくなります。

防水シートを使ったたい肥化の試験例

水分調整資材として抜排根チップを利用した家畜ふんのたい肥化

 土地造成時に発生する抜排根を機械により破砕して製造された抜排根チップを水分調整資材として用い、屋外でたい肥化の試験を行いました。

 抜排根チップの長さは大きいもので5cm程度でした。家畜ふんとの混合割合は、容積割合で牛ふん:3に対し抜排根チップ:1としました。混合物の水分は約65%となりました。豚ぷんも容積割合で豚ぷん:3に対し抜排根チップ:1の割合で混合し、混合物の水分は約52%になりました。

 まず、防水シート(厚さ0.1mm、幅5.4m、農業用ポリエチレンフィルム素材)を地面に敷き、その上に抜排根チップと混合した家畜ふんを、約1.5〜2mの高さまでたい積します。その上に、上敷き用シート(厚さ0.07mm、幅6m、5cm間隔に3mmの微細孔あり)をかけました。シートが風で飛ばされないように両端に古タイヤをつけたマイカー線で押さえました。

 発酵温度の経過を図−2に示します。牛ふんでは、たい積後5日目に最高温度64℃を示しました。2ヵ月後でも50℃、3ヵ月後でも44℃を示しました。豚ぷんでは、6日目に最高温度75℃を示し、2ヵ月後で65℃、3ヵ月後でも59℃とどちらも高い発酵温度が長期間持続しました。3ヵ月後に切返しを実施しましたがその後、牛ふんで50℃、豚ぷんで70℃まで再び上昇しましたが、その後は急激に低下しました。

図−2 発酵温度経過(抜排根によるたい肥化)

 パワーシャベルによる切返しを実施したところ、下に敷いた防水シートは破けたため、新しくしましたが、上の防水シートは再利用が可能でした。

 以上の結果より、抜排根チップのような通気性を確保できる素材を家畜ふんと混合することにより、牛ふんでは、発酵温度50℃以上を3ヵ月近く、豚ぷんでは60℃以上を3ヵ月以上も維持でき、最小限の切返し回数で、たい肥化できることが分かります。

 ただし、抜排根チップは3ヵ月程度のたい積期間では完全に分解しないため、たい肥として使用するには、抜排根チップをふるい分け除いたほうが良いと思います。

通気用として暗きょ排水管を利用したたい肥化

 なるべく切返し作業をしないたい肥化の方法として、暗きょの排水管として利用されている穴の空いた管をたい肥の通気用として利用できないか検討しました。(写真−1

写真−1 暗きょ排水管利用によるたい肥化

 牛ふん(水分78%)をオガクズにより水分約66%に調整しました。防水シート(厚さ0.1mm、幅5.4m)を敷き、水分調整した牛ふんを幅4m、高さ約1.5mのかまぼこ状にたい積します。暗きょ排水管(通気用、直径5cm、長さ4m)をたい積したたい肥の下から50〜60cmのところに1m間隔に埋設しました。暗きょ排水管の両端は外部に出るようにします。たい積終了後、上敷き用シート(厚さ0.07mm、幅6m、微細孔あり)をかけます。

 発酵温度の経過を図−3に示します。牛ふんをオガクズ等で水分を66%に調整したい積すると、暗きょ排水管を埋設しなくても発酵温度は50℃以上で4ヵ月以上持続しました。更に、通気のためたい積物中に暗きょ排水管を埋設すると、発酵温度60℃以上が3ヵ月間持続しました。しかし、牛ふんの水分が78%と高い場合は、暗きょ排水管の埋設の有無に関わらず発酵温度はじゅうぶん上がりませんでした。

図−3 発酵温度の経過(暗きょ排水管埋設)

 6ヵ月間たい積したたい肥の成分について調べました。通気が悪く嫌気状態になっているとふんのアンモニアはそのまま残ってしまいますが、通気が良く発酵が進むとアンモニアが硝酸に変わります。調査の結果、たい肥の上部表面部分については、たい肥の水分量が高いものも低いものも、好気状態であるため硝酸が多く検出され、発酵が進んでいることがわかりました。たい肥の下のほうは、アンモニアが多く残っており、嫌気状態となっていました。ただし、たい肥の水分が低く、暗きょ排水管を埋設した場合は、内部、下部まで硝酸が検出され、アンモニアが少なく好気条件が維持できており発酵が進んでいることがわかりました。また、埋設した暗きょ排水管の周囲約15cm程度は乾燥状態となっていることが確認され、暗きょ排水管により通気が確保されていたことが分かりました。

肉用牛50頭規模の必要経費

 肉用牛50頭規模農家について、必要な資材や必要面積、年間費用について試算してみました。

 作業手順としては、家畜ふん、2ヵ月分をたい肥盤(約50m2必要)にたい積し、上に防水シートをかぶせ保管します。2ヵ月分のふんがたまったら、オガクズなどで水分調整し、防水シートを用いてたい積します。

 たい積物の大きさと、必要面積を計算します。1頭1日当たりのふん排せつ量を20kg(水分81%)とすると、1日約1tのふんが排せつされます。ふんを水分72%に調整するために、1日当たりのオガクズ(水分25%)193kg(0.72 m3)が必要となります。ふんとオガクズの混合物は1日当たり1.2t(1.5m3)になり、幅4m、高さ約1.5mにかまぼこ状に積上げると、2ヵ月で長さ20mたい積されます。1年間で長さ20mのたい積物が6本できることになります。たい肥のたい積に必要な面積は、たい積物1本当たり140m2(20m×7m)とすると840m2になります。

 年間必要経費を計算します。年間必要オガクズ量は70t(280m3)、価格をm3当たり2,500円とすると約70万円、防水シートは年間120m必要となり、価格は上下シートともに50m当たり13,000円とすると62,000円、暗きょ排水管は1m間隔に埋設すると480m必要となり、1m当たり207円で約100,000円、合計862,000円が年間必要経費となります。

まとめ

 「家畜排せつ物法」の基準にあったたい肥の保管、たい肥化施設として、床面をコンクリートにすると、農地転用が必要となります。その点、防水シートは屋外において簡易で低コストに家畜ふんやたい肥の保管、たい肥化が可能です。防水シートでも、雨水の浸入や浸出水の流失を防止することができ、また、ハエの発生や悪臭の発生も防げます。たい肥の水分を70%程度に調整したり、暗きょ排水管をたい積物に埋設するなどの方法により通気を確保すれば、切返しをしないで良好に発酵したたい肥を作ることができます。また、切返しをすることによって発生する悪臭も少なくなり、環境に配慮した低コストな家畜ふんのたい肥化が可能です。しかし、防水シートを使った方法は大規模経営農家では、たい積に必要な面積やオガクズ等の経費、作業時間などから難しいと考えられます。乳用牛では30頭規模、肉用牛では50頭規模程度までの中小規模農家が対象の技術といえます。大規模経営農家では、たい肥舎や発酵処理施設の設置が望ましく、防水シートの利用は、1次処理したたい肥の保管などに限られるものと考えます。

 今後は、現場で使いやすい技術とするため調整作業のシステム化など検討する予定です。

(筆者:群馬県畜産試験場環境飼料部・主幹)